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公開日 : 更新日 : 「セルフ・キャリアドック」からキャリア自律へ。キャリア支援の進化をたどる
人事や人材育成の実務に携わっている方であれば、行政のガイドラインや専門書などで「セルフ・キャリアドック」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。本コラムでは、セルフ・キャリアドックとはどのようなものなのかを紐解きながら、近年の「キャリア開発」「キャリア自律支援」の流れを振り返ります。

セルフ・キャリアドックとは何か?背景と狙い
セルフ・キャリアドックとは、2010年代の後半に国によって定義された概念で、企業が従業員の年齢や就業の節目を中心に、定期的にキャリアコンサルティング(専門家との個別面談)を受ける機会を設定し、キャリアデザイン研修などを組み合わせて、従業員の主体的なキャリア形成を包括的に支援する仕組みのことです。
この概念が生まれたきっかけは、2016年の「改正職業能力開発促進法」の施行です。この法改正により、企業には、従業員に対してキャリアコンサルティングの機会を確保することが「努力義務」として課されることになりました。
国がこうした仕組みを強く推進した背景には、日本の労働環境をめぐる構造的な変化があります。「人生100年時代」として就業期間の長期化が見込まれ、終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への動きも始まる中、キャリアの主導権は「会社」から「個人」へと移りつつありました。働く人は、かつてのように会社が用意した異動、昇進などのレールに乗るだけでなく、一人ひとりが自らのキャリアを自律的に考え、専門性やスキルを磨くことを求められ、企業側も、そうした自律的な人材を育成しなければ、激しいビジネス環境の変化に対応できない状況になってきたというわけです。
セルフ・キャリアドックの推進には、こうした動きを促進するための、標準的な仕組みのモデルを示す狙いがあったと言えるでしょう。
とはいえ普段あまり耳にしない…その理由
セルフ・キャリアドックという言葉は、現在も、国家資格であるキャリアコンサルタント試験で必須科目として明記されるなど、企業における人材育成やキャリア支援を語る上で重要な概念として位置づけられています。
しかし、企業の人事施策や取り組み事例などを話題にする際、この言葉そのものが表立って登場することはあまり多くないようです。たとえば、「我が社でもセルフ・キャリアドックを導入しよう」といった形でこの言葉が使われることは少ないのではないでしょうか。
ただし、用語としては一般化していなくとも、セルフ・キャリアドックの考え方が定着しなかったわけではありません。というのも、セルフ・キャリアドックは、あくまで国が定めたパッケージの総称であり、企業はこれをそのままの名称で導入しているわけではないからです。一般的には、「キャリア自律支援」「キャリアデザイン研修」「キャリア面談」といった、より現場に馴染む実践的な言葉に置き換えられているのが実態です。
つまり、これらの活動は「セルフ・キャリアドック」という言葉で表現されていないだけであり、そのエッセンスである「節目における自己理解」や「面談によるキャリア支援」といった活動は、現在の「キャリア自律」「キャリア開発」への取り組みの中で定着していると言えるでしょう。
「キャリア相談窓口の設置」だけでは制度は形骸化する
このように、それぞれの形で日本企業に浸透しつつあるキャリア支援活動ですが、これから本格的に仕組みを整備しようとする際、直面しやすい問題があります。典型的な例は、セルフ・キャリアドックの指針に示されたような「キャリア相談窓口」を設置しただけで満足してしまうケースです。
「社内にキャリア相談窓口を設けました。有資格者が対応するので、悩みがあればいつでも相談に来てください」とアナウンスしても、実際にはほとんど利用されず、制度が形骸化してしまうことは珍しくありません。
その理由の一つは、急に「キャリアについて相談してよい」と呼びかけても、自分自身の価値観や将来像が言語化できていないと、「何を相談していいか分からない」ということになりがちだからです。また、「社内の窓口に対して個人的な悩みや異動の希望などを話す」という仕立ては、それだけでは「話すことで人事評価に悪影響が出るのではないか」と受け取られても無理はありません。いわゆる心理的安全性が確保されないというわけです。
多面的な取り組みが真のキャリア支援を実現する
キャリア支援で重要なのは、単なる「悩み相談所」の設置ではなく、従業員が自身のキャリアに向き合うプロセス全体をデザインすることです。実際、国が定義したセルフ・キャリアドックの仕組みの中でも、キャリアコンサルティングだけでなく、キャリア研修などと組み合わせた体制づくりが推奨されています。
具体的には、次のような体制づくりを考える必要があります。
1. 意識の土台をつくる「キャリアデザイン研修」
まずは、従業員自身が立ち止まって自らのキャリアを考える機会が必要です。入社数年目や管理職昇格時などの節目に研修を行い、自身の強み、価値観、今後のビジョンを言語化する機会を設けるのがよいでしょう。この内省のプロセスがあって初めて、誰かに相談する動機が生まれます。近年ではとくに、若手や中堅社員へのキャリア意識の啓発が重視されています。
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2. 日々の業務と紐づける「上司の1on1」
研修で得たキャリア意識を日常の業務に落とし込むには、現場の管理職も大きな役割を果たします。上司が1on1ミーティングなどを通じて部下の意向を引き出し、日々の仕事の意味づけをサポートする力を持っていると、部下のキャリア開発にとって大きな力となります。
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3. 職場を離れて相談できる「キャリア相談窓口」
専門家による相談窓口が真価を発揮するのは、1の研修による内省や、2の現場での対話を経たあとです。こうした窓口があれば、直属の上司には言いにくい悩み、たとえばキャリアチェンジの希望や仕事とライフイベントの両立などについても相談することができるでしょう。
キャリアデザインに必要な「仕組み」づくりのために
ここまで見てきたように、セルフ・キャリアドック本来の狙いでもある「従業員の主体的なキャリア形成」を実現するには、体系的な仕組みの構築が求められます。
日本能率協会(JMA)では、こうした「仕組みづくり」を見据えた研修や制度設計のご提案も可能です。「自社らしいキャリア支援の仕組みを模索している」「形骸化している制度を見直したい」とお考えの場合は、ぜひ一度JMAにご相談ください。



