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サーバント・リーダーシップとは何か?必要なスキルや行動とは?

公開日:2024/04/25 更新日:2024/04/25

社会の価値が多様化し、変化の激しい時代においては、リーダーシップにも今までにないスタイルが求められています。その一つが「支援型」とも呼ばれるサーバント・リーダーシップです。その効用や特徴、導入の際に気をつけるべきことについてご紹介します。

サーバント・リーダーシップとは何か?

サーバントという言葉には「使用人・召使い」という意味があります。つまりサーバント・リーダーシップとは、使用人のようにチームの部下に奉仕するリーダーのことを指します。リーダーシップの研究で知られるアメリカのロバート・グリーンリーフ氏が1977年に提唱したもので、リーダーが上位者として指示するのではなく、部下の持つ能力を可能な限り発揮させることを考え、それを実現する環境づくりから行うため、支援型のリーダーシップとも呼ばれています

サーバント・リーダーシップを理解するには、対概念である支配型リーダーシップと比較するとわかりやすいでしょう。

支配型リーダーシップ

リーダーがチームの頂点に立ち、上層部の命令や意向を上意下達で部下に伝え、チーム(組織)を引っ張ります。また、リーダーは高い能力や知識を持てるように人一倍努力し、一人で様々な問題に対応します。

支援型リーダーシップ(サーバント・リーダーシップ)

リーダーはチームの縁の下の力持ちとして、部下の目標や自己実現を支援します。部下の個々の能力を把握し、強みを最大限に引き出し、成長へと導くことを通じてチームの目標を達成します。

社会の価値観が多様化し、技術は急速に変化し、かつグローバル化が拡大するなかで企業が成果を上げるには、多様な価値観や能力を持つメンバーの特性・資質を活かす必要があります。従来の支配型リーダーシップでは、命令と統制で組織を動かすため、メンバーは指示待ちの状態となり、成長やイノベーションを生み出すことが難しくなっています。

成長とイノベーションを生み出すには、メンバーが自ら力を発揮することが必要であり、そのために上司は部下を支援する必要があります。約50年前に提唱されたサーバント・リーダーシップが今注目されるのには、こうした事情があると言えます。

サーバント・リーダーシップの特性10

提唱者であるロバート・グリーンリーフ氏は、サーバント・リーダーシップには次の10の特性があるとしています。

1 傾聴

メンバーの意見や希望を聞くことができる

2 共感

メンバーの立場に立って物事を考え、共感できる

3 癒し

メンバーの心を癒すことができる。また部下の本来の力を発揮させられる

4 気づき

チーム全体を把握し、部下の変化に早くに気づける。また鋭い知見をもって自分にも気づきを得られる

5 説得

仕事上の地位で服従を強いることなく部下を説得できる

6 概念化

チームの目標や、自分と部下の夢を概念化できる

7 先見力

現在と過去の出来事からある程度、行きつく先(帰結)を予測できる

8 執事役

部下の成長を支援し、信頼関係をつくり上げられる

9 成長

部下の個々人が持っている能力や可能性を信じて成長を促すことができる

10 共同体(コミュニティ)づくり

部下が働きやすい環境・コミュニティをつり出せる。組織の中でお互いに助け合える関係をつくることができる

サーバント・リーダーシップを導入するメリット

サーバント・リーダーシップを組織運営に取り入れた時に得られるメリットとしては次のようなことが挙げられます。

従業員の主体性が高まる

サーバント・リーダーシップによりチームで目標や夢を共有できると、全員が目標に向かって進むことができます。こうした中では、一人ひとりが目標に向かって自分のやるべきことを主体性に考えることができます。リーダー1人がメンバーを引っ張らなくても、全員で協力し支え合いながら先に進めるようになります。

チーム(組織)のコミュニケーションが円滑になる

リーダーがメンバーの意見を「傾聴」したり、メンバーの目標に「共感」したりすれば、メンバーからリーダーへの信頼感も深まります。このことにより、コミュニケーションも円滑になります。

心理的安全性が高まる

サーバント・リーダーシップを導入したチームでは、心理的安全性が高くなると言われています。チームのメンバーが互いに信頼・尊敬し合い、率直に話ができ、このチームは安全だと思えるからです。自分の意見を積極的に言うことができ、失敗を恐れずに挑戦できる環境がイノベーションを生むことはよく知られています。

チームへの帰属意識が高まる

主体性を持てるようになると、メンバーは自信を持てるようになります。このことで、個々の仕事へのエンゲージメントやモチベーションも向上します。それらは「この会社やチーム(組織)を支えたい」「このメンバーとで業績を上げたい」と、チーム(組織)への帰属意識が高まることにつながります。

 生産性が上がる

ここまで述べてきたような、メンバーの主体性アップやコミュニケーションの向上、心理的安全性、帰属意識向上などの効果によって、結果的にチームの生産性や業績が上がることが期待できます。

サーバント・リーダーシップのデメリットと注意点

現代の環境においてメリットの大きいサーバント・リーダーシップですが、デメリットもあります。デメリットについても確認した上で、組織運営にサーバント・リーダーシップを取り入れるか否かを見極めるとよいでしょう。

決定までに時間がかかる

支配型のリーダーは自分の意思一つで物事を決定できますが、サーバント・リーダーシップはチーム(組織)全員の意見を聞き、それをまとめて決定するため、物事を決めるまでに時間がかかります。とくにチームを構成する人数が多いほど時間がかかり、早急に対応を求められるシーンではそれを妨げる可能性もあります。

サーバント・リーダーシップを取り入れる際は、リーダーの資質を見極めるだけでなく、チーム内の人数が適正かどうかなども考える必要も出てくるでしょう。

合わないメンバーへのフォローが必要になる

サーバント・リーダーシップは、積極的で知識や経験があるメンバーが多いチームでは効果的です。しかし、知識や経験が浅い新入社員や、自主性が低い部下などが多いチーム(組織)は、サーバント・リーダーシップが合わないこともあります。リーダーはそうした部下をフォローする必要が出てきてしまい、そのことがチーム全体の生産性に影響しかねません。

また、サーバント・リーダーシップが適さない業務もあります。即決・素早い対応が求められるコールセンターのリーダー職などは、支配型リーダーシップのほうが適しているかもしれません。

高いコミュニケーション能力が求められる

メンバー間でのコミュニケーションをとる機会をつくったりメンバー間をつなげたりするのもリーダーの役割です。つまり、リーダーには高いコミュニケーション能力が求められます。コミュニケーション能力が低い人はサーバント・リーダーに不向きと言わざるを得ないでしょう。

サーバント・リーダーシップの導入ポイント

サーバント・リーダーシップでチーム組織運営を成功させるポイントをご紹介しましょう。

目標を明確にする

部下一人ひとりの意見を尊重するサーバント・リーダーシップは、リーダーが決定権を持たないため、ともすれば「方向性が定まらない」ことにもなりかねません。リーダーは明確な目標を示し、メンバー間で共有しておく必要があります。

リーダー自らが率先して行動する

リーダー自身が10の特性を理解し、積極的に行動する姿勢を見せることで、チームの結束力が高まります。そのためにはリーダーが自分自身を振り返り、自己認識を深めておくことが重要です。

リーダーが自分のケアを行う

サーバント・リーダーは、自分よりメンバーへのケアをすることを優先しがちです。そのため、身体や精神が消耗しないよう、自分のケアも積極的に行うことも重要です。部下への貢献だけでなく、自分を優先する時間もとるとよいでしょう。

 

サーバント・リーダーシップは現在注目されているリーダーシップであり、得られるメリットが数多くあります。まずは特性を理解したうえで、それぞれの組織に合うリーダーシップを考えてみていただければ幸いです。