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「内発的動機」を引き出し、活かす

公開日:2023/06/20 更新日:2023/09/14

働き方や価値観が多様化する中、評価や報酬、強制などの外発的な動機づけだけでは、従業員のモチベーションを維持・高められなくなってきています。そこで、新たな動機づけのために注目されている「内発的動機」の引き出し方、活かし方を紹介します。

「内発的動機」「外発的動機」とは

「内発的動機」は、反対の概念である「外発的動機」と比較するとわかりやすいかもしれません。

外発的動機

外発的動機は、「外部からの働きかけによる動機づけ」を指します。報酬や評価、賞罰や強制などで、具体的には昇給や金銭的なインセンティブ、感謝の言葉、「行動をしなかった際の罰」などがこれにあたります。

内発的動機

内発的動機とは、「自分自身の内面的な要因によって生まれる動機づけ」のことです。興味や探究心などの対象は人それぞれによって異なるため、内発的動機も人によって異なります。具体的には次のようなものが挙げられます。

  • 刺激が欲しい
  • 適度に新しいことを知りたい
  • 能力を高めたい
  • 入ってくる情報を整理したい
  • 何かを達成したい
  • 自分の判断で働きたい
  • 尊敬や名声が欲しい
  • 人と交流したい
  • 安定性が欲しい
  • 公平性が欲しい

「内発的動機」「外発的動機」のメリット・デメリット

外発的動機づけと内発的動機づけには、それぞれメリット・デメリットがあります。

外発的動機づけ

<メリット>

動機づけがしやすい

「インセンティブを与える」「罰を与える」など動機づけのために実行すべきことがシンプルです。

短期的に成果が出やすい

従業員側にとってのメリットがわかりやすいため、本人が早く行動に移し、短期間で効果が期待できます。

<デメリット>

コストがかかる

インセンティブを用意するなどの場合には相応のコストが発生します。

効果の持続性が低い

慣れてしまうと効果が続かないことがあります。

期待以上の効果が出にくい

報酬を得る、または罰を受けないことが目的となってしまい、従業員がそれ以上の働きをしなくなってしまいがちです。

内発的動機づけ

<メリット>

集中力が発揮されやすい

行動をすること自体が目的となるため、高い集中力が発揮されやすくなります。

期待以上の仕事をしてくれることがある

自らの内面的な動機で動くため、質の高い行動が長く続き、期待以上の成果を出せることがあります。 

創造性が発揮されやすい

自主的に行動するため、工夫が生まれ、創造性が発揮されやすいといえます。 

従業員満足度が上がりやすい

自らの興味に従って行動することは従業員の満足につながり、自社で長く働く人材となってくれることが期待できます。

<デメリット>

外部からできることは限られる

あくまで本人の内面から起きる動機であるため、外部からの働きかけで出せる効果には限界があります。

短期的な成果は出にくい

「仕事に対する強い関心・好奇心」がベースとなるため、実施方法が明確ではなく、成果が出るには時間がかかることがあります。

一律の方法では引き出せない

興味や好奇心の持ち方は人それぞれ異なるため、共通の方法で動機づけはできません。また、動機の強さもそれぞれ違うため効果にも個人差が生じやすくなります。

内発的動機を引き出すには

内発的動機は個人の価値観や興味によって左右されるため、外部的動機づけに比べて引き出すこと難易度が高いとされています。ここではその効果的な引き出し方を紹介します。

自己分析の機会を作る

内発的動機のベースは「興味や好奇心」です。しかしながら、自らがどのようなことに興味、関心があるのかを気づいていない従業員もいます。そこで、自らが何によって動機づけられるのかを認識するために自己分析の機会を作るのが有効です。1on1ミーティングやキャリア面談、研修を通じて気づきを与えます。

意思決定の機会を作る

意思決定はストレスがかかりますが、内発的動機を引き出しやすいとされています。一定の裁量を与えて意思決定を促したり、フィードバックの際に答えを伝えるのではなく、自分で考えさせる機会を与えたりする方法があります。

外発的動機づけから始める

比較的難易度の低い外発的動機づけから始め、内発的動機を引き出す方法もあります。

たとえば、「赤字部署立て直しが成功したら、インセンティブを支給する」という場合、インセンティブという外発的動機によってモチベーションが高まっています。その後、仕事を通じて意思決定の機会が増えたり、周囲からの刺激を受けたり認められたりすると、行動の目的が「成果を出したい」「立て直しを成功させたい」という内発的なものに変わっていきます。このように外発的動機づけから内発的動機づけに変化させることもできるのです。

ツールを活用する

従業員の内発的動機を数値化し、価値観を可視化するツールを仕様する方法もあります。上司は部下の価値観を可視化することで、具体的なアクションが取れるようになります。

→(過去のウェビナー)内発的動機を活用した人材マネジメント「Attuned(アチューンド)」

内発的動機付けがうまくいかないケース

内発的動機づけがうまくいかないケースも知っておきましょう。

高い評価に慣れてしまっている

行動して高い評価を得ることに慣れてしまうと、動機づけの理由にならなくなることがあります。

自分自身のタイプ(欲求)と動機づけ手法が一致していない

自分の動機になる欲求ととるべき行動が一致していない場合、動機と行動がつながりません。

本来内発的動機だったものが外発的動機にすり替わってしまう

もともと好きだからやっていたはずのことが、評価や報酬のためにやることに変わってしまう場合があります。こうなると外発的動機と同じになってしまいます。

内発的動機をマネジメントに活用するには

内発的動機づけは、マネジメント面でも大きなメリットがあります。具体的にはつぎのような場面での活用が考えられるでしょう。

承認やフィードバック

上司から部下に対してフィードバックを行う際、それぞれの特性や価値観に合った承認やフィードバックを行うことで、より主体的に受け止められるでしょう。

目標設定

「頑張れば達成できそう」と思える範囲での高めの目標設定は、内発的動機を引き出し、部下が意欲高く目標達成を目指すことにつながります。

 ルール設定

もとは内発的動機づけで始まったことも、ルールを強制されると外発的動機にすり替わってしまいます。内発的動機を持続させるためには、ルールは最低限に留めるのがベターです。

 

内発的動機は、引き出す難易度は高いですが、従業員個人だけでなく、組織や企業にとって大きなメリットをもたらします。一人ひとりの内発的動機を引き出す手法について、改めて学んでみるのもよいのではないでしょうか。