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リーダーシップとフォロワーシップで組織を活性化する(研修テーマ)

公開日:2023/07/06 更新日:2023/07/10

組織としての成果を上げるためには、組織を率いるリーダーシップが不可欠ですが、メンバーのフォロワーシップとの組み合わせも重要だとされています。理想的なフォロワーシップとは何か、リーダーシップとの関係や実践方法について解説します。

フォロワーシップとは何か

フォロワーシップとは、チームの成果を最大化させるために「主体的に考えリーダーや他のメンバーを支援する力」です。そのためには、単にリーダーに従うだけでなく、リーダーと異なる意見を持った際には臆することなく提言する、自分だからこそできることについて積極的に行動することも必要です。

フォロワーシップは、1992年アメリカカーネギーメロン大学ロバート・ケリー教授の著書『The Power of Followership』の中で紹介された概念です。そこでは、リーダーの指示に従う従来の「部下」のイメージとは異なり、主体的にゴールに向かって実行していくことの重要性が説かれてます。

フォロワーシップとリーダーシップとの関係

リーダーシップとフォロワーシップが相互に影響し合うことで、さまざまな効果が得られます。

リーダーシップがビジョンや組織の方向性を示すことで、チームを引っ張る力だとすれば、フォロワーシップは、リーダーのビジョンへ高いコミットメントを示し、リーダーの言動・行動に対して建設的な批判をし、具体的な行動計画を立てて実行する力といえます。

つまり、リーダーの指示に従うだけでなく、リーダーの言動・行動に誤りがあると感じた際には、健全な批判や提言をすることを厭わない姿勢を指します。このようにフォロワーがリーダーとゴールを共有しながらも建設的批判をすることで、直接的または間接的にリーダーや組織に対して良い影響力を発揮するのです。

ロバート・ケリー教授の調査によると、「リーダー」が組織の成果に及ぼす影響力は10%~20%程度であるのに対しフォロワー(メンバー)が及ぼす影響力は80%~90%にのぼるとされています。強力なリーダーシップを発揮するリーダーがいたとしても、リーダーが示した戦略やプランに賛同するメンバーがいなければ、そのプランは実行されません。このように、実際に組織が成果を上げるには、メンバーのフォロワーシップが重要なのです。

なぜ今フォロワーシップが注目されているのか

ビジネス環境の変化やライフスタイルの多様化によって、企業にはよりスピーディで柔軟性のある対応が必要とされています。しかしリーダーのトップダウンによる意思決定だけでは、多様化・複雑化するビジネス環境を読み切れず、物事を適切に進められなくなってきています。そこで、リーダーの意思決定に多様な視点を持たせるためにも、健全でかつ代替案を提示できるフォロワーの存在が重要になっているのです。

また昨今では人材不足により、管理職でありながら自らも現場の業務を担う「プレイングマネジャーも」増えています。リーダーを務めるべき人が多忙になり、リーダーシップの発揮に限界が出る中で、それを補うフォロワーシップを発揮できる人は非常に重宝されやすい傾向があります。

フォロワーシップは誰に求められるのか

リーダーを主体的に支援するという立場では、次期管理者、次期リーダー、若手・中堅社員を中心に、組織における主力・中核メンバーなどにフォロワーシップが求められます。

 とはいえ実際には、フォロワーシップはリーダー自身を含めたチーム全体にとって必要といえます。たとえばプロジェクトを引っ張っている部下に対し疑問を感じた時、その上司がフォロワーとなり、建設的な意見をしたり、提言を行ったりする場面もあるでしょう。すべての立場の人がフォロワーになり得る以上、全員にフォロワーシップが求められるのです。

フォロワーの5つのタイプ

ロバート・ケリー教授の理論によると、フォロワーは「批判力」と「貢献力」を軸に5つのタイプに分類されています。

模範的フォロワー(批判力:高/貢献力:高)

最も理想的なフォロワーです。リーダーの意見に対し主体的に考え、単なる批判ではなく建設的な提言ができ、正しいと感じた場合は積極的に取り組んでいきます。

 孤立型フォロワー(批判力:高/貢献力:低)

批判的思考や発言はするものの、組織に対しては消極的で自ら動こうとしません。評論家のようなフォロワーです。 

順応型フォロワー(批判力:低/貢献力:高)

リーダーの決定に従うフォロワーです。リーダーに対しての依存性が高く、指示がなければ動かないところが弱点です。 

消極的フォロワー(批判力:低/貢献力:低)

意見もないので批判もしなければ、主体性もないため組織への貢献もしないフォロワーです。仕事に対する責任や積極性はありません。

 実務型フォロワー(批判力:中/貢献力:中)

与えられた実務に対しては一定の成果は出せますが、積極性を発揮するのではなく失敗を避ける傾向があります。

フォロワーシップに必要な能力とは

模範的フォロワーを目指すには、フォロワーシップの軸となる批判力と貢献力の両方を伸ばすことが大切です。

批判力

批判力とは、批判的思考力、クリティカルシンキングのことです。批判的思考力を高めると、リーダーが示した指針や戦略に対して、主体的に考え建設的な批判や提言ができるようになります。リーダーの発言をただ否定するのではなく、「自分ならどう考える」「本当にその決定は正しいのか」と客観的に考え、検討を加えて初めて批判力が高いといえます。

貢献力

貢献力とは、自分の意見を主張し、積極的に関与するスキルのことです。積極的に関与するには、「こうした方がさらによくなる」「成果を上げるためにはどうしたらよいか」というように物事を前向きに捉える必要があります。そのうえで、指示が出る前に先回りし、率先して動くことで、リーダーの負担を軽減し、成果につながります。

フォロワーシップを身につけるには、フォロワーシップについて理解し、批判力と貢献力を伸ばすためのトレーニングも効果的です。リーダーシップの対になる概念として、改めて学んでおくのもよいでしょう。

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