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今、注目の「アジャイルワーキング」と、そのために必要な人材マネジメントとは?
迅速かつ適用的にソフトウェアを開発するための手法として考え出されたのがアジャイル開発という手法。その手法を組織全体に組み込んだのがアジャイル組織であり、ワークスタイルに取り入れたのがアジャイルワーキングです。コロナ禍で世界が大きく変わった現在、このアジャイルワーキングというスタイルが注目されています。
「アジャイル」とは何か
そもそもアジャイルとはどういう意味でしょうか。アジャイル(Agile)には「素早い、機敏な、頭の回転が早い」という意味があります。もともとはソフトウェアの開発の現場で要求仕様の変更などに素早く柔軟に対応するための開発手法のことで、アジャイル開発と呼ばれています。
アジャイル開発と対をなすのはウォーターフォール開発という手法です。ウォーターフォール開発では、後戻りがないことを前提とし、要件定義からリリースまでのプロジェクトをしっかり計画して、その通りに進行します。しかしながら、環境や市場の著しい変化において、最初から何を作るのかを完全に決めて作るこの手法では、完成までに環境が変わっても対応できず、結果として顧客の望むものにならないプロジェクトが多発するようになりました。
2001年に著名な17名のソフトウェア開発者により「アジャイルソフトウェア開発宣言」が出されたことにより「アジャイル」という概念が世界で注目されるようになりました。しかし日本ではあまり定着せず、いまだにウォーターフォール開発が主な手法を占めています。理由として、日本人は先進各国の中でも、不確実性を回避し、変わらないことを求めてしまう傾向があることが指摘されています。
ただ、コロナ禍を通じて先の見通しがたたない不確実な状況に直面したことにより、日本でも再びアジャイルという概念に注目が集まっています。また、アジャイル手法を取り入れたワークスタイルを導入する企業もでてきています。
「アジャイルワーキング」という語には明確な定義はありませんが、一般的には迅速かつ適応的に作業を行うために働き方の改善を目指すワークスタイルを意味します。オフィスのレイアウトを変更したことでコミュニケーションが改善したり、IT化を進めることでテレワークが可能になったりすることも一種のアジャイルワーキングといえるでしょう。
今、アジャイルが注目されている背景
もともと現代は、未来が予想不可能な時代として「VUCA」といわれていますが、コロナ禍を通じて、さらに世界中の企業で組織の柔軟性が求められるようになりました。市場の変化に素早く対応するための手法としての「アジャイル」を、組織全体に応用する「アジャイル組織」という概念が再度注目されています。
アジャイル組織とはどんな組織か
アジャイル組織といったときには、組織をフラットな集合体と捉え、意思決定の権限を各担当に分散した組織を指します。以下、アジャイル組織の特徴を挙げてみましょう。
1 ネットワーク的である
トップだけに権限が集中すると状況の変化に対応するのに時間がかかる場合があります。権限・責任がチームの構成員に備わった、フラットなネットワーク的な組織が、変化への迅速な対応を可能にします。
2 行動指針が決まっている
行動に一貫性を持たせるためには組織における目的やビジョンが必要です。各人が個別に意思決定をするにあたって大切な指針となります。
3 学習重視のプロセスをもっている
学習、実行、改善のプロセスが非常に早いという特徴があります。無駄な会議時間の短縮ややり直しのコスト削減などのメリットがあります。
4 メンバーを信頼する
従来のようにメンバーをコントロールする組織ではなく、メンバーが自律的に考え、行動できるようにするためのマネジメントを行います。
5 統合テクノロジーが有効
各自が判断を下す状況を支えるためには、リアルタイムのコミュニケーションツールやタスク管理ツールが有効で、組織そのものがこうした技術に支えられているともいえます。
アジャイル組織の人材マネジメント方法
アジャイル組織の人材マネジメント方法として特徴的なのが、前項の4「メンバーを信頼する」という点です。
ビジネス環境の変化に対応できるように組織の柔軟性を高めるためには、人々を中心に置き、組織内の全社員に権限を与える「自律分散型」の組織になることが求められます。その中で大切なのが「メンバーを信頼すること」ですが、これは放任ではなく、メンバーが自ら考え行動するように促すことです。重要なのはその行動や結果に対してフィードバックを行うこと。そうすることでメンバーが自律的に動くようになり、自律分散型の組織に繋がっていきます。そのためにも、企業文化を社員に浸透させ、組織が同じ文化を共有するコミュニティへ育てていくことが必要です。
アジャイル人材とは?どのように育成するか?
アジャイル組織の中で変化に柔軟に対応している人材を一般にアジャイル人材といいます。こうした人材育成のポイントを紹介します。
- コミュニケーション能力と柔軟性を養う
アジャイル組織では、メンバーや顧客とのリアルタイムなコミュニケーションが必要です。さらに対話力、交渉力のスキルを高めるために、社内でのコミュニケーションを活性化することや、コミュニケーション能力を高める研修、教育が有効とされています。 - 課題解決型学習を取り入れる
一人ひとりが正しい判断を下さなければならないアジャイル組織では、常に学び続ける姿勢が求められます。まずは挑戦しやすい組織文化を醸成した上で、自分で考えて解決していく課題解決型の学習法が有効と言われています。そのためには、自発的に学習し挑戦していくための環境作りと、行動と結果に対して気づきを与える上司からのフィードバックが必要です。
コロナ禍で注目されているアジャイルワーキングは、アジャイルという手法を取り入れた組織があってこそ機能するものです。変化する市場への対応策として「アジャイル」という手法の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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