失敗しない研修計画
課長とは大きく役割が違うからこそ重要な「部長研修」
課長と部長、どちらも管理職としての立場ですが、決定的な違いは「マネジメントする範囲」と「自身の意思決定が会社全体に及ぼすインパクトの強さ」です。この違いが、それぞれの役割の違いでもあり、役割が違うからこそ、必要な能力・スキルも違います。課長から部長に変われば、OJT、OFF-JTを問わず、役割を果たすために必要な能力・スキルのトレーニングは欠かせません。
部長とはどのような存在か
課長の役割は、自ら管轄する課をマネジメントする責任者です。部長も、管轄する部門の責任者であるという点は同じですが、課長との大きな違いは、より経営層に近い立場として、会社全体のことを視野に入れて動くことを求められるところにあります。会社の方針を深く理解した上で、自部門の方針を定め、組織としての成果を出さなくてはなりません。
同時に部長は、部下である課長について、より経営に近い視点を持ちながら成果を出せるよう育成する存在でもあります。他部署との調整や人脈作りを行いながら、同時に課長以下のメンバーの挑戦をサポートする必要があります。
課長から部長になる難しさ
課長が「経営意図を現場に落とし込む橋渡し役」だとすれば、部長は「会社のトップのサポート役」と言えます。そのため業務上の判断も、課長が主に自分の組織内の状況を見て行うのに対し、部長は会社全体の経営について理解した上で行うことになります。また、課長はある程度決められた方針に従って動くのが基本ですが、部長になると各部門の成長戦略と会社全体の戦略にも関わることになるでしょう。
意思決定においては、課長よりも決済額が大きくなり、よりハイリスクな課題についてよりスピーディに判断する力が求められます。そして、課長時代には「課」をどうするかという視点を持っていればよかったのが、「会社」「課長」「組織(部・課・グループ)」「業績」「事業」をどうするかという5つの視点が求められるようになるのです。
責任の大きさも異なります。課長の責任は基本的に自分の課に対するものです。そのため、自分の課の利益や課題を解決するために「目に見えるもの」を中心としたマネジメントを行うことになります。部下の能力を活かし、課題を解決し、利益を追求することが課長の役割です。
一方、部長には、目の前にある課題だけでなく、予測不可能な時代の中での課題構築力も必要となり、「目に見えないもの」マネジメントする力が求められます。部署に紐づくすべての課の成果を出すために、収益確保とリスク管理を両立させながら組織をデザインしていく力も必要です。
このように、部長になるとマネジメントの難易度が格段に上がることになります。
部長に求められる行動変革のポイント
上記で説明したように課長と部長の役割は大きく異なります。その中で、特に部長に求められる行動変革のポイントを紹介します。
「管理者」としての視座から、部門「経営」のための視座へ
課長の主な役割は「管理」ですが、部長には部門の「経営」が求められるため、経営者レベルで物事を見るよう、視座を一段高くする必要があります。視座が上がれば視野は広がり、これまで見えなかったものが見えるようなるでしょう。
会社の成長を意識した部下との向き合い方へ
課長は自分の部下の能力を最大限に活かすために部下と向き合いますが、部長は会社の方針をもとに、組織全体を見ることが求められます。部下のキャリアを考慮しながら、会社をより成長させるための配置転換や業務アサインメントを考える場合もあります。
業務の改善から改革へ
組織の成長には、「新しいことへの挑戦」として業務の改革が求められます。業界内や社内の常識にとらわれてしまうと目の前の業務の改善になりがちです。業務を改革するためには、外部に目を向けて全体を俯瞰する力が必要と言えるでしょう。新市場の開拓や新規事業の立ち上げという点についてだけでなく、ダイバーシティ推進の取り組みなど、既存の業務に対する大胆な変革も必要です。
新任の部長や未来の部長候補者に「部長研修」が行われるのは、課長と部長の役割の違いに対して上記のような意識と行動の変革が必要だからです。新任研修はさまざまな階層で行われますが、部長に就任した際の研修はとりわけ大きな意味を持つといえます。
現代の部長職に求められる能力
とりわけ現代は、予測不可能で変化が早く、正解のない時代だと言われています。そんな中で部長の役割を果たすために、求められる能力についても考えてみましょう。
決断力
自ら意思決定をする場面が増えるため、当然ながら決断力が必要になります。変化の激しい世の中で決断力を発揮するためには、膨大な情報を素早く処理する力や、それらの情報からシナリオを構築する力を持っていることが前提になるでしょう。
構想力
ものごとが短期間で変化する中で成果を挙げるには、既存の課題を解決するだけでは十分ではありません。経営の視点を求められる部長職には、「今はまだ存在しないが実現可能なもの」を想像して形にする力、新たな展望についてグランドデザインを描く力が必要です。
EQの高さ
EQ(Emotional Quotient)は「感情指数」や「心の知能指数」とも言われ、自分の感情をコントロールする力や、相手の気持ちを知覚する力を表します。管理職は組織のメンバーに大きな影響を与えると言われますが、とくに部長はその影響範囲も大きいため、EQの高さは大きな意味を持ちます。
学んでおくべきこと、身につけておくべきスキル
部長として求められる役割を果たすために必要なこととして、具体的には以下のような内容を学んでおくと効果的です。
部長の役割について
「管理者」から部門「経営者」に役割が変わるにあたり、意識や行動を変えるためにも、新たな役割を正しく理解しておく必要があります。
部門経営について
部門のトップとして、ヒト・モノ・カネといった経営資源を活用し、事業や組織を成長させるための戦略が必要です。そのために、事業、業績、組織(部・課・グループ)、課長、そして会社全体について、意思決定できる力をつけておかなければなりません。経営分析や戦略立案の方法、投資への意思決定やリスク管理等のスキルもつようになります。
部門責任者としての自分の考えや信念の形成、ブラッシュアップ
部長は、部下に「この人についていきたい」と思わせる人間力が必要です。そこには、責任者として仕事に対する信念を持つことや組織のミッションを語り続ける姿勢が大切です。
世代間ギャップについて
部長は課長を育成する立場でもありますが、本人が課長を務めていた時代とは業務範囲やメンタリティが違う可能性を踏まえて臨む必要があります。課長の歩んできた時代背景や、自分の時代とは異なる事業環境などへの理解を深めておくべきでしょう。
学び方のポイント
部長研修では、講義だけでなく、講義+演習の組み合わせで学んだ方が、実務に活かしやすいでしょう。また、場合によっては他社の同階層の方々と共に学べる研修も効果的です。自社、組織内だけでなく、外部に目を向けることで、他社との相互啓発・研鑽により、異なる発想に触れ、視野を拡大する効果が見込めるでしょう。
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