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公開日 : 更新日 : 自社に合う「あるべきリーダーシップ」を考える
リーダーシップには絶対的な正解はありません。時代や組織の状況によって求められるスタイルが異なるためです。「リーダーシップの歴史から、今あるべきリーダーの姿を考える>>」という記事では、リーダーシップ理論の歴史を振り返りながら、こうした「普遍的な正解はない」という観点を提示しました。では、実際の現場ではどのように自社にふさわしいリーダーシップを考えていけばよいのでしょうか。本稿では、組織の状況に応じて求められるリーダーシップの違いを整理し、「どんな場面で、どんなリーダーシップが有効か」を考えるヒントを紹介します。

なぜ「状況に応じたリーダーシップ」が必要なのか
現代の組織では、業務環境、メンバーの価値観の多様化、テクノロジーの変化が同時並行で進んでいます。こうした複雑な状況において、ひとつのリーダーシップをすべてに適用することは困難です。むしろ大切なのは、「組織の今の状態」を正しく把握し、それに応じて最適なリーダーシップを選び取る柔軟性です。
言い換えれば、リーダーシップとは何か特定のスキルを身につけることではなく、組織の課題と文脈に合わせてデザインするものになりつつあるとも言えるでしょう。
自社に必要なリーダーシップを考えるための4つの視点
では、どのような組織がどのようなリーダーシップを必要としているのでしょうか。その具体例に入る前に、まずは「何を見て判断するか」という視点を押さえておきましょう。
多くの組織で共通して判断軸となるポイントに、以下のような点が挙げられます。
①組織の成長ステージはどこにあるか
- 創業期・立ち上がり期
- 成長期・拡大期
- 成熟期・転換期
- 再生期・縮小期
②業務の特性はどのようなものか
- 専門性…専門性が高い組織かどうか(技術者の集団など)
- 複雑性…ルールや仕組みの整備が必要なのか
- 不確実性…判断のスピードが求められるのか
③メンバーの構成と発達度
- 経験豊富なベテラン中心か
- 若手・Z世代中心か
- 専門家・クリエイターなど裁量重視型か
④組織文化・価値観
- 権限委譲が進んでいるか
- トップダウンが強いか
- 対話や合意形成を重んじる文化か
こうした要素を踏まえて考えることで、今の組織にとってどんなリーダーシップが必要かが見えやすくなります。
状況別に見る「この場合はこのリーダーシップ」
ここからは、組織でよく見られる状況を考えながら、どのようなリーダーシップが求められるのか、典型的な例を見ていきます。
(1)創業期・新規事業の立ち上げ:トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップ
不確実性が高く、スピードと方向性の提示が求められる創業期では、失敗を恐れず学習する文化をつくることが鍵になります。こうした状況では、下記のような特徴を持つトランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップが力を発揮するでしょう。
- 明確なビジョンの提示
- 新しい挑戦を後押しする勇気づけ
- 試行錯誤を許容する風土づくり
■トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップが分かるコラム
組織の変革を促すトランスフォーメーショナル・リーダーシップとは?>>
(2)急拡大フェーズで属人化を脱したい:PM理論、管理型リーダーシップ
事業が拡大するフェーズは人が急増する局面でもあります。こうした中では個々の経験だけでは組織を動かせなくなるため、行動の明確化と仕組みづくりが優先されます。そのために必要なのは、いわゆるPM理論(行動理論)のP(Performance,目標達成)に寄った管理型のリーダーシップ。現代的でない印象があるかもしれませんが、「管理すること」自体が悪いわけではなく、組織を成長させる基礎となります。
- 目標設定やKPIの可視化
- 標準化・オンボーディングの整備
- 期待行動の定義(行動理論の活用)
■リーダーが取るべき行動に着目した古典的「行動理論」がわかるコラム
PM理論で捉えるリーダーシップと組織づくり>>
(3)長く続く組織文化を変えたい:トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップ×サーバント・リーダーシップ
成熟した組織では、カリスマ型の変革型のリーダーシップだけでは抵抗が起きやすい場面もあります。そうした組織で変革を進めるには、サーバント・リーダーシップの要素を取り入れ、変革と支援を両立するのが効果的だと言えます。
- 現場に耳を傾け、支援する
- 小さな成功体験を積み上げる
- 徐々に新たな習慣を浸透させる
■トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップが分かるコラム
組織の変革を促すトランスフォーメーショナル・リーダーシップとは?>>
■「支援型」とも呼ばれるサーバント・リーダーシップについて詳しく解説
サーバント・リーダーシップとは何か?必要なスキルや行動とは?>>
(4)専門家チーム(研究職・エンジニア・クリエイター):エンパワーメント・リーダーシップ
専門性が高い組織では、リーダーがすべてを把握することはできません。必要なのは、適切な権限委譲(エンパワーメント)を行い、自律性を確保することがメンバーの強みを最大限に活かすでしょう。
- 目的と期待値のみ提示し、方法は任せる
- 情報と意思決定の透明性を高める
- 障害を取り除く「支援役」に徹する
■エンパワーメントとは何をすることかがわかるコラム
社内でのエンパワーメントをどう進めるか?>>
(5)若手・Z世代中心の組織:コーチング型リーダーシップ・SL理論
現代の若手世代は価値観が多様化し、納得感を重視する傾向があります。こうしたメンバーに対しては、問いかけを通じたコーチング型のリーダーシップにより、「言われたからやる」ではなく、「自分で意味づけして動く」状態をつくることがポイントです。
- 対話による目標設定
- 一人ひとりの動機づけに合わせた支援
- SL理論による発達度に応じた関わり方
■メンバー一人ひとりに合わせてスタイルを使い分ける「SL理論」について紹介したコラム
■実は誤解しているかも?コーチングを正しく理解するためのコラム
「育てる人を育てる」研修 ティーチング・コーチング・メンタリングを学ぶ>>
(6)危機対応・トラブル発生時:トランザクショナル(取引型)・リーダーシップ
短時間での意思決定と統率が求められる状況では、トランザクショナル(取引型)・リーダーシップなどによるスピード感を持ったマネジメントが求められます。
- 指示の明確化
- 役割と優先順位の即時提示
- 報告ラインの一本化
■トランザクショナル(取引型)・リーダーシップとは何かが分かるコラム
危機に強い?トランザクショナル・リーダーシップとは何か>>
(7)横断プロジェクト・合意形成が必要な場面:シェアード・リーダーシップ
多用な人が関わるプロジェクトでは、1人の強いリーダーだけでは動かない場面が多くあります。こうした場面を動かすリーダーシップとして注目されているのが シェアード・リーダーシップです。部門横断の場面では特に効果を発揮します。
- 部分的なリーダー役を複数人が担う
- 役割ごとに最適な意思決定者を変える
- チーム全体でリーダーシップを共有する
■シェアード・リーダーシップの特徴や導入方法についても解説
組織を活性化し、若手を育てる【シェアード・リーダーシップ】の導入メリット>>
理論を「組み合わせる」ことが、これからのリーダーシップ
ここまで挙げたように、求められるリーダーシップは場面によって異なります。さらに現実には、ひとつの理論だけでは対応しきれないケースも多いものです。下記のような一見相反するリーダーシップを使い分ける場面も出てくるはずです。
- サーバント・リーダーシップで支えながら、トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップでビジョンも示す
- 行動理論で期待行動を明確にしつつ、コーチングで育成する
- 通常はエンパワーメント・リーダーシップを基盤に、危機的な場面でのみトランザクショナル・リーダーシップに切り替える
■「支援型」とも呼ばれるサーバント・リーダーシップについて詳しく解説
サーバント・リーダーシップとは何か?必要なスキルや行動とは?>>
■トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップが分かるコラム
組織の変革を促すトランスフォーメーショナル・リーダーシップとは?>>
■リーダーが取るべき行動に着目した古典的「行動理論」がわかるコラム
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社内でのエンパワーメントをどう進めるか?>>
■トランザクショナル(取引型)・リーダーシップとは何かが分かるコラム
危機に強い?トランザクショナル・リーダーシップとは何か>>
このように 状況に応じて複数のスタイルを組み合わせる柔軟性こそ、現代のリーダーに求められる力と言えるでしょう。
おわりに――自社の「あるべきリーダーシップ」を考えるために
リーダーシップを考えるために重要なのは、まず現在の組織の姿を正しくとらえることです。組織の成長ステージ、業務の特性、メンバー構成、組織文化といった軸は、組織の姿を捉えるための一つのものさしです。
注目されるリーダーシップは時代とともに変化していますが、「流行の理論」をただ取り入れるのではなく、さまざまな理論を理解しつつ、自社の文脈に合わせて取り入れていく柔軟さが求められています。
本コラムサイトでも多数ご紹介しているさまざまなリーダーシップ理論を踏まえつつ、本稿で示した「状況別の使いどころ」を考えていただくことで、組織にとって最適なリーダーシップを捉えるヒントにしていただければ幸いです。
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