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ビジネスにも欠かせない「非認知能力」を鍛える

公開日:2023/12/22 更新日:2023/12/22

非認知能力と聞くと、なにか特別な能力を連想する人が多くいるかもしれません。ですが、非認知能力は誰にでも備わっている能力です。その能力が、ビジネスの場面でなぜ欠かせないのでしょうか。非認知能力とは何か、注目が集まる背景や鍛え方とともにご紹介します。

非認知能力とは何か?

学力テストやIQテストなどにより、数値で測ることができる能力を「認知能力」と言います。一方、数値で測定しにくい能力を総称して「非認知能力」と言います。

具体的には、積極性や意欲、統率力(リーダーシップ)、忍耐力、創造力、主体性、計画性、探究心、自制心など挙げられます。また、コミュニケーション力や協調力、共感力、思いやりなど、他者との関係性にかかわる能力も含みます。学力や知識のように、一人で身につけられるものと違って、社会や会社の集団生活のなかで、自身の失敗や挫折などの経験を通して鍛えられるのが特徴でもあります。

経済協力開発機構(OECD)では2015年、非認知能力を「社会情動的スキル」と定義し、目標の達成、他者との協働、情動の制御に関わるスキルであると整理しました。現在は、子どもを対象とした国際的な学習到達度に関する調査(PISA)にもこの概念が反映されています。

なぜ注目されているか?

今、非認知能力が注目されている理由をご紹介しましょう。

経済学者の研究がきっかけ

非認知能力が注目されるきっかけをつくったのは、2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジェームズ・J・ヘックマン教授です。彼の研究は、幼児教育における非認知能力の育成が、幼児期以降の基礎学力や年収、社会的地位などに影響を与えることを立証しました。彼の研究発表以降、世界中で非認知能力をテーマにした研究が行われるようになりました。

現代社会を生きるために欠かせない能力

これまでの社会では、どちらかというと認知能力が注目されがちでした。しかし、先が見えず正解のない現代社会では、実績や幸福を築いていくために、思考力や判断力などの非認知能力が必要不可欠になりつつあります。

AIに勝つ力として

人工知能(AI)の技術が急速に発達していることも、非認知能力に注目が集まる理由の一つでしょう。IQのように数値で測れる領域はAIが得意とする分野です。そのためビジネスの場面において人間がAIとの競争に勝つためには、AIが苦手とする非認知能力が必要になると述べる機械学習の専門家もいるほどです。これからのビジネス場面では、人間に備わる非認知能力を高めながら、AIをうまく取り込んで生産性を向上させていく時代になるでしょう。

人生100年時代に必要な力として

先進国では100歳を超える「人生100年時代」が到来しています。寿命が長くなれば社会で活躍し続ける期間もおのずと長くなります。仕事に携わるためには思考力や忍耐力のほか、幅広い世代とのコミュニケーション力や協調性なども求められるはずです。つまり非認知能力は、長い人生を豊かに生きるうえで必要な力であるというわけです。

非認知能力は大人も育成できる

前述したヘックマンの研究は、幼児教育における育成の重要性を示唆したものです。そのため、非認知能力は幼少期の6歳ころまでに養うのが理想だと語られることが多くなります。

しかし、非認知能力は大人になってからでも鍛えることができます。仕事の場を含めた社会生活のなかで、困難や失敗、挫折の経験をしながら非認知能力を発揮したり、あるいは徐々に身についていったりする例は、けっして珍しくありません。

では、大人が非認知能力を伸ばすにはどのような方法があるでしょうか?その例をいくつかご紹介します。

内省やメタ認知を意識する

自分の性格や気性を俯瞰的に知る「内省」や「メタ認知」は、ともに自己理解を深めるためのものです。自分の感情や気性、長所や短所に気づくことができ、非認知能力のうちでどの部分を伸ばしたいかといったヒントを得ることができるでしょう。

「型」を身につけて訓練を繰り返す

伸ばしたい能力を定めたら、それを習得するための方法論を学び、そして実践します。例えば、「課題解決力」を伸ばしたい場合、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどの基本を学び、《覚える、記憶する、理解する》という「型」を繰り返し行います。その後、実践とともに身につけていきますが、ポイントは「意識して行う」こと。そのうえで継続することで本人の力となる時がくるでしょう。

他者の評価を利用する

自分にどの程度非認知能力が身についているのか、他者の視点を通して評価してもらうことも有効です。例えば上司との1on1ミーティングを利用して、積極的にフィードバックを得るのもよい方法でしょう。

先輩や専門家を活用する

メンタリングやコーチングを活用するのも、非認知能力を養うためのいい手段です。先輩社員が関わるメンタリングであれば、自身の達成効果を知るだけでなく、チームのコミュニケーションを円滑にするきっかけになるかもしれません。
 またコーチングではプロの支援を受けることによって、目標の達成方法が曖昧になることを防ぎ、確実に自分の伸ばしたい能力の向上が見込めるでしょう。

まとめ

非認知能力は社会生活や仕事の実績の向上につながる能力で、ビジネスにも欠かせません。先の見えない時代、自分の役割を見つけ、エンゲージメントや幸福を築いていく力ともなるでしょう。