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公開日 : 更新日 : DXを本当に進めるために――一般社員にこそ必要な“5つの力”
多くの企業がDXを意識しているものの、実際にはなかなか前進しないという声もよく耳にします。背景にあるのが、「技術を導入すること」が目的になってしまい、「それを活かす人材がいない」という根本的な問題です。実は、DXの成否を分けるのは「社内の人材」。専門知識を持つエンジニアだけでなく、現場で日々の業務に携わる一般社員がどのように関わるかが鍵を握っています。本稿では、DX推進において一般社員にこそ必要な「5つの力」を整理して紹介します。
なぜDXに一般社員の力が重要なのか?
DXとは、単に新しいシステムを導入することではありません。真に求められるのは、業務そのものを見直し、より価値あるものへと再設計することです。そうである以上、日々の業務を最もよく知る一般社員こそが、DXを支える要となります。
DXは「デジタル技術の導入」そのものではなく、「業務や価値提供の仕組みを見直す取り組み」です。したがって、現場を理解する社員が主体的に関わらなければ、改革は机上の空論に終わってしまいます。
たとえば、営業現場で顧客情報がうまく共有されていないという問題は、単にシステムを導入するだけでは解決できません。「なぜ共有されないのか」「本当に必要な情報は何か」といった問いを立て、業務プロセスを組み替えることが必要です。このような現場の視点を踏まえずに技術だけが導入されても、形だけのDXに終わってしまうでしょう。
このような活動で力を発揮するのは、日々業務を担っている社員です。彼らが自分の業務を客観的に見直し、デジタル活用と結び付けて考えられるようになることで、はじめてDXは実効性を持ちます。つまり、「ITに詳しくないから関係ない」のではなく、社員一人ひとりが当事者となり、DXを「自分ごと」として考えられる状態を目指す必要があるのです。
一般社員に必要な“5つの力”
真のDXに向け、技術職ではない一般社員が身につけるべき力としては、次のようなものが挙げられます。
1.課題発見力・構想力
DXの出発点は「何を変えるか」を見極めることにあります。現状を批判的に見直し、業務改善や価値創造の糸口を探る力が欠かせません。
自社の業務を題材に「何を変えれば価値につながるか」を考える場が、社員の構想力を育みます。
2.デジタルリテラシー
「自分は詳しくないから」と任せきりにする姿勢では、DXの議論に参加できません。専門家のように詳しくなる必要はなくても、基本的なデジタルリテラシーを備えていることが、専門家と対等に対話するための前提条件となります。
専門用語に頼らず、日常業務に役立つ基礎を学ぶことがポイント。「デジタルリテラシー習得講座」ではITの基本的な構造や最新の技術動向を、「データ分析・統計入門セミナー[初級編]」では数値データに慣れ、日々の業務で使える思考法を学びます。
3.データ活用力
データに基づく判断はDXの基本です。とはいえ、複雑な統計処理を自ら行う必要はありません。大事なのは「どんなデータを見ればよいか」「その結果をどう活かすか」を考える力です。
日常的に使用するExcelなどを用いながら、数値の裏にある意味を読み解く習慣をつけることが第一歩となります。
4.業務×デジタルの翻訳力
現場の課題を技術に落とし込めなければ、せっかくの仕組みも活かせません。必要なのは、「現場で困っていること」と「デジタル技術でできること」を橋渡しする力です。
コンサルタントが使っている問題解決の手法と、そのために必要なデータ分析の考え方やアプローチ方法を、自分たちの業務に引き寄せながら学ぶことで、翻訳力が磨かれます。
5.部門間連携・コミュニケーション力
DXは、部署をまたいだ連携なくしては実現しません。こうした活動で求められるのは、情報共有、合意形成、推進体制づくりなど、横のつながりを支える力です。
たとえば、「プロジェクトマネジメント研修」では、部門間の調整や進捗管理のスキルを習得。「チェンジマネジメント〈変革促進実践〉ワークショップ」では、変革に対する心理的抵抗を乗り越えるための支援のあり方を学べます。
これらの研修で身に付けるのは「人を動かす力」。「プロジェクトマネジメント」では部門間の調整や進捗管理のスキルを、「チェンジマネジメント〈変革促進実践〉ワークショップ」では人的側面から組織変革を促進するための“3つのチェンジ”モデルを実践的に学びます。
DXに必要な“5つの力”をどう育てるか?
これらの力は、一度に身につける必要はありません。重要なのは、段階的に経験を積み、自信を育てることです。まずは「知る」「体験する」ことから始め、次に「実務に取り入れる」段階へ進むと効果的です。
「IT嫌いな人ほど対象にする」のもよいかもれしません。苦手意識の払拭が、DX推進のボトルネックを外す近道だからです。業務改善視点でのデータ活用や、DXの全体像をつかむワークショップなど、身近な題材を用いると取り組みやすくなるでしょう。
いずれにしても、まずは組織の現状を把握することは重要です。JMAでは、ここまで紹介してきたような「業務やビジネスを変革するスキル」と「デジタル技術を活用するスキル」を測定できるアセスメントを開発。アセスメントによる自己認識→知識の習得→実践→サポートというステップで、DX推進人材育成を支援しています。
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おわりに
DXという言葉が流行し、IT導入ばかりに目が向きがちですが、DXの本質は「人と業務の変革」です。社員一人ひとりが課題を見つけ、データを扱い、部門を超えて協力できるようになったとき、はじめてデジタルは組織に力を与えます。
これからの企業にとっての最大の資産は、現場の課題と結び付けてDXを捉えられる人材です。テクノロジーだけでなく“人の力”に投資する意識こそが、DX成功への第一歩となるのではないでしょうか。
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