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公開日 : 更新日 : オンライン研修の質を高める
今やすっかり定着した企業のオンライン研修ですが、対面と比べて課題を感じる場合もあるかもしれません。コロナ禍をきっかけに広まった際には、オンラインで受講できること自体に大きな意義がありましたが、今や“オンライン”という手段よりも、“どう設計するか”が問われているとも言えます。本記事では、オンライン研修で成果を上げるために必要な視点について、現場で実践できるポイントとともに整理します。
オンライン研修のメリット・デメリット
多くの企業でオンライン研修が導入されたきっかけはコロナ禍でした。集合研修をオンライン研修に切り替えたのは、多くの人が一堂に会するのを避けるためであり、必要に迫られる形で環境整備や運営方法、プログラムの企画に試行錯誤を繰り返してきたという経緯があります。そうした経験の中で、オンライン研修ならではのメリット・デメリットも明らかになってきました。
なお、本稿で言うオンライン研修とは、録画された教材を視聴する「オンデマンド型」ではなく、オンライン会議ツール等を使用して双方向にコミュニケーションを取る「リアルタイム型」の研修を指します。こうしたリアルタイム型のオンライン研修について、まずはメリット・デメリットを整理してみましょう。
オンライン研修のメリット
どこからでも参加できる
集合研修では、参加者全員が同じ会場に集合する必要がありますが、オンライン研修はパソコンとネットワーク環境があればどこからでも参加が可能です。在宅勤務の社員が自宅から参加することも可能です。
コストが削減できる
上記とも関連しますが、研修会場への移動が不要なので、遠隔地にいる社員が研修に参加するため、あるいは育成担当者や講師が研修会場に赴くためにかかっていた交通費や宿泊費が削減できます。会議室・外部会場利用にかかる費用も抑えられます。
勤務地による有利・不利が発生しない
たとえば首都圏でまる1日の集合研修が開催される場合、地方拠点勤務の社員は前後の移動日も含めてまる3日を取られるといったこともあり得ます。このため、参加すること自体のハードルが上がってしまい、必要な研修を受けづらくなるケースも。オンライン研修であれば、勤務地を問わずすべての社員に平等な機会を用意できます。
必要な研修を、タイムラグなく実施できる
全国に多くの拠点を持つ企業で、拠点ごとに集合研修を行うと、最初に実施した会場と最後に実施した会場ではかなりの時間差が発生する場合があります。とくに緊急性の高い研修テーマでは、こうしたタイムラグを最小限にできるオンライン研修に大きな強みがあります。
オンラインならではのコミュニケーションの取りやすさがある
大勢の前で質問や発言をするのが苦手な人もいますが、オンライン研修ではスタンプやチャットでコミュニケーションが取れるため、発言が苦手な人がかえってリアクションしやすくなる場合もあります。
オンライン研修のデメリット
技術的なリスクがある
オンライン環境が整ってきたとはいえ、参加拠点ごとの環境の違いはゼロにはなりません。通信環境の不安定さや機材トラブルによる中断の可能性はどうしても残ります。
運営側の人的負担が増す
いったんトラブルが起こってしまうと研修直前や実施中に対処に追われる場合もあります。このため、いざというときの対応をするするための人員を確保する必要が出てきます。
参加者の反応が把握しづらい
対面研修では、講師やファシリテーターは受講者の表情や姿勢から理解度や集中度を直感的に読み取ることもできます。しかしオンラインでは得られる情報に限りがあり、無反応に見えてしまうこともしばしばです。
参加者の集中力の維持が難しい
まわりに他の参加者がいない環境では緊張感が途切れがちになりやすいものです。また、長時間のモニター越しの参加では、目や耳が疲れやすくなり、集中力が低下しやすくなります。裏でメールを見てしまうなど「ながら受講」のリスクもあります。
双方向のやり取りが生まれにくい
対面では雑談や隣席とのやり取りから議論が広がることがありますが、オンラインでは発言の順番管理や通信のタイムラグがあり、自然なやり取りは生まれにくくなります。結果として、参加者同士の議論の活性化が進まない可能性があります。
参加者同士の関係性が築きにくい
休憩時間の雑談や対面での交流は、学習効果や社内のネットワークづくりにも寄与する対面研修ならではのメリットですが、オンラインではこうした機会が持ちづらくなります。とくに新入社員研修のように、人間関係のない状態で行う研修で問題になりがちです。
どんな研修をオンラインで行うか?
オンライン研修を実施する際には、単に対面で実施していた研修をそのまま実施するのではなく、ここまでご紹介したようなメリット・デメリットを踏まえた設計を行う必要があります。
まずはそもそもオンライン研修に向く内容、オンライン研修で実施するには工夫が必要な内容を考えてみましょう。
オンライン研修に向く内容
個人ワーク中心で進める研修
他の参加者が周りにいない分、人目を気にせず発想し集中して取り組むことができるため、オンラインのよさを活かすことができます。
オンラインコミュニケーションそのものをテーマとする研修
会議でのファシリテーションや折衝など、オンライン環境でのコミュニケーションに直結するスキルについては、オンラインで学ぶことで実体験として学ぶことができます。自分が相手に向けている表情を画面上で確認できることも、このテーマには合っていると言えます。
オンライン研修で行う場合、工夫や補完が必要な内容
チームで何かを作り上げる演習
チームビルディングでよく活用される演習、たとえばレゴブロックの創作や絵を描く作業など、協働して何か1つのものを作りあげる活動は、場を共有していないオンライン研修では実施できません。会話や表情を活かした別の方法の企画が必要です。
“動作”を伴う演習
新入社員研修で実施する名刺交換など、ビジネスマナー系の内容は、オンラインでは実践やフィードバックがしづらいテーマです。講師のよるデモでよい例・悪い例をしっかりと見せながら、セルフチェックで補完する等の工夫が必要です。
オンライン研修の成功のポイント
ここまで見てきたように、オンライン研修には特性があり、これまで集合研修で行っていた内容をそのまま切り替えてもうまくいかないことがあります。これを踏まえた上で考えられるオンライン研修の質を高めるポイントは、以下のように整理できます。
操作面の事前ケアをしっかり行う
研修担当者は、研修がスムーズに実施されるように事前の準備を行いましょう。研修前に参加者のオンラインツール・機材(パソコン・カメラ・音声)が使用可能かの確認をしておくほか、不慣れなメンバーのために操作方法に関するマニュアルを準備しておくと安心です。
ただ、事前に確認をしていても、本番でトラブルが発生する可能性はあります。運営担当者は万が一に備え、当日トラブル対応ができる体制を整え、万一の際の代替手段(電話参加や録画の提供)についても用意しておくとよいでしょう。
“オンライン研修参加ルール”をアナウンスしておく
研修に集中し、積極的に参加・発言してもらうためにはある程度のルール作りが必要です。たとえば、基本はカメラをオフにせず顔出しにするなど「オンライン研修のルール」を決めましょう。別の作業をしながら研修に参加することもできてしまうため、そうしたことを明確に禁止しておく必要もあるかもしれません。
チャット機能等のツールをうまく使う
集合研修に比べると相手の表情が読み取りづらく、熱量も伝わりづらいため、発言に消極的になる人もいます。前述のように、チャット・スタンプ機能を活用することで発言やリアクションがしやすくなるので、事前に育成担当者や講師からその使用方法もアナウンスしておくといいでしょう。そのことで、講師も参加者のリアクションを把握しやすくなります。
チャットツールは質問を投げかけやすいメリットがありますが、質問が多いと埋もれやすいため、研修担当者が発言をピックアップして講師に伝えるなどのサポート役を務めるのも効果的です。
参加型を意識したカリキュラムとする
スライドを見ながら講義を集中して聞いていられる時間は集合研修よりも短いと考え、講義部分は短めにし、1時間に1度程度の休憩を取るよう設計します。小テストや投票機能を盛り込んで、受講者を常に「参加状態」に置くのも重要なポイントです。
また、講義については事前教材配付や事前学習でカバーし、当日はブレイクアウトルーム等を活用してグループ討議・演習の時間を多めに取り入れるのもお勧めです。参加者の反応を知り、緊張感を保つためにも、講師には個々のグループ討議に可能な限り介入してもらいましょう。
講師から呼びかけ・問いかけをしてもらう
講師から参加者に対して個別に問いかけることを意識してもらいましょう。反応がくみ取りづらいオンライン研修で、参加者の理解度合いや発言を積極的に掬い取ることは、研修の質を左右する重要なポイントです。参加者の緊張感を保つ効果もあります。
参加者同士の交流の仕組みを作る
研修冒頭の自己紹介やアイスブレイク、終了後のオンライン懇親会などを設けるほか、研修参加者向けにチャットツールなどを利用したコミュニティを作るなど、意図的に交流機会をデザインしましょう。
まとめ
運営上の工夫を中心にご紹介してきましたが、それ以上に大切なのは、研修の目的や、この時間をよい場にして活かしきろうという熱量が講師・参加者に共有されていることです。このことは、集合・オンライン研修を問わず、研修そのものの成功の一つのポイントといえます。
一方、オンライン研修の運営については、慣れやノウハウも必要です。スムーズな実施のためには、JMAのような研修サービスをうまく活用していただくのもお勧めです。オンラインによる研修を実りあるものにするために、気軽にご相談をいただければ幸いです。
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