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公開日 : 更新日 : 一歩間違えればパワハラ?「マイクロマネジメント」の問題点
テレワークやリモートワークの普及、働き方の多様化によって、上司と部下がコミュニケーションをとる機会が減少しています。こうした状況で上司が陥りやすいのが、部下を過度に管理する「マイクロマネジメント」です。マイクロマネジメントの問題点、気を付けるべきポイントなどを知っておきましょう。
マイクロマネジメントとは何か
マイクロマネジメントとは、部下の仕事の進め方やタイミングなどについて細かく指示を出す管理スタイルのことです。一般的には、ネガティブな意味で使われることが多い言葉で、たとえば下記のような管理スタイルがマイクロマネジメントにあたります。
- 進捗状況の報告を過度なペースで求める
- チャットの返信は15分以内にするよう強制する
- 外出先からも1時間に1回の報告を求める
- メールには必ず自分をCCに入れるように指示する
- 提案書や企画書などを細かくチェックする
- 短期的な目標を優先する
- リモートワーク環境下において、業務中は常にWebカメラをオンにさせ確認できる状態にする
マイクロマネジメントの問題点
マイクロマネジメントには、単なるマネジメントスタイルの一種というだけではない問題点があります。例えば以下のようなことが考えられます
部下のモチベーションが下がる
必要以上の指示と管理が続くと、部下は仕事を任せてもらえていないと感じる可能性があります。そうなるとモチベーションが下がってしまいます。
部下が成長しない
常に細かい指示やスケジュール管理をされるため、部下は自分で考え行動することが少なくなります。このような状態が続くと部下は指示待ち人間になり、成長の機会を逃してしまいます。
メンタルに悪影響が出る
常に監視されている状態は、部下のストレスを増大させる原因となります。小さなミスを必要以上に追及したり、常に行動を監視したりすると、メンタルに悪影響がでる場合もあります。
マイクロマネジメントかパワーハラスメントか
マイクロマネジメントは、それ自体が絶対的によくない手法であるとは言い切れません。たとえば、医療や金融、その他安全性が強く求められる分野の業務を管理する場合、または新入社員のように細かい指示の必要なメンバーを管理する場合など、マイクロマネジメントが有効な場面も存在します。
しかし、マイクロマネジメントがパワハラにつながりがちなのは事実であり、リスクを意識しておくことは必要です。パワハラを引き起こさないためには、次のような観点を持っておくとよいでしょう。
細かい指示か、非合理的な指示か
細かく指示を出すだけでなく、ミスを許さない、必要な相談をさせないなどの場合はパワハラに該当する可能性があります。
指導か、感情的な叱責か
部下の失敗の防止が目的の指導は業務上必要な範囲と認められますが、部下を支配したり、感情をぶつける意図が伴ったりするとパワハラとなり得ます。
単発か、執拗な指導か
短期間でスピーディに成果を挙げるために細かい管理を行うのはある程度合理的ですが、継続的に執拗な指導や詰問が続くとパワハラに該当しやすくなります。
いずれの場合も、メンバーの健康や就業に支障が出ているとパワハラとみなされる可能性は高くなります。また、パワハラに該当しないとしても、そのような状態が好ましくないことは明らかなので、何らかの改善を図るのが望ましいと言えるでしょう。
マイクロマネジメントはなぜ起こるか
マイクロマネジメントが起こるケースには、大きく分けて、環境の変化による場合と、上司自身に原因がある場合があります。
環境の変化による場合
リモートワークの増加
オフィスで全員が同じ空間にいれば、上司が部下の様子を確認することができます。しかし、現在はリモートワークの増加により直接顔を合わせる機会が減っています。そんな中で、部下がきちんと仕事をしているか気になり、マイクロマネジメントを行ってしまうケースが見られます。
働き方改革
働き方改革の推進により残業時間が削減したものの、業務量自体は変わらないため生産性を上げる必要があります。限られた時間の中で成果を出そうするあまり、部下の行動を細かく管理するマネジメントスタイルになってしまう場合があります。
職場の人材の多様化
ダイバーシティ推進や働き方の多様化などにより、職場の人材が多様化しています。仕事の価値観が異なるため、お互いが理解しあうためにはよりコミュニケーションが必要ですが、コミュニケーションにかける時間も限られるため、細かく管理するマイクロマネジメントに偏る場合があります。
上司自身に原因がある場合
部下との信頼関係が築けていない
上司が部下との信頼関係が築けていない場合、上司は部下への信用がないため仕事を任せることができません。部下の仕事ぶりへの不安を感じ、細かい指示を出して部下の行動をコントロールしようとしてしまいがちです。
上司の自己顕示欲が強い
部下に尊敬されたい気持ちからマイクロマネジメントに陥るケースもあります。たとえば、過去の自分のやり方や成功パターンに従って部下が行動するよう細かく行動管理するなどです。部下に足りない部分や不備を指摘することでも自己顕示欲は満たされるため、知らず知らずのうちにマイクロマネジメントになっている場合もあるかもしれません。
マイクロマネジメントとマクロマネジメント
マイクロマネジメントの対極にあるのが「マクロマネジメント」です。マクロマネジメントとは、細かく指示を出さず部下に自由に仕事をさせる管理スタイルのことです。その特徴やメリットをまとめます。
マクロマネジメントの特徴
- 部下に自分のやり方で仕事をさせる
- 短期的な結果でなく長期的な目標に向かってマネジメントする
- 結果を出すために部下に権限を与える
マクロマネジメントのメリット
部下の自律性が高まる
部下の意見を取り入れ、それぞれのやり方で仕事をさせることで、部下は自分で考えて仕事を進めるようになり、自律性が高まります。
チーム力が高まる
上司の考えで仕事を進めるのではなく、異なる考えを持ったメンバー同士が積極的に関わり意見し合うことで、団結力が生まれチーム力が高まります。
新しい発想が生まれやすい
組織の方向性が示された状態で業務の進め方を任せられると、部下は自由な発想をしやすくなります。新しいアイデアや新規事業が生まれるきっかけにもなります。
内発的なモチベーションが向上する
自分の意思で自由に仕事ができることは、自ら目標に向かって行動する内発的なモチベーションが生まれます。こうしたモチベーションは長期間持続するのもポイントです。
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マクロマネジメントにはこうしたメリットがある一方で、労働過程を見てほしいタイプの部下は物足りなさを感じる場合もあります。その場合は、メンター制度を設けるなどして、「放置されている」という不安感を補う方法もあるでしょう。
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過度なマイクロマネジメントに陥っていないか点検を
繰り返しになりますが、マイクロマネジメントは、それ自体が悪いというわけではありません。気をつけるべきは、ビジネス環境の変化や上司の抱える原因によって、気づかないうちに過度なマイクロマネジメントに陥っているケースです。パワハラ等の問題に発展しないためにも、日頃から意識しておくことが必要です。
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