5分でわかるビジネストレンドワード

企業における「エイジズム」問題

公開日:2023/09/12 更新日:2023/09/12

再雇用や高年齢者雇用安定法によって従業員の就労期間が長期化している一方で、年齢に基づく偏見が企業にもたらす課題も浮き彫りとなっています。エイジズムとは何か、またシニア活用やダイバーシティの重要性について解説します。

エイジズムとは何か?

エイジズムとは年齢に基づいた偏見や差別のことで、1969年にアメリカ国立老化研究所の初代所長であったロバート・ニール・バトラー(Robert Neil Butler)が提唱した言葉です。広義には全世代間での偏見や差別を、狭義ではとくに高年齢者に対する偏見や差別のことを指します。WHO(世界保健機関)は、年齢を根拠にする「固定観念(考え方)」「偏見(感じ方)」「差別(行動)」の3層があると指摘しています。

無意識な年齢差別の例としては「やはり高齢者だから」「〜するには歳を取っている」のような表現をされることがあります。一方で、「高齢者は親切、賢明、経験豊富で頼りになる」といった肯定的なエイジズムもあります。

ビジネスにおけるエイジズムの例

若い層に対して「若い世代は経験や責任感が乏しいから、この仕事は任せられない」考えるのも広義のエイジズムにあたります。「若い人の方が活力もあって成長の余地があるからシニアよりも活躍できる」というような、一見ポジティブに捉えられる発言もエイジズムの一種です。

しかし、企業におけるエイジズムの問題は、やはり主にシニア層の問題です。「あの人はもう年だから、新しい仕事は任せられない」「シニア社員は体力が落ちているから、体に負担のない仕事を任せるべき」などの考え方はシニア層に対するエイジズムの典型例です。

企業はシニア層の長所を見落としがちで、デメリットばかりを重視する傾向があるとも言われます。ダイバーシティへの関心は高まってはいますが、採用の場や給与システムにおいて「年齢」「属性」への偏見や差別は根強く存在するのが実情です。

企業におけるエイジズムの何が問題か

エイジズムは企業にとって損失になることも分かっています。

エイジズムは従業員の抑うつの原因になりやすく、WHOの報告書によると、アメリカの1万人規模の企業では、エイジズムによって1年で約60万ドルの損失が発生しているという研究結果もあります。

日本の研究でも、エイジズムを経験している従業員は職場への満足度が低い傾向があり、ビジネスの進展を妨げる原因となりえるという結果が報告されています。とくに日本は高齢化が進行していて、シニア層の活躍が企業成長の鍵を握っている中で、このことは大きな問題だといえるでしょう。

シニアの活躍促進がエイジズム対策につながる

エイジズム対策が日本にとって需要な課題であると分かっていても、企業の体制は整っているとは言い難い実態があります。ここでは、企業でできるエイジズム対策を考えてみましょう。

 シニア社員向け研修(リスキリングなど)

テクノロジーの発展が目覚ましい昨今、最先端のスキルを持つ若手の人材が優先して採用されやすいのは事実です。このような労働環境ではシニア層の労働意欲が低下しかねません。さらに現在のシニア層は、新卒で入社した1社目で定年を迎えることも多く、自身のキャリアについて考える機会も少ない傾向にあります。

こうした中で、企業がシニア社員を対象にリスキリングやスキルトレーニングのサポートをすることは、シニア層の新しいキャリアへの挑戦の後押しにもなり、モチベーション低下の防止にも有効です。研修などの機会を通じて必要な心構えや能力を開発することで、シニア層が主体性を持って自身のキャリアに向き合うきっかけとなるでしょう。

ワークスタイルを選べる環境作り

シニアは自身の「健康管理」への不安や、社会への貢献度合いが高くなるなど気持ちの変化が起こりやすい時期といえます。プライベートと仕事のバランスをとりながら、心身ともに健康な状態で働ける環境作りが、こうした問題を軽減することにつながります。

ダイバーシティを受け入れる組織文化の醸成

もともと向上心を持って働いているシニア層であったとしても「やりがいのある仕事、能力に見合う仕事」を与えられなければ、職場に対する満足度は低下します。さまざまな年齢や異なる価値観を持った従業員が一緒に働くには、企業としてダイバーシティを受け入れる組織文化の醸成が必要です。

 エイジズム克服の第一歩は、職場におけるエイジズムの実態や要因を知ることです。さらに「異なる価値観を持つ人が一緒に働く上で起こる衝突の事例」を学んだり、「ステレオタイプを取り除くトレーニング」を実施したりすることによって、ダイバーシティを受け入れる企業文化が醸成され、シニア層が活躍できる環境が整っていくでしょう。

こうした施策を通じてさまざまな年代の従業員がお互いのことを理解することが、エイジズム解消の近道ともいえるのです。

関連リンク

【コラム】ダイバーシティ&インクルージョン研修とは?
【コラム】ダイバーシティを推進するインクルーシブ・リーダーシップとは?
「インクルーシブ・リーダーシップ研修」