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やりぬく力「GRIT」を伸ばす
いかなるビジネスパーソンにとっても「諦めずにやりぬく力」は必要な能力です。「GRIT(グリット)」は「やりぬく力」と定義され、成功のためには欠かせない能力だと言われています。では、こうした力はどのようにすれば伸ばせるのでしょうか。GRITを伸ばすためにできることを紹介します。
GRIT(グリット)とは
GRITは、以下の4つの要素から構成される能力であり、それぞれの頭文字を取ってGRIT(グリット)と呼ばれています。
- Guts(ガッツ):困難なことにも立ち向かう度胸
- Resilience(レジリエンス):失敗しても諦めずに続ける復元力
- Initiative(イニシアチブ):自ら目標を見据えて取り組む自発性
- Tenacity(テナシティ) :最後までやり遂げる意思の強さ・執念
日本語では一般的に「やりぬく力」「粘る力」と言い換えることができます。困難な状態でもくじけない闘志、時間がかかっても目標に向けてやりぬくことができる能力のことと言えるでしょう。
GRITという概念は、ペンシルバニア大学教授の心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱したことで世に広がりました。ダックワース氏は、「成績のよい学生が必ずしもIQが高いわけではない」という教師時代の気づきをもとに研究を実施。さまざまな場面で成果を上げている人の共通点を調べた結果、必要なのは生まれ持った才能や学歴ではなく「情熱を持って諦めずやりぬく能力」だと結論づけ、その能力をGRITとして紹介したのです。
GRITはどう測定するか?
GRITは、ダックワース氏が作成した「グリット・スケール」を用いることで測定できます。グリット・スケールは、「情熱」を測る質問と「粘り強さ」を測る質問で構成されていて、以下のような項目について5段階で回答することでGRITを測定することができます。
チェック項目の例
- 新しいアイデアやプロジェクトに気を取られてしまう
- 挫折してもめげない、簡単にあきらめない
- 興味の対象が変わりやすい
- 努力家である など
なお、グリット・スケールで測定できるのは生まれ持った素質ではなく「現在の状態」です。測定したときの状態によっても結果は異なりますが、逆に言えば、トレーニングによって高めることもできるというわけです。
GRITをどうやって伸ばすか?
GRITは、トレーニングすれば誰もが後天的に伸ばせる能力であり、大人になってからでも伸ばすことができます。
個人でできること
GRITを伸ばしたい本人にできることには次のようなことがあります。上司など周囲の支援があれば、より一層の効果が期待できるでしょう。
今より少し高めの目標を設定する
今できることを続けてもGRITは育ちません。少し難しい目標に挑戦することで、失敗しながらもGRITを高めていくことができます。上司が部下の目標設定をする場合も、少し高めの目標に挑戦できるように設定するとよいでしょう。
小さな成功体験を積み上げる
「挑戦」と言いましたが、急に大きなことに挑戦すると、達成する前に心が折れる可能性もあります。できそうなことから挑戦し、小さな成功体験を積み上げることで、自己肯定感・自己効力感が高まり、簡単にあきらめない粘り強さが生まれます。周囲が目標を設定する場合には、小さなゴールを複数設けることを意識するのもよいでしょう。
興味があることに打ち込む
GRITは、興味のあることに真剣に粘り強く打ち込むことによっても育ちます。学生時代の部活動や課外活動のように、仕事に直結しなくても何か打ち込めることを見つけ、活動するのもよいでしょう。企業としてサークル活動を推進したり、資格取得のサポートを行ったりするのも効果的かもしれません。
組織でできること
一人ひとりの取り組みに加え、組織としての環境づくりも、メンバーのGRITを伸ばすことにつながります。
周囲にGRITの高い人たちがいる環境を作る
人は周囲にいる人たちの影響を受けやすいため、GRITが高い人たちの中にいると、そういう人の目標の立て方や仕事の進め方などを自然と取り入れることでGRITを高められる可能性が高まります。GRITの高い人をメンターとして立てるのもよいでしょう。
全員で取り組み、支え合いながら気持ちを共有する
GRITの提唱者であるダックワース氏は、GRITを伸ばすための活動に家族全員で取り組んだそうです。仲間と一緒に取り組み、お互いの状況を共有したり支え合ったりすることは、学びの相乗効果を高めます。GRITを伸ばす取り組みについても、職場全体で実行すると効果的かもしれません。
従業員一人ひとりが粘り強く「やりぬく力」は、成功へとつながる普遍的な力です。人材育成を考える際には、こうした力、GRITを伸ばすことについても考え、環境整備や研修プランを考えてみる価値がありそうです。
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