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公開日 : 更新日 : 「アジャイル思考」で変化に強い組織を作る
迅速な対応力と継続的な改善を重視する「アジャイル思考」は、組織開発や人材育成にも応用できる思考法として注目されています。本記事では、アジャイル思考とはどのような思考法なのか、またその実践ポイントを紹介します。
アジャイル思考とは？
アジャイル思考とは、「機敏な」「素早い」「頭の回転が早い」という意味の「アジャイル（Agile）」から来た言葉です。変化に柔軟に対応しながら成果を上げる思考法で、「完璧を目指さず、まず動く」「ユーザーや市場の変化に合わせて精度を高める」「短期間でPDCAサイクルを回す」などの特徴があります。クライアントのフィードバックを元に製品を完成させていくことから、クライアント重視の考え方とも言われます。
もととなったのは、システム開発の手法である「アジャイル開発」です。アジャイル開発とは、システムを機能単位に分解し、その中でトライアル＆エラーを繰り返して完成度を高めていく開発手法。従来型の「ウォーターフォール開発」では、システム計画の全体について要件定義→開発→テストと段階的に進めていくため、段階が進んだ後で修正が難しく、時間もかかってしまいますが、アジャイル開発ではより素早いリリースと修正が可能になります。こうした柔軟性が注目され、他のビジネスシーンにも考え方として取り入れられるようになりました。
アジャイル思考は、クライアント重視という特性から「デザイン思考」と比較されることもあります。両者の違いは、デザイン思考が問題を解決するために「何を作るか」に焦点を当てているのに対し、アジャイル思考は「どう進めるか」に着目している点にあります。つまり2つの思考は異なるものではなく、アジャイル思考の前提にデザイン思考があるともいえるでしょう。
なぜ今、アジャイル思考が注目されているか？
従来のビジネスの進め方は、将来を予測し、立てた計画通りに進める「ウォーターフォール型思考」が主流でした。そんな中で「アジャイル思考」が注目されるようになったのは、昨今の予測不可能なビジネス環境では、より迅速かつ柔軟な思考が求められるためだと言えます。また、以下のような価値観の変化からも、アジャイル思考が広がりつつあると言えるでしょう。
顧客との「共創」志向
顧客の価値観の多様化や、SNSなどによる顧客とのコミュニケーションの活性化により、さまざまなビジネスにおいて顧客との共創が重視されるようになっています。顧客の声を素早く反映できるアジャイル思考は、こうした共創と相性のよい思考法です。
市場のニーズや変化への意識の高まり
顧客のニーズが変化しやすく、細分化した市場では、完成度よりスピード感が求められます。「変化に強い」組織作りが急務となるなか、アジャイル思考が注目されているといえます。
個人の成長を重視する考え方
ビジネスの変化に対応するためには、従来の組織やプロセス重視のやり方でなく、従業員個人の対応力を鍛えることが重要です。アジャイル思考はこうした個人の力を引き出し、成長させる手法でもあります。
アジャイル思考のメリット
組織としてアジャイル思考を取り入れる主なメリットとして、次のようなことが挙げられます。
変化に強い組織になれる
小さい単位でPDCAを繰り返すため、意思決定に時間がかからず、結果として変化に強い組織を作ることができます。
顧客満足度の向上が図れる
ユーザーやクライアントのフィードバックを反映しながら考えるため、常に顧客ニーズに合致したサービスや製品を提供でき、顧客満足度の向上が期待できます
ゴールが不明確なプロジェクトにも有効
完成の全体像が固まっていない、または変更が多発するようなプロジェクトであっても、部分的に進めていくことができます。
メンバーのモチベーションが維持できる
アジャイル思考でものごとを進めると、メンバー間での活発なコミュニケーションが発生し、短期間で達成感を持ちやすくなります。こうした特徴がメンバーのモチベーション向上と継続的なやる気につながります。
組織とメンバーの成長が促進される
メンバーそれぞれに役割が与えられることで、さまざまなタスクや作業への挑戦ができ、個々のスキル習得への意欲や当事者意識が高まります。
アジャイル思考のデメリット
一方でアジャイル思考は、計画通りに進める考え方と比較して難易度が高いのも事実です。アジャイル思考導入によって起こりうるデメリットには次のようなことが考えられます。
スケジュール管理の難易度が上がる
アジャイル思考による進め方は詳細なゴールを定めず、顧客のフィードバックに合わせて改善を繰り返すため、全体のスケジュール感が見えづらく管理が難しい場合もあります。
慣れていない人にとっては難しい
アジャイル思考は変化に対して柔軟に対応する考え方です。計画的な考え方に慣れてきたメンバーにとっては取り入れづらく、アジャイル思考に反発する人が出る可能性があります。理解を深める取り組みや支援が必要になるかもしれません。
綿密なプランが必要なプロジェクトには不向き
納期が厳しいものや完成度の高さが求められるプロジェクトには、その都度柔軟な発想をするアジャイル思考は向きません。
アジャイル思考によるプロジェクト運営に必要なこと
組織にアジャイル思考の導入を検討するにあたっては、次のような点についての理解と準備が必要です。
権限委譲と伴走型リーダーシップ
管理職やリーダーが「あれこれ指示する」スタイルではなくメンバーが自律できる環境を整えるために、メンバーに適切な権限委譲をすることが求められます。ただし、メンバーに丸投げしてしまうと適切な意思決定ができないケースもあるため、リーダーは伴走してサポートしつつ意思決定を任せることがポイントです。
失敗を許容する文化
チームが失敗を許容する環境があることで、個々のメンバーが失敗を恐れず挑戦する文化が育ちます。失敗から学び成長する仕組みを構築することが、組織の成長にもつながるでしょう。
チーム内での円滑なコミュニケーション
アジャイル思考の実践には、チーム内での率直な意見交換や情報共有、短いサイクルでのフィードバックが重要です。円滑なコミュニケーションによって次のアクションが迅速に決まることで、アジャイル思考の真価が発揮できます。
OODA重視の意思決定プロセス
OODAとは、観察→状況判断→意思決定→行動を素早く繰り返すことでものごとを改善する手法です。従来のPDCAに加え、この手法を取り入れることがアジャイル思考を活かすことになります。
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アジャイル思考を組織文化に根付かせることは、変化に強い「変化対応型」組織へと進化するための第一歩です。変化に強い組織を作る一手段として、組織にアジャイルの基本的な考え方や進め方を共有し、メンバーが自律的に行動できるよう、権限委譲とコミュニケーションを活性化させる環境を整えるところから始めてみるとよいかもしれません。