失敗しない研修計画

採用・育成・定着に効く従業員のペルソナ設定(研修計画)

公開日:2023/03/20 更新日:2023/09/13

マーケティングの概念である「ペルソナ」という用語を、HR業界や人事界隈においても耳にする機会が増えています。しかしながら「ペルソナ」はそもそも人事用語ではないことから、この概念になじみのない方も多いかもしれません。ここでは、従業員の研修計画にも活用できるペルソナ設定の仕方を紹介します。

ペルソナとは何か

ペルソナとは、もとはマーケティングの際に使用される概念で、「サービス・商品のターゲットとなる架空のユーザー像」のことです。その人物が実在しているかのように、名前、性別、年齢、居住地といった基本情報や趣味、価値観、ライフスタイルなど詳細な情報を設定します。実際にはそのような人物は存在しなくてもよいので、より具体的に設定するのがよいとされています。

ペルソナと混同されやすい概念に「ターゲット」があります。ターゲットは集団や実在する全体をセグメントしたもので、年代や性別といった属性で区切った集団を示します。一方、ペルソナは集団に属する個人をより具体的にイメージできるようにしたものです。ターゲットは、人物像にやや幅を持たせてセグメント層を設定するのに対し、ペルソナは人物像を詳細にわたってリアルに設定するという点に違いがあります。

従業員のペルソナを設定する意義とは

ペルソナは従業員にも設定することができます。このような「従業員ペルソナ」を設定することで、採用の場面では、必要な人材が明確になったり、育成の場面では従業員が必要としている研修が明確になったりします。

採用では

自社の求める人物像のペルソナを活設定することで、求める人物像がより明確になります。

 ペルソナを設定することで、採用したい人物が「どのような場所にいるのか」「どのような行動をとるのか」というような分析も可能になり、その人が共感できるメッセージも伝えやすくなります。 

育成では

従業員のペルソナを設定することは、従業員が本当に必要としている育成とは何かを知るヒントになります。

 「職場が従業員にとって価値のある場所であること」や「企業が従業員の必要としている研修を実施すること」は、「エンプロイーエクスペリエンス(従業員が職場や仕事を通じて得られる経験価値)」の向上につながり、エンゲージメントを高め、定着率を高めることが知られています。ペルソナから導き出した研修を実施することで、こうした効果が期待できるのです。 

育成のための従業員ペルソナの設定の方法

ここでは育成に向けた従業員ペルソナはどのように設定すればよいのかを考えてみます。

 従業員ペルソナを設定するためには、自社の従業員の心理面、行動面の両方を見える化する必要があります。自社の代表的な社員像と言い換えることも可能です。 

育成におけるペルソナは、従業員がどのような教育体制を必要としているか、どういった成長を望んでいるかというニーズを知るためのモデル化と言えます。ペルソナ設定によって「どのような気持ちでどのような行動している従業員に対して、どのような研修を行うべきか」と具体的に考慮することが可能になります。

具体的には次のような方法が考えられます。

1.自社の課題は何かを明確にする

課題が不明確なままペルソナを設定すると、結局は曖昧な人物像が出来上がってしまいかねません。まずはどういう課題を解決したいかを明確にしましょう。たとえば「中堅社員のリーダーシップが伸び悩んでいる」といった具合です。

2.関係者にヒアリングをし、情報を集める

課題に該当する社員を中心に情報を収集します。より具体的な人物像を描き出す必要があるので、従業員サーベイなどの結果だけでなく、個別のアンケート調査、社員本人へのヒアリング、上司へのヒアリングなどさまざまな形で情報を集める必要があります。

 3.ペルソナを整理する

年齢、保有スキル、性別、マインド、業務の状況など、ターゲット像の属性情報を整理し、一つのペルソナを設定します。性格や趣味、休日の過ごし方なども組み込み「一人のキャラクター」を作り上げるように設定するとよいでしょう。

 4.出来上がったペルソナを検証する

ペルソナが完成したら、関係者に共有し、実際の人物像との違和感がないかどうかをチェックしてもらいます。

なお、社員のおかれた状況は変化していくため、ペルソナは一度作成したら終わりではなく、定期的な見直しも必要です。 

まとめ

従業員ペルソナで社員像が具体的になることで、事前に設定した課題の解決のためにはどんなスキルが必要か、どんな学び方が有効か等を具体的に検討し、よりニーズに合った研修計画を立てることができます。個人がより成長できる環境を求める傾向が高まり、従業員が求める教育体制を提供することが今まで以上に求められる中で、エンプロイ―エクスペリエンスの向上のためにはこうした手法も検討してみる余地がありそうです。

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