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公開日 : 更新日 : 人材流動化の時代に欠かせない「キャリアオーナーシップ」という考え方<後編>

人材の流動化が進み、個人の働き方や価値観が多様化する現代において、自分らしく生き生きと働き続けるためには、社内外に目を向けながら自らキャリアを開発していく「働くことへの主体的な姿勢」が重要です。終身雇用の前提が変わり、ビジネス環境の変化スピードが加速する今、「自分にはどんなスキルが必要か」「これまでの経験をどう活かすか」と、自分を軸にキャリアを考える必要性はますます増しています。こうした時代背景から、「キャリアオーナーシップ」という考え方が、社員にとっても企業にとっても経営の根幹をなすテーマとなっています。

本稿(後編)では、中堅社員、ライフイベント層、シニア社員に向けた個別の対応策を紹介します。

キャリアオーナーシップ施策の全体像や、内定者・新入社員~若手向け施策について紹介した<前編>はこちら >>

社員の階層・おかれた状況別に意識したい、キャリア開発の考え方(2)

中堅社員(30歳前後~)向け:キャリアの停滞感を打破し、市場価値を再定義する

現場の最前線で中核として活躍する中堅社員は、業務に習熟し安定して成果を出せるようになる反面、「このままずっと同じ業務が続くのか」というキャリアの停滞感を覚えやすい時期でもあります。この層のモチベーション低下を防ぎ、さらに一段高いレベルでの自律を促すためには、社内の枠にとらわれない刺激や、より柔軟な選択肢の提示が必要不可欠です。

組織の外で視野を広げる「越境学習・プロボノ活動」の支援

長年同じ社内環境にいると、自分のスキルが他社や社会でどれほど通用するのか(市場価値)が見えにくくなります。そこで、他社との交流プログラムやNPO法人でのプロボノ(専門知識を活かしたボランティア)活動など、社外の環境に身を置く「越境学習」を支援します。外の世界で揉まれることで自らの強みと課題を客観視でき、そこから得た新たな視点や人脈を自社に持ち帰ってもらう効果も期待できます。

新たな可能性に挑戦できる「副業・兼業の解禁」

自社だけでは得られない経験やスキルを獲得する手段として、副業や兼業を認める企業が増えています。これは単なる収入増加の手段ではなく、「自分の名前で仕事をする」という究極のキャリアオーナーシップ教育でもあります。本業との相乗効果を生み出すような副業を推進することで、中堅社員の能力開発が加速し、結果的に自社でのパフォーマンス向上にもつながります。

マネジメントか専門職かを選ぶ「複線型人事制度」の整備

これまでは「中堅になれば管理職を目指す」という単線的なキャリアが一般的でした。しかし、すべての人がマネジメントを希望し、またその適性があるわけではありません。自らの意思で進む道を選択できるよう、「マネジメントコース」と「スペシャリスト(専門職)コース」のように多様なキャリアパスを用意する複線型人事制度があれば、社員は自分の強みを活かせる道を自ら選ぶことができ、それがキャリアに対する責任感と主体性にもつながります。

ライフイベント層向け:時間的制約下でも「自律的なキャリア選択」を止めない

育児や介護といったライフイベントを迎えた社員は、時間的・物理的な制約を抱えることになります。これまで企業は「働きやすさ(両立支援)」を重視し、業務負担を軽減するサポートを行ってきましたが、それが結果的に本人の意に反するキャリアの停滞(いわゆるマミートラックなど)を招くケースも少なくありません。制約がある中でも「自分はどう働きたいか」を主体的に選択できる環境づくりが、この層の離職防止と活躍推進の鍵となります。

制約下での「キャリアアップ」を考えるマインドセット研修

「今の状況では現状維持しかできない」という思い込みを取り払い、限られた時間の中でいかに成果を出し、自身のキャリアを発展させていくかを考える研修を実施します。会社側から一方的に「配慮」として業務を取り上げるのではなく、本人が「今できること」「挑戦したいこと」を自ら発信し、上司とすり合わせを行うための前向きなマインドセットを醸成します。

「ロールモデル・コミュニティ」の形成

ライフイベントと仕事の両立において、「こうすれば正解」という画一的なモデルは存在しません。そのため、多様な働き方を実践している社内の先輩社員との交流機会(社内コミュニティや座談会など)を提供することが有効です。身近なロールモデルのリアルな体験談やタイムマネジメントの工夫を知ることで、社員一人ひとりが「自分らしい両立のあり方」を見つけやすくなるでしょう。

シニア社員向け:企業と社員の新たな関係性を構築し、次なるステージへ

旧来の終身雇用を前提とした関係の中でキャリアを積んできたシニア層社員に対しては、「会社が定年まで面倒を見る」という従来型のイメージを変え、新たな関係づくりに向けた支援を行う必要があります。本人が自律的にセカンドキャリアを選択できるためには、以下のような環境整備が求められるでしょう。

転職・起業準備を見据えた「セカンドキャリア支援制度」の導入

早期退職者への退職金上積みに加え、キャリア転換に向けた学び直しのための休暇制度や支援金の支給を設けます。これにより、社員は定年を待たずとも、より幅広く主体的なキャリア選択が可能になります。

社外での活躍を後押しする「転身先の紹介・ネットワーク整備」

希望者に対して転身先の紹介や同業他社の求人案件を共有する仕組みです。近年では、退職者を貴重な社外ネットワークと捉える「アルムナイ(退職者)ネットワーク」の活用も一般化していて、社内の新陳代謝を促すだけでなく、社会全体での人材の最適配置や新たなビジネス協業の創出にもつながっています。

柔軟な働き方を実現する「定年退職者との業務委託契約」

70歳までの就業確保措置への意識が高まる現在、フリーランスや起業を希望するシニア社員に対し、自社との業務委託(フリーランス)契約という形で自律的な働き方をサポートする制度も、有効な選択肢として広く認識されつつあります。画一的な「再雇用」ではなく業務委託として契約することで、勤務地や勤務時間の自由度が増し、シニア社員はより望ましい働き方を選ぶことができます。

おわりに

ここまで見てきたように、キャリアオーナーシップの形成は、入社前からシニア期に至るまで取り組むべき理由がある、重要なテーマです。積極的に取り組めば、「社員のキャリアは会社が用意するもの」という従来の日本型の常識から脱却し、個人の自律的な成長を支援する姿勢を示すことにもなります。働く人に選ばれる企業であるための強みにもなるでしょう。

社員一人ひとりが主体的にキャリアを描き、いきいきと働くことは、組織全体の活力と生産性を高めます。個人の「ありたい姿」と企業の「目指すビジョン」を重ね合わせ、互いに選び・選ばれる対等な関係性を築くことは、これからの人的資本経営を成功に導く重要な鍵となるでしょう。

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