やりっぱなしにしない!研修活用術

研修を120%活用するために 研修後編③
個人と組織の変容をどう測定するか?

公開日:2021/07/11 更新日:2023/09/13

研修後の「個人」と「組織」の変化を検証するには


研修後の効果を評価する方法としては、アメリカの経営学者であるカークパトリック博士が1959年に提案した教育の評価法のモデルが有名であり、世界的に定着しています。この評価は4段階に分かれており、企業研修では、下記のように読み変えることができます。

  • ①Reaction(教育研修内容の満足度)
  • ②Learning(教育研修で何を学んだかという理解度)
  • ③Behavior(教育研修による行動変化度)
  • ④Result(教育研修内容が組織へ及ぼした影響度)

①②については以前のコラムでご紹介をしました。

やりっぱなしにしない研修活用術!研修後編②アンケートを最大限に活用する

そこで今回は、③④について、それぞれ具体的にどのように測定するかを考えます。

個人の行動変化度の測定法

③の「Behavior」は、個人の行動が研修をきっかけにどのくらい変化したかを見るものです。まずはこうした個人の行動変容の測定法をご紹介します。

個人の行動変容の測定法1 360度評価で測る

①と②が受講者本人が回答する評価であったのに対して、一緒に仕事をしているメンバーに尋ねるのが360度評価です。上司だけではなく同僚や部下にも回答を依頼し、「360度」という名前の通り、全方向からのコメントを判断材料として、対象者の日常的な職場での行動の現状や、過去と比較した成長を推定します。

ただしこの方法には、回答をするメンバーが評価のプロではないために、どうしても日頃の個人的な感情が排除しきれなかったり、フィルターのかかったジャッジとなってしまうなどのリスクもあります。

フィルターやバイアスがかかりにくい設問を用意するためには、自社自前のアンケート作成ではなく専門機関による設問設計が望ましいでしょう。

測定結果をより自社の育成課題に合ったものとするには、専門家の支援を受け、自社の社風や育成施策の狙った項目に合わせた設問をオーダーメイドで準備をする。「期待された能力の開発が本当に進んだのか」、「思考や行動の変容が本当に起こったのか」を明らかにでき、研修成果の測定に留まらず、個人のポテンシャル評価や、能力を最大限に活かすためのキャリアプラン、配置や昇格の判断材料としても活用できるでしょう。

例えば、オーダーメイドでの360度評価設問から、当事者へのフィードバックセッションや、全体結果から判断する次の育成施策の提案まで、ワンストップで支援できるような研修提供会社も存在しています。

個人の行動変容の測定法2アセスメントに基づき社外の専門家の目で測る

アセスメントには記述式や面談・観察形式など複数の種類がありますが、いずれも社外の専門家が採点し、期待される能力・行動・思考の現状を定量的もしくは定性的に評価します。対象者の現状を知ることができるとともに、研修前・後に実施できれば研修を経ての変化を確認することが可能です。個人や組織の強みが発見できるなどの副産物もあります。

こちらも1と同様、設問をカスタマイズしたり、評価を受けた当事者へのフィードバックセッションを準備したり、次の最適な育成施策につなげることが可能です。

個人の行動変容の測定法3アクションプランの達成度で測る

研修の当日もしくは直後に、研修での学び・気づきをどのように活かすか、個人のを策定してもらい、上司の協力も得ながらその実践・達成状況を振り返る場を設定し、確認することで研修の効果を見る方法です。継続性や中期での変化、を評価するうえでは、一定の期間をはさみながら複数回にわたり振返りを行うことも効果的です。

組織への影響度の測定法

続いて④の「Result」、つまり研修の「組織への影響度」についてです。研修参加者が学んだ内容を活用してビジネス成果を向上させたか、研修が組織に貢献したかということを問う段階です。個人の業績を成立させている要素を分解するのは難しいことですが、ここでは組織の状態変化を見ることに置き換えて考えてみましょう。

組織への影響度測定法 定期的な組織診断で変化を見る

より包括的に組織としての成長・変化を見ていきたい場合には、「組織診断」が活用できます。組織診断で浮き彫りになる課題の対策として、人材育成施策、研修等を実施し、再び診断をした結果課題ポイントが改善するのかを見ていく、というサイクルで、組織の状態と育成施策の評価を見ていくやり方です。組織全体を定点観測し、経年変化を追うことができます。


JMAが提供する組織診断プログラム

研修は何のために行うのか

研修設計の第一段階は、「自社にとっての組織課題」「人材育成の課題」を把握することです。

個人や組織の変化を測定した結果、研修の効果が期待に至らなかった場合には、次の人材育成施策のヒントとして活かし、改善していく必要があります。たとえば下記のような方法が考えられるでしょう。

  • 研修プログラム・講師やフォローアップの方法を見直す
  • アプローチする対象層を見直す
  • 当初設定した育成課題が適切であったかを見直す

また効果測定は“測定どまり”にもなりがちです。育成施策を考える関係者に共有し、当事者である研修参加者や上司にも公開することで、組織を成長に導いていく人材育成担当者の役割を発揮しましょう。

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