5分でわかるビジネストレンドワード
人材育成に「ラーニングゾーン」を活用する
従業員の成長を促すにはさまざまな方法がありますが、今回は成長意欲の高まる「ラーニングゾーン」という概念に注目してみましょう。うまく活用することで、より効果的な育成、成長につなげることが期待できます。
ラーニングゾーンとは?
ラーニングゾーンとは、ミシガン大学ビジネススクール教授のノエル・M・ティシー氏が提唱した概念で、人の置かれた環境を表した「コンフォートゾーン」「ラーニングゾーン」「パニックゾーン」という3つのゾーンのうちの1つです。人の成長はこの3つのゾーンによって変化するとティシー氏は説いています。
それぞれの「ゾーン」は次のように定義されています。
コンフォートゾーン
コンフォートゾーンは「自分によって安心安全だと感じる環境」です。いつものお店、いつもの仕事など、慣れ親しんだ空間や状態にいることを指します。安心安全ではありますが「変化」がないため、学びや成長が少ない状態とされています。
ラーニングゾーン
コンフォートゾーンを抜け出した外側にあり、新しい業務やチャレンジに挑まなければならない環境のことです。現在持っているスキルや能力があまり通用しないため、ストレスや居心地の悪さを感じることがあります。一方で成長意欲が高まり、学びや経験を得られる状態でもあります。3つの中で最も成長意欲を高められる領域といえます。
パニックゾーン
ラーニングゾーンを抜け出した外側にある領域です。自分のスキルや知識ではまったく太刀打ちできないくらい、能力の限界を超えている状態となり、過度なストレスや不安など精神的な負荷が大きく、パニックに陥ってしまいます。この状態になってしまうと成長や学びは期待できません。
コンフォートゾーンからラーニングゾーンに入るために役立つこと
人は人生の9割をコンフォートゾーンで生きているといいます。新しい挑戦をするには、この安心安全なコンフォートゾーンを抜け出す勇気が必要です。ここでは、コンフォートゾーンからラーニングゾーンに入るために役立つことを解説します。
スモールステップを重ねていく
初めから大きな変化を目標にしてしまうと、変化に対する恐れから逆に動けなくなってしまいます。まずはスモールステップで小さな目標から立てていきましょう。小さな目標を1つひとつ達成していくと成功体験になり、従業員の自己成長が実現します。
学んでいる仲間のそばにいる
コンフォートゾーンから抜け出すには、最初の一歩に勇気がいります。向け出すポイントは、学んでいる仲間のそばにいることです。まわりにいる人が変化を求めない人ばかりだと、楽な環境に馴染んでしまいます。一方、学びや成長意欲高く新しい挑戦をしようとする人がまわりにいると、よい影響を受けることができます。
新しい業務や役割を引き受ける
進んで新しい業務や役割を引き受けることで、強制的にラーニングゾーンに身を置くことができます。居心地の悪さがあっても、それを解消するために新しいスキルを身につけようとすることが成長につながります。
理想の自分と今の自分を比較する
理想の自分になるためには、「自分が今どのような環境に身を置いているか」という現在地の確認が必要です。今の自分を把握することで、これからやるべきことが明確になりラーニングゾーンに入りやすくなります。
サポートを受ける
人は一人だとどうしても楽な環境を選ぶ傾向があります。そこで有効なのが第三者のサポートを受けることです。人に「やります」と宣言することで、達成意欲も高まるでしょう。また第三者からのアドバイスは新たな視点の発見にもつながります。
従業員がラーニングゾーンに入るための環境作り
個人がラーニングソーンに入るためは、本人の強い成長意欲や外部からの働きかけなどが必要です。そんなとき、企業から「ラーニングゾーン」に入るためのサポートができれば、人材育成の一環として有効といえそうです。具体的にできるサポート方法を紹介します。
刺激を受けやすい環境作り
刺激を受けやすい環境に身を置くことは、コンフォートゾーンから引き上げラーニングゾーンに入るきっかけとなります。たとえば、上司が部下に新しい業務や挑戦できる仕事を与えることは、新たな技術や考え方の習得につながるでしょう。
キャリア開発
ラーニングゾーンに入るには、従業員の強い成長意欲が必要です。そのためには、従業員が「主体的に働く姿勢」を持てるよう、キャリア開発の機会を提供するのもよいでしょう。今後のキャリアに対して「どのようなスキルが必要か」「自分の価値をどう活かせるのか」と考えることは、自分に足りない技術や考え方を身につける行動につながります。
コーチング・面談
企業がコーチングや面談の機会を提供することで、従業員は今の自分と理想の自分とのギャップを知る機会を持つことができます。
チームビルディング研修
チームビルディングのための研修は、自身と他者を比較するきっかけとなり、身につけるべきスキルや挑戦すべき役割を把握する機会となります。
企業が成長し続けるには、従業員の継続的な成長が必要です。従業員がラーニングゾーンに入るためのバックアップとして研修を活用することも、ぜひ検討してみてください。