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アルムナイ採用で優秀な人材を確保する

公開日:2024/07/25 更新日:2024/07/25

優秀な人材の確保が課題となる中で、採用の方法が多様化しています。そんな中で耳にする機会が増えたのが「アルムナイ採用」という言葉です。ここでは、「アルムナイ採用」とは何か、またそれが優秀な人材確保のためにどのように役立つのかを解説します。

アルムナイ採用とは何か?

アルムナイ(alumni)とは「卒業生、同窓生、校友」という意味で、企業では企業の退職者、元社員という意味で使われます。このことから、企業が退職者や元社員を再雇用する採用手法のことをアルムナイ採用といいます。日本では最近になって注目され始めましたが、外資系企業では以前からよく行われる採用手法の一つでした。

「再雇用」という点では育児や介護などのやむを得ない事情で離職した人を再雇用する「ジョブリターン」とも似ていますが、アルムナイ採用は「自発的に退職を選択した人材」を採用の対象とする点が異なります。

アルムナイ採用が注目されている背景

これまでの日本の企業では、一度自発的に退職した社員が同じ企業に再就職することはまれでした。昔は同じ企業で長く勤める社員が多く、退職は一般的にネガティブなこととされ、同じ企業に復帰すること自体考えにくかったからです。

そんな中でアルムナイ採用という手法に目が向き始めた背景には、優秀な人材の確保が難しくなったという事情もありますが、転職が当たり前になるにつれ、「ポジティブな転職」が増えたこともあります

社員のポジティブな転職が増えたことにより、退職した社員は「社内に不満があって辞めた人材」ではなく、「自社の事業への理解と適応力があり、かつ他社のノウハウも保有している人材」と捉えることができるようになりました。このような、既存のメンバーだけではカバーできないスキルや経験をメリットと捉え、積極的にアルムナイ採用を進める企業も出てきています。

アルムナイ採用のメリット

アルムナイ採用のメリットには次のようなことが考えられます。

自社の組織や文化の中で活躍出来る適応力を持っている

自社に在籍経験があるため、組織や文化への適応力を持ち合わせており、即戦力化までにかかる時間も短縮できます。

スキルや経験のミスマッチが起こりにくい

企業は社員が退職前に持ち合わせていたスキルや経験について把握しているため、入社後のミスマッチが起こりにくいのがメリットです。

他社のノウハウも保有している

他社も経験している人材は、他社のノウハウや新しい人脈、知見を保有している可能性が高く、それらが自社にとってはプラスの情報となります。 

エンゲージメントが高い

一度退職した後、再び自社で働きたいと思ってくれている時点で、自社に対するエンゲージメントは高い人材であると考えられ、再就職後も生き生きと働いてくれることが期待できます。

採用ブランディングにつながる

アルムナイ採用が増えることで「また戻りたい会社」=「退職後も人間関係が円満」という社内外でのイメージアップにもなります。「もう一度働きたい魅力のある会社」として採用ブランディングにもつながるでしょう。 

採用コストが削減できる

一般的に採用では、求人媒体やエージェントを利用するための費用が発生します。アルムナイ採用は途中のいくつかの採用工数をスキップできるため、採用コストの削減につながります。

アルムナイ採用のために考えるべきこと、必要な環境整備

アルムナイ採用には上記のようなメリットがあるものの、多くの採用数を見込める制度ではないため、アルムナイ採用を導入するには事前によく検討する必要があります。事前に検討すべき事項には次のようなことがあります。 

受け入れ態勢づくり(既存社員への周知等)

転職が当たり前と感じられる時代ではありますが、一度退職した社員を再雇用することに対してネガティブな感情をいだく社員が出てくる可能性もあります。まずは既存社員に対して、アルムナイ採用の概要や必要性などについて説明し、理解を得る必要があります。一度は退職した人材である以上、周囲との調整は不可欠であり、採用も慎重に行わなければなりません。

人事・賃金制度の再考

アルムナイ採用では再入社する社員の給与ベースの再考が必要です。以前の在籍経験をベースとするか、中途社員として賃金を設定するか、在籍期間の中断をどう見るかなど慎重に検討すべきです。再入社する社員、既存社員の双方に不満が生じないよう、人事・賃金制度のルールを整備しましょう。

良好なオフボーディング

オフボーディングとは、社員が退職の意思を表明してから退職するまでの一連の体験を向上させる施策をいいます。上司が退職する部下に寄り添って本音を聞き、一緒に働いた期間に対しての感謝を伝えるなど、退職時の体験を良いものにするように働きかけることがその後のアルムナイ採用の可能性を高めます。

退職後の良好な関係づくり

退職後の良好な関係もその後のアルムナイ採用の可能性を高めるため、社員が退職したあとも退職者とのネットワーク形成を推進する企業もあります。なおこうした取り組みはアルムナイ採用だけでなく、リファラル採用へのつながりや元社員の顧客化など、さまざまな形での広がりにつながります。

 

アルムナイ採用は企業が優秀な人材を確保する採用手段の一つです。こうした採用手段を見据え、まずは現在在籍している社員との関係構築を見直してみるだけでも、将来の幅広い採用活動に備えた準備になるといえそうです。