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人材開発体系、育成制度はどう作る?

公開日:2023/11/07 更新日:2023/11/07

経済産業省による「人材版伊藤レポート」「人材版伊藤レポート2.0」の公表や、人的資本情報開示の義務化など、「人的資本経営」を目指す流れが加速する中で、人材開発についても今まで以上に体系的な戦略や育成制度が求められるようになってきています。こうした人材開発体系、育成制度はどう作っていけばよいのか、その基本的なステップをご紹介します。

人材開発体系を整備する意義とは?

経済産業省の定義によると、人的資本経営とは「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」とされています。

人材を資本と捉えるということは、人材を単にコスト対象として見るのではなく、投資対象と捉えるということでもあり、その取り組み状況が評価されることも意味します。20231月の内閣府令(企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令)でも、有価証券報告書等への記載を求める事項として「人材育成の方針」が挙げられています。

https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230131/20230131.html

 こうした背景もあり、経営課題に合わせたより合理的な人材開発体系の必要性は今後より一層高まるといえます。また、単発ではない体系的な育成制度が整っていることは、採用競争力やリテンションという意味でも、当然ながら有利に働きます。

育成制度づくりの具体的な考え方

体系的な人材開発を行うには、一般に以下のようなステップが必要と考えられます。

STEP1】人材育成上の課題設定調査

自社の目指す方向(経営方針、経営課題)を踏まえたうえで、実際の組織や社員の現状を知り、両者の間のギャップを把握します。このギャップが人材育成上の課題となり、育成制度はこのギャップを埋めるよう設計することになります。

STEP2】人材育成方針、教育体系の策定

STEP1で抽出された課題解決に向け、人材育成の基本方針、期待人材像、どこに重点を置いて教育するのかなどを決めます。 

STEP3】具体的計画と定着化・浸透策の策定

具体的な教育計画を作成し、各種教育プログラムを選定します。教育内容の定着化、浸透推進施策の立案・検討も行います。

 

以下でその詳しい内容を見ていきましょう。

STEP1】人材育成上の課題設定調査

①中期経営計画に示された未来を目指す

自社の目指す方向を理解するには経営側との意識合わせが重要ですが、そのベースとなるのが中期経営計画です。人材育成制度は基本的に、中期経営計画に示された未来を実現するものになっている必要があります。 

②調査によって現状を把握する

目指す未来と現状の間にどのようなギャップがあるのかを知るために、現状について調査をします。各種アセスメントを活用することで、組織やその中にいる人の現状を把握することができます。JMAでも、こうした育成のためのアセスメントをご提供しています。

<アセスメントの例>

部門マネジメント力シリーズ

 https://solution.jma.or.jp/service/research/asm-dep-mgmt/

部門ごとに課題を発見、解決する「部門課題解決力」と、組織と人を活かして能力を最大発揮する「組織・人活用力」の2つに関するアセスメント。

戦略思考力シリーズ

 https://solution.jma.or.jp/strategicthinking/

ミドルマネジメント層・リーダー層のうちに「戦略思考」を身につけることを目的としたシリーズ。戦略思考力の測定に特化したアセスメントを実施することで各人の現在の水準を知り、研修で弱点強化を図ることができます。

<その他関連URL

研修の効果を高めるアセスメント活用術

 https://solution.jma.or.jp/column/c221124-05/

STEP2】人材育成方針、教育体系の策定

(1)階層ごとに目指すべき人材像を決める

STEP1で明らかになったギャップを埋めるためにどのような変化が必要かを考え、その変化のためにあるべき人材像を設定します。このとき、階層別に求める役割(人材像)の定義を明確にすることで、それぞれが目指すべき姿が明確になります。

(2)キャリアパスに沿って研修の目的を設定する

教育体系を構築するには、自社におけるキャリアパスを明確にすることも重要です。どういうステップで成長していってほしいかが決まれば、必要な研修とその目的も定まり、その後の研修対象者の人選もスムーズになります。研修を受ける人にとっては自らのキャリアパスがイメージしやすくなるため、研修を受ける意欲も高まります。 

STEP3】具体的計画と定着化・浸透策の策定

(1)目的に応じた内容、学び方を選択する

さまざまな教育プログラムから具体的なコンテンツを選定するのがこの段階。STEP2で設定した階層別人材像とキャリアパスから、学ぶ内容やその順序などを検討し、具体的な教育計画を策定します。人材像やキャリアパスが明確になっていれば、オンデマンド学習でよい部分、ディスカッション等の学び方が有効な部分なども検討しやすくなります。

(2)研修以外の施策についても準備する

研修を実施しただけでは定着しづらいため、あわせて、教育内容をどのように定着させ、浸透させるかというプランも立てましょう。「学んだことをベースに目標設定をして業務に落とし込む」なども施策の一つです。同じ研修で学んだ人たちをチームとして、実際の課題解決にチャレンジしてもらうなどもよいでしょう。

 

こうしたステップは、自社だけで実行するのが難しい部分もあります。JMAではこうした情報提供のほか、実際に企業に伴走し、専門的な視点から人材開発体系、育成制度構築のお手伝いをしていますので、ぜひご相談ください。