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    評価が機能しない組織はなぜ成長しないのか?
    〜評価制度が機能しない本当の理由と、組織が変わるヒント〜

公開日 : 更新日 : 【ウェビナーレポート】
評価が機能しない組織はなぜ成長しないのか?
〜評価制度が機能しない本当の理由と、組織が変わるヒント〜

2025年4月に開催された本ウェビナーでは、講師の廣岡久生氏が、「評価制度が機能しないことで組織の成長が停滞する」実態を指摘し、その背景と打開策について解説。評価制度の形式化・制度疲労に悩む人事担当者に向け、単なる制度見直しにとどまらない、現場起点の組織づくりのヒントが提示されました。

評価制度をめぐる問題点

冒頭で廣岡氏は、近年の転職志向の高まりのなかで「評価制度に対する不満」が離職理由の一因となっている可能性に触れました。実際、各種調査の結果からも、自社の評価制度への不満を抱えている人は50%を超えていることが示されているということです。

また、本来は人材育成に役立つはずの評価制度が誤解されている現状が紹介されました。評価は「処遇のため」だけのものであるという認識や、「目標が未達だと減点される」「面談は失敗を叱責される場」といった受け止め方は本来正しくありません。しかし、こうした誤解によって、「減点されるのが怖くて挑戦しない」といったマイナスの影響が出ているケースも多く、せっかくの制度がかえって成長意欲や挑戦意欲の低下を招いているとのことでした。

さらに廣岡氏は、評価者である管理職への支援にも問題があると指摘。調査によると70%の企業が評価者のための研修を行っているものの、その内容はほとんどの場合、「制度について理解すること」にとどまっていて、成長支援の視点が盛り込まれていないのが現状であるようです。

制度の「逆機能」はなぜ起こるのか

廣岡氏は、評価制度が逆機能(よくない機能)を果たしてしまう主な要因として、次の3点を挙げました。

1.制度が複雑すぎて理解できない

項目や仕組みが煩雑で、評価者・被評価者ともに納得感を得られない。

2.評価基準が上司によってまちまち

評価者研修を行っていても、統一感を持たせるのには限界がある。

3.結果が報酬と結びつきすぎている

結果ばかりが評価されるため、目標設定が無難なものになっている。

こうしたことが起こっている結果として、成長のための挑戦が減ってしまい、組織の力が削がれている、と廣岡氏は警鐘を鳴らします。

評価に頼らず成長を促す3つのキーワード

こうした状態を脱するために、廣岡氏は、評価に依存しないマネジメントを提言。そのカギとなるのが心理的安全性であり、心理的安全性を実現する現場支援策として、「OKR」「ピアレビュー」「ギフトナレッジ」という3つの手段があると語りました。

1.OKR(Objectives and Key Results

未来志向の目標を共有し、部署や個人の自発性を引き出す仕組み。現場の意見を取り入れ、対話を通じて「私たちはどこに向かいたいのか」という将来のあり方を言語化し、合意形成するプロセスこそが重要だということです。ウェビナー参加者には、OKR目標を立てる際の考え方や、目標事例などの資料も配付されました。

2.ピアレビュー

いわゆる360度評価のように、上司以外のメンバーからもフィードバックを得る仕組み。注意点として、制度導入時には「いきなり評価に直結させず、信頼関係づくりのために行う」「初期は匿名にする」など運用ルールに気を配り、よい職場風土づくりとセットで行うべきである点が強調されました。

3.ギフトナレッジ

メンバー全員が自らの知識や経験を「贈り物」として共有し、温かく前向きな組織文化を育むこと。これにより称賛や感謝が循環し、相互支援の関係が構築されていきます。Slackなどのツールを活用した事例も紹介され、デジタル環境でのナレッジ共有の可能性が示されました。

「相談しやすい上司」が組織の要

最後に廣岡氏は、こうした施策の中心にあるのが「相談しやすい上司」であり、その存在が組織の成長力に大きな影響を与え、定着率も上げると述べました。管理者である上司こそが心理的安全性の体現者であり、そうした上司を中心にOKR、ピアレビュー、ギフトナレッジが導入されることで相乗効果が生まれるというわけです。

おわりに

本ウェビナーでは、評価制度にありがちな問題点と、評価に依存することなく「人が育つ」「成果が生まれる」組織のあり方が示されました。人事担当者には、評価制度そのものを見直すだけでなく、現場支援の視点を持ちながら、組織の風土を育てる意識が求められていると言えるでしょう。