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アライシップとは何か?職場で意識する意義とは?
DE &Iへの取り組みが進む中、「アライシップ」という言葉を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。そんなアライシップの概念について、「なぜビジネスに取り入れるとよいのか」という視点からお伝えします。
アライシップとは?
アライシップの「アライ」とは、英語の「ally」が語源で「味方、同盟、支援」を意味し、正しくはストレートアライと言います。LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)などに代表される、性的マイノリティの人たちや阻害されている人たちに対して、それらの当事者ではないけれど理解し支援すること・人たちを指しています。始まりは1988年にアメリカの高校でストレート(異性愛者)によって作られた「ゲイ・ストレート・アライアンス」というサークル活動と言われています。同性愛への嫌悪や偏見の解消を促すこの活動が広がり、活動を支持する人々をアライと呼ぶようになりました。
LGBTQに対して協力的な姿勢を示す個人や組織を示す「LGBTQフレンドリー」と似た意味を持ちますが、「アライ」はそれよりも一歩進んで、より積極的に支援や権利擁護、平等達成の運動を行う人たちを指すケースが多いです。
職場でのアライシップとは、自分自身はLGBTQに属していなくても、社会的に疎外されている人たちの擁護者になること、擁護者として行動することを意味します。
LGBTQに関する日本の状況
日本のLGBTQ に対する取り組みは、諸外国に比べると遅れを取っていると言われています。OECD(経済協力開発機構)の2020年の調査では、日本のLGBTに関する法整備は加盟国中、トルコについて二番目に低いという結果になりました。
そのような中、日本国内においてLGBTQ に対する関心が高まったきっかけは、2014年にオリンピック憲章に「いかなる種類の差別も禁止する」と明記されたことだといえるでしょう。さらに、東京オリンピック開催が「差別禁止に関する国際基準に日本法を適合させるまたとない機会」とも指摘され、オリンピック憲章をもとに日本国内でもLGBTQ に対する議論が進んだともいえます。
こうした東京オリンピック・パラリンピックが終わった現在も「多様性と調和」のスローガンを一過性のものにせず、根づかせていく必要があると考えられていますが、実際にはなかなか浸透していないのが現状です。
また、2021年には性的マイノリティへの理解を進めることを目指した「LGBT理解増進法案」の国会提出が見送られています。DE &Iといった概念の広がりや女性活躍を掲げた政策を導入する一方で、他の先進国と同等の「LGBT差別禁止法案」は見送られ、日本のLGBTへの対応は遅れたままとなっています。
企業が取り組むべき理由
日本国内の政策が遅れているからといって、企業の取り組みが遅れてよいわけではありません。従来から企業では「LGBTQ」などへのセクハラについて適切に対処する必要がありましたが、実際には適切に対処されていない事例もありました。そこで2017年1月、厚生労働省の「セクハラ指針」には「LGBTQへの差別はセクハラにあたる」と明記されたのです。
「自分の職場にはLGBTQの人はいないだろう」と思う人もいるかもしれませんが、それは危険な考え方かもしれません。というのは、昨今、DE &Iを推進している企業が増えているものの、依然として日本社会に偏見や差別があるため、LGBTQであることを隠している人も多いと言われているからです。そんな中で、LGBTQへの理解不足により何気なくした発言がセクハラにあたる場合もあり、企業にとってもリスクとなってしまいます。このようなことをなくしていくため、私たちに必要なのは「常にLGBTQが身近にいる」という前提で過ごすことです。
DE &Iを実用的に日常的な方法で行動に移すためには、アライシップが効果的だといわれています。
実際に、職場で偏見にさらされている社員は疎外感をおぼえる傾向が高く、仕事に対する士気が低下するといいます。
職場のリーダーが「話をし、話を聞いて当事者に関わり続ける」というようなアライシップを発揮することがDE &Iの実現になるといえるでしょう。
また、ある調査では、リーダーが自発的にアライシップを発揮する職場では、社員のパフォーマンスが改善し、離職する社員が半減することが分かっています。このようなデータからも、企業が積極的にアライシップに取り組むメリットがあるといえるでしょう。
https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/ally-leader/
DE &Iがなかなか実践に落としこみができていない企業も多いといいます。企業が真のDE &Iを実現するにはアライシップの考え方を理解することが有効です。社内のメンバーが広くDE &Iの重要性を理解するためにも、とくにリーダーの立場にある人がLGBTQについて正しい知識を身につけ、アライシップを発揮できるように実践的な理解を深めるとよいでしょう。
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