5分でわかるビジネストレンドワード
よりよいサクセッション・プランに向け、候補層を厚くする集合研修のすすめ
着手しなければならないとわかっていても、未だ十分に進んでいるとはいえない企業のサクセッション・プラン(後継者育成)。プランの実行が進んでいる企業と進んでいない企業の違いを紹介しつつ、課題を解決するための集合研修の活用法を考えます。
サクセッション・プランの基本的な流れ
多くの企業で取り組むべき課題となっているサクセッション・プラン(後継者育成)。その遂行のために必要なことは何か、どういう手順で進めるかについては、下記のコラムでご紹介しています。
サクセッション・プランの策定に必要なこと
実際の育成を進めていくに当たっては、
- 要件に合う人を候補ととして選出し
- 特定のスキルを磨くための業務にアサインしつつ
- トレーニングを行っていく
というのが大まかな流れになります。
サクセッション・プランが進んでいる企業はどこが違う?
しかし、こうした取り組みはまだ十分に進んでいるとはいえないということも、上記コラムですでにお伝えしたとおりです。
では、サクセッション・プランがうまく進行するには何が必要なのでしょうか。少し前のレポートですが、経済産業省による「『経営人材育成』関する調査結果報告書(2017年 https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20170331001-s2.pdf)」では、サクセッション・プランで成果が出ていると回答した企業(高成果群)とそうでない企業(低成果群)を比較し、高成果群に見られる特徴として以下のようなことを挙げています。
①しっかりとした育成目的に基づく人材像の明確化
自社の経営者としてあるべき人材像、育成の目的、選抜方法などが明確化されている。
②人材情報の的確な収集・見える化と、基準に則った合理的な選抜の実現
職務経験等の情報把握体制が構築されていて、リストアップ方法や選抜基準が明確であり、基準に則った選抜が実施されている。
③定型的な教育カリキュラムに基づく個人ごとの育成プランと経営層からの直教育
育成プランが体系化され、個人ごとの育成プランがある。育成責任者や事務局からの的確なフィードバックがある。経営層から薫陶を受ける機会がある。
④現場の育成責任者を巻き込んだアサインメントの効果的な実施
育成階層ごとに重要ポストを設定され、タフアサインメントとなるような工夫があり、配置に向けた調整が十分である。
⑤適正なアセスメント基準に基づくアセスメント結果を活用できる環境
適性を測るアセスメント方法や基準が明確で、情報が一元化、可視化されている。
人材を見える化することで候補者層を厚くする研修
ところで、サクセッション・プランにおける育成というと、上記の③にあるように、経営層の主導により個別に行うものというイメージが強いかもしれません。実際にその通りではあるのですが、実はそうした個別トレーニングに至る前に行う集合トレーニングにも大きな意味があります。
集合トレーニングで期待される成果は、実は主に②に関わる部分の成果です。なぜなら、「経営幹部候補育成」というテーマである程度人数を集めて研修を行うことで、次のようなことが期待できるからです。
- 候補者層を厚くすることができる
より広く研修参加者を選抜することで、後継者として選抜される前の「候補者層」を早期から形成することができます。
- 人材のスキルを把握することができる
研修の成果物として「経営課題解決案」や「新規事業案」を設定することで、参加者の力量を把握することができます。
- 研修そのものを選抜の場とすることができる
たとえば初級マネージャークラスを集めて研修を行い、プレゼンテーションの場に経営幹部が同席すれば、普段、経営陣からはなかなか顔の見えない層について経営幹部が知り、その中からアサインも含めた個別育成をすべき人物を絞っていくことが可能になります。
サクセッション・プランに向けた候補者層育成研修を企画するポイント
サクセッション・プランの一貫としての、候補層育成の集合研修を企画する際には、下記のような点がポイントになります。
①研修の目的とゴールを設定する
一連の後継者育成のプロセスの中で、この研修がどんな目的を持つのかを設定します。育成の初期段階であれば「経営基礎知識の習得」が目的でよいですし、次のステップで子会社社長を経験してもらうのであれば、「トップとしての発信力」や「意思決定力」の獲得が目的になるかもしれません。自社の経営戦略に沿うゴールを設けたり、参加者自身が自分の課題を明確にすることもゴールになり得ます。
②研修への参加者を選抜する
どの階層から参加者を選抜するかは企業や後継者育成の時間軸によって異なりますが、ある程度マネジメント経験を積んだ課長クラスからのスタートが一般的です。「部門長推薦」「経営者による指名」「人事評価・公募・試験などの客観的選抜」などの方法で選ばれることが多いようです。
③成果物を決める
「経営課題解決案」「新規事業案」のほか「ビジョンステートメント」を作ることも考えられます。
その他、研修の構成や学習テーマの設定などについては、一般的な研修と同様、目的に応じて検討していくことになります。
当然ながら、こうした研修は、あくまでサクセッション・プラン全体の中の1プロセスであり、研修を経た上で、個別のトレーニングや能力をストレッチするアサインメントなど、Off-JTとOJTの両面で育成を進めることになります。ですが、そうして育成を進めていく前段階として、このような研修が大きな役割を持つということも、意識してみていただければと思います。
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