新事業ガイドラインの設定|強みを活かす新事業開発:第1章 探索ガイドラインの設定(6)

公開日:2017/07/19 更新日:2023/09/14

1.どの分野をやるべきか、どの分野はやらないかを決める

これまで述べたような検討を重ねて新事業探索のガイドラインを設定する。新事業ガイドラインは図Ⅶ-1に示す項目を検討する。新事業探索ガイドラインとは、具体的な新事業テーマを決めることではなく、次のステージでどの分野の新事業を探すべきか、どの分野は注力しないのかをはっきりさせるためのプロセスである。
「何か儲かるものはないか」と闇雲に新事業を探している姿をよく見かけるが、探した結果、自社の強みを活かすことが出来ない、自社の体質に合わないという理由で開発を断念するケースが多々ある。そうした失敗を招かないため、自社として新事業を探す分野を慎重に決めていくのである。
これまで、「環境変化のインパクトの把握」「参考企業ベンチマーキング」により外部環境からの機会・脅威の抽出、「事業特性・事業体質検討」「経営資源の確認」から内部環境からの強み・弱みを把握してきた。また「新事業成功・失敗要因抽出」では、自社としての新事業成功のポイントは何か、成否の岐路は何処かを明らかにしてきた。

図Ⅶ-1 新事業ガイドライン
図Ⅶー1
 

2.探索方針

まず、新事業開発の目的を明確にする。新事業開発の目的には「新たな収益を得る」「第2、第3の柱を作る」といった売上・利益の拡大を挙げることが多いが、時として「雇用の確保」「企業イメージアップ」といった目的で新事業が企画されることもある。また、既存事業が調子のいいときには、新事業を進める気運は高くないので目的がはっきりしないこともある。よって、なぜ今回、新事業に取り組む必要があるのかを経営層に再確認し、目的を間違えないようにしなくてはならない。

つぎに目標とする規模感である。もちろん、これから新事業を探すわけなので具体的な売上規模はこの時点で設定できない。しかし、売上規模として、数千万円の事業を探すのと数十億の事業を探すのではアプローチが異なる。そのため、規模感として「5年後に10億円」「10年後に総売上高の10%」といった目安を提示する。そうした規模感を表示することは、あまりちっぽけな事業は探さない、などといった基準にもなる。

3つめは探索にあたっての前提である。前提なしで新事業を始める場合は多いが、企画の段階になって「その分野は過去、大失敗したので会社としては手を出さない」「当社は人の生死に関わる事業はやらない」といった話が出てくることがある。言わば、後だしジャンケンである。こうした話が後から出てこないよう、やるべき分野ではなく、「やってはいけない分野」をはっきりさせておく。また、新事業への投資限度額も決まっていれば明確にしておく。

3.新事業展開方向

新事業展開方向はどの分野に探索を進めるべきかの道しるべである。
事業環境から見た機会は部環境からの機会であり、これまでの調査・分析結果から市場の機会を整理する。当社の強みは内部環境からの強みであり、こちらもこれまでの分析から整理する。

機会と強みから、どの分野を狙うべきかを示したものが成長革新方向である。チャートの縦軸、横軸は、市場、販路、業界、エリア、製品などの切り口であり、現市場周辺の新商品領域を狙うのか、現技術の強みを活かして周辺市場の狙うのか、自社の特性や体質も勘案しながら探索分野を設定する。

4.探索視点

さらに、設定した分野に関して、どのような切り口で探索していくかを明らかにするのが探索視点である。

図表Ⅶ-2 探索視点
図Ⅶー2
探索視点は複数設定して構わない。市場の切り口や強みの切り口で設定すると共に、具体的に事業を探す方法を書き出す。そして、複数探索メンバーがいれば、分担して探索に取り掛かるのである。
こうしたガイドラインを設定することで、当社として狙うべき分野を経営層および新事業担当者が認識できるのである。

関連プログラム

新事業開発・開発推進

著者

池田 裕一(いけだ ひろかず)
日本能率協会コンサルティング(JMAC)技術戦略センター チーフ・コンサルタント
JMA公開セミナー 新事業開発実践力養成コース/BtoBマーケティング基礎セミナー/
マーケティング分野オンラインセミナー講師。

機械販売会社の財務部門を経て、1990年株式会社 日本能率協会コンサルティングに入社。以降、一般企業を対象とした新商品・新規事業企画、新サービス開発、事業立上げなどのコンサルティング、研修、講演にあたる。

 

バックナンバー

序章
第1章 その1
第1章 その2
第1章 その3
第1章 その4
第1章 その5