今どき研修テーマ&メソッド図鑑
ケーススタディで学ぶメリットと学び方
従業員に対する研修では、実際に起こった出来事をもとに学ぶケーススタディが数多く実施されています。そもそもケーススタディとはどういう学び方のことなのか、また、ケーススタディで学ぶメリットは何かを紹介します。
ケーススタディとは何か?
ケーススタディの語源は英語の「case study」で、日本語に訳すと「事例研究」です。ケーススタディの内容や目的は各事業分野で異なりますが、過去に起こった具体的な事例を分析・検討し、問題解決のために必要な一般的な原理や法則を導き出す研究法を指しています。
ビジネスにおけるケーススタディでは、新人研修向け、リーダー向け、管理職向けなど、それぞれが直面する具体的な事例をもとに、疑似体験をしながら学んでいきます。実際に起きたケースを元に、問題解決力や分析力、論理的思考や戦略構築力などの実践力を身につけることが目的です。
ケースメソッドとの違い
ケーススタディに関連する類語に「ケースメソッド」があります。ケースメソッドとは、さまざまな事態に適した最善策を研修参加者同士で議論しながら、実践力を身につけていくといった教育手法を指しています。
ケーススタディとケースメソッドともに、ケース(事例)について思考・議論する点では共通していますが、ケーススタディは実際にあった事例を追体験することで、答えの出ていることについてそのプロセスなどを学ぶ方法です。一方、ケースメソッドは、与えられた設定をもとに自主的に考え、解決手段を見出していくスタイルです。
ケーススタディで得られるメリット
ケーススタディを活用した学びは、さまざまな階層、テーマで導入されています。ここではビジネスにおけるケーススタディで得られるメリットを紹介します。
ビジネスを疑似体験できる
一人でリアルに経験できることには限界があります。過去の成功例・失敗例などを疑似体験することで、現場において同じようなケースに遭遇した際、事例をもとに冷静に対処できます。
業務を効率化しやすい
ケースについて学んでおくことで分析力や判断力が高まり、意思決定がスピーディーになります。余計な試行錯誤の時間を短縮できるため業務の効率化につながるでしょう。
リスク回避につながる
過去の失敗事例を疑似体験することで判断ミスや失敗の原因を分析し、教訓として学べます。そして、同様のケースが起こりそうな時には、リスク回避する行動をとることができます。
アイデアの創出に役立つ
新しい「アイデア」は、既存の技術や知識、考え方が融合することで生み出されると言われています。ケーススタディによって過去のさまざまな事例を研究することで「さらに良いアイデアはないのか?」と追求でき、解決法や新しいアイデアの創出に役立つともいえるでしょう。
基本的なケーススタディの学び方
ケーススタディで学んだことを現場で活かせるように、ケーススタディの学び方を紹介します。
取り上げる事例を決める
参考になりそうな事例探しからスタートします。過去に自社内で起こった事例のほか、新聞やインターネット、書籍などから他社の事例を集めていきます。取り上げる事例が決まったら、第三者が理解できるように事例説明を作るとよいでしょう。
事例を把握する
取り上げる事例が決まったら、事例を把握していきます。事例の事実関係や背景を読み込み、不足している情報があれば管理者や主催者へ質問を認める場合もあります。
問題を明確化していく
事例が把握できたら、事例の問題を明確化していきます。事例に対して複数の問題がある場合は、解決すべき問題の優先順位をつけていきます。そして、ケーススタディの中で解決すべき核となる問題を決めていきます。
解決方法を検討する
解決すべき問題が決まったら、解決方法を検討します。思いつく限り解決方法をリストアップしたら、より有効な手段に絞り込んでいきます。
結論や解答から学んでいく
グループでケーススタディを行う場合には、自分の「結論」をグループ内で共有します。グループ内で他社の考えや意見に触れながら、結論を練り上げていきます。
ケーススタディが有効な場面とは
実際の研修などでケーススタディを使って学ぶ場合には、たとえば以下のような場合があります。
プロジェクト推進
プロジェクトの進め方について学ぶ際、実際のケースを活用しながら学びます。「プロジェクトを開始する際にすべきこと」「プロジェクトを進めるうえで障害となりそうなこと」など、ケーススタディを元に整理しながら、解決法を検討していきます。
例)価値創出のためのDXプロジェクト推進セミナー
https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/dx/transformation03/
階層別研修
新人、リーダー、管理者など、それぞれの階層に向けたケーススタディも有効です。階層に合った疑似体験を行うことで自分の立場を客観的に見ることができ、自身の役割を再認識することができます。
コーポレートガバナンス
他社の不正事案などのケーススタディを元に、「どう意思決定していくべきだったか」といったことを学びます。
ハラスメント
実際にあったハラスメントのケースをもとに、「なぜハラスメントと判断されたのか」、「どうすればハラスメントにならずに済んだのか」等、正しい理解や予防策を身につけることができます。また、取り上げるケースは、ハラスメントかどうかの判断が簡単にできるものではなく、人によって解釈が分かれるものを扱います。
入社・昇格試験
入社試験や管理職昇格試験としてケーススタディを実施することも可能です。論理的思考力やコミュニケーション能力、限られた時間の中での問題解決力などを見極める際に使われます。自分で結論までの道筋を論理立てて人に伝えられるといった一連の流れが、評価につながります。
ビジネスでは、予測不可能なできごとに直面するシーンが多々あります。自分一人の経験から学べることには限界がありますが、ケーススタディを活用することで、より幅広い知見やノウハウ、対応力を効率よく身につけていくことができるのです。