- TOP
- コラム
- 成果に繋げる研修の活用
- 外国籍従業員の受け入れ環境整備を考える
公開日 : 更新日 : 外国籍従業員の受け入れ環境整備を考える
日本の労働市場において、外国籍従業員は年々増加しています。人手不足の解消や外国人ならではの視点の導入など、企業にとって多くのメリットがある一方、入社後の環境整備が整っていないため早期離職につながるなどの課題もあります。将来的な業績向上に不可欠な、外国籍従業員の受け入れ環境設備について考えてみましょう。
外国籍従業員に関する現状
2024年10月末時点、外国人労働者数は230万人を超え、前年比でも25万人以上増加。届出が義務化された2007年以降、過去最多を更新している状態が続いています。また、外国人を雇用する事業所数は34万以上とこちらも過去最多となっています。
外国籍従業員の受け入れは、人口減少社会における労働力の確保という面で注目されていますが、それだけでなく、多様なバックグラウンドを持つ人材が加わることで、新しい視点や異なる文化・価値観に触れられ斬新なアイデアや事業が生まれやすくなるというメリットも指摘されています。
<参考>
外国籍従業員が直面しがちな課題
一方で、外国籍従業員が入社後すぐに直面する課題も少なくありません。日本企業特有の性質として、以下のような点が課題になりがちです。
業務内容が入社前に聞かされた範囲と異なる
日本型雇用といわれるいわゆる「メンバーシップ型雇用」では、幅広い業務を担うのが一般的です。一方、諸外国では、職務内容を定めて雇用する「ジョブ型雇用」が一般的であることも多く、事前に聞いていた業務内容と実際の業務に差があることに疑問を持つ人がいます。
職場の異文化理解が足りない
国による文化や価値観の違いを理解しないまま接してしまうと、トラブルが発生することがあります。たとえば、他のメンバーの前でミスを指摘したことが、「プライドを傷つけられた」と捉えられるケースなどです。
日本的なビジネス慣行がわからない
ビジネスマナーは国によって異なります。日本独自のビジネスマナーについてトレーニングを受ける機会が準備されていない場合、ビジネス慣行が理解できず問題が生じることがあります。
キャリアパスが用意されていない
人材不足などの事情から外国人の採用に踏み切ったものの、採用したあとの育成計画が未整備でキャリアパスも用意されていないことがあります。こうした状態では、本人の働くモチベーションが高まらないでしょう。
ワークライフバランスの崩れ
働く姿勢や、働く時間などの観念は国や文化によって差があります。そのため、日本の働き方に合わせると、外国籍の社員にとっては「ワークライフバランスが崩れる」と感じられることがあります。
強い年功序列への違和感
年功序列的な考え方が強い職場では、新しく入った人の意見や行動が受け止められづらいかもしれません。このことは、「勤続年数に関わらずスキルで判断するべき」という文化的背景を持つ人にとっては強い違和感となります。
外国籍従業員に役立つオンボーディング施策
前項のような課題を対処するには、入社後すぐに適切な受け入れ環境整備を用意することが不可欠です。以下のようなオンボーディング施策を導入することで、外国籍従業員が抱える不安やストレスを軽減し、安心して業務に取り組める土台を築くことができるでしょう。
実践的な研修プログラムの実施
外国籍従業員が日本独自のビジネスマナーやコミュニケーションスタイルを理解できるよう、実践的なワークショップやロールプレイ形式の研修を実施します。実際の業務に近い演習を通じて、自信を持ってもらうことも目的とします。
定期的なキャリア面談とキャリア開発支援
定期的に面談やフィードバックを実施し、キャリア目標や課題を明確にするサポートをします。お互いが業務について意見を交わすことで、チームパフォーマンスの向上も期待できるでしょう。また将来への働き方に安心感を抱けるように、キャリア開発プログラムを整備し、明確なキャリアパス提示をできるようにします。
メンター制度の導入
外国籍従業員が個別に相談できるように、メンター制度を活用します。文化や価値観の違いによる、精神的な負担にも有効です。異文化への相互理解が深まることで、コミュニケーションが活性化しやすくなり、早期離職防止にも役立ちます。
<関連記事>
チームビルディング活動
外国籍の社員も含め、チーム全体でチームビルディン活動を実施することは、組織の文化や互いの考え方を理解するきっかけになります。
<関連記事>
これらの活動の基本的な考え方は、一般的なオンボーディング施策と共通する部分も多くあります。いわゆるオンボーディング施策についても見直してみるとよいかもしれません。
<関連記事>
外国籍従業員への理解を深めるための研修テーマ
外国籍従業員の受け入れ準備として、受け入れ側の意識を変えることも重要です。外国籍従業員が日本企業の文化や価値観に馴染めるように、段階的に必要なアプローチ法なども学ぶとよいでしょう。そのためりに役立つ研修テーマを紹介します。
DEI研修
ダイバーシティ(多様性)・エクイエィ(公平性)インクルージョン(包括性)の視点を学ぶことは、異なるバックグラウンドを持つメンバー同士が互いに尊重しながら働く助けとなります。具体的には、「自分と他者との価値観の違い」「自らのアンコンシャス・バイアスの傾向」などを学ぶことが役立つでしょう。
コミュニケーション研修
言葉や文化の違いが大きな壁となる外国籍従業員にとって、コミュニケーションは離職防止にも重要な役割を果たします。受け入れ側は、文化的な違いからくる行動の違いや言語的なミスを理解しながらサポートする必要があります。「文化や価値観の違いを踏まえた適切なマネジメント」「外国籍従業員に伝わりやすい指示や依頼の仕方」などの内容は、即効性のある学びとなるでしょう。
<関連記事>
ここまでの内容を改めて振り返ると、外国籍社員にとっての課題は、若手社員の感じやすい課題や、育児や介護中の社員が抱える問題と共通する部分があります。それだけに、こうした課題を解決する取り組みは、外国籍従業員の受け入れ環境整備としてだけでなく、組織全体のコミュニケーション向上や風土の改善にも直結します。外国人社員のための環境整備が目の前の課題となっている企業はもちろんのこと、そうでない場合にも、改めて考えておくべきテーマと言えそうです。