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オールドボーイズネットワークがダイバーシティの実現を阻む?

公開日:2023/07/10 更新日:2023/07/11

DIDEIという概念は浸透してきましたが、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2022年の「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は146カ国中116位となり、諸外国と比べて大きく取り残されています。女性活躍が進まない理由の一つとして最近注目されているのが「オールドボーイズネットワーク」。その意味や問題点について解説していきます。

日本における女性活躍の割合

経済協力開発機構(OECD)の統計では、日本の男女間賃金格差は加盟44カ国中ワースト4位と、男女平等を推進する諸外国と比べ出遅れています。また、2022年の段階で女性管理職の割合は平均で1割未満、役員についても「役員が全員男性」という企業が半数以上という調査結果もあります。日本で女性活躍が進まないこうした現状の背景にあると言われているのが、「オールドボーイズネットワーク」です。

オールドボーイズネットワークとは

オールドボーイズネットワークとは、男性中心社会の企業コミュニティで培われてきた非公式の組織構造を指す言葉で、「オールドボーイズクラブ」とも呼ばれます。このコミュニティは、企業内の多数派である男性メンバー間で築かれてきたもので、メンバー内だけで共有された文化や仕事のルール、人間関係などを形作ってきました。オールドボーイズネットワークは世界共通の言葉ですが、日本ではとくに、年功序列や終身雇用制度といったシステムのもとで、男性中心のネットワークが形成されやすかったといえるでしょう。

オールドボーイズネットワークによる職場慣習の例としては以下のようなものが指摘されています。

  • 自分たちだけの経験を前提としたビジネスルール
  • 深夜、長時間労働、休日出勤
  • 飲み会、タバコ部屋など男性だけのネットワークの場での意思決定
  • 派閥や根回し
  • チャレンジが伴う業務は男性、サポート業務は女性という分類
  • 昇格者を無意識に男性から選ぶなど、無意識の行動・バイアス
  • 育児をしている女性への過剰な配慮、思い込み
  • 男性に合わせた空調設定

これまで、女性活躍推進のため、女性自身の意識の変化を促したり、サポートしたりする多くの施策が展開されてきましたが、期待されるような成果につながっていません。女性活躍を阻む原因としては、チャレンジに対するためらいや仕事と家庭の両立への不安など、女性自身の意識によるものもあります。一方で「オールドボーイズネットワーク」による弊害は、非常に大きな問題でありながら、女性自身では解決できません。そこで今、ビジネス社会のマジョリティである男性の意識改革の必要性が指摘されるようになったというわけです。

オールドボーイズネットワークの問題点

オールドボーイズネットワークが組織に存在する場合、以下のような問題点が起こり得ます。 

イノベーションを阻害する

オールドボーイズネットワークにはこれまでの成功体験から作られた暗黙の仕事のルールが存在しています。そのため同じような考え方の人が集まり、画一的な意見に支配されがちでイノベーションが起こりにくくなります。

 女性の活躍を阻む

ゴルフや飲み会など男性だけのネットワークの場で、仕事に関する情報交換やコネクションなどができあがっているケースもあります。問題は「女性はこれらのネットワークに入れない、入りにくい」ことです。女性は必要な情報を受け取ることができないため、仕事の便宜が図られず、結果的に昇進・昇格ができないことにつながっています。

若い人の成長を阻む

オールドボーイズネットワークの影響を受けるのは女性だけではありません。時代の変化によって仕事に対する意識も変わり、飲み会やゴルフに参加しない若い人も増えています。ネットワークに入らない人は少数派となり、仕事に関する情報を受け取れないなど成長を阻む原因にもなっています。

オールドボーイズネットワークをどう変えていくか

誰もが力を発揮できる職場にするためには、オールドボーイズネットワークを変えていかなくてはなりません。オールドボーイズネットワークの変化は、多様性の受容につながり、女性活躍に限らないダイバーシティの推進にもつながります。そのためには、多様性を受け入れる風土を醸成することも必要です。

とはいえ、新たな価値観を受け入れることは容易ではなく、とくにオールドボーイズネットワークに属する人は多様性を受け入れることに抵抗を感じる人もいます。本当の意味で変化を期待するなら、オールドボーイズネットワークが組織に与える弊害を理解してもらいつつ、反発や抵抗につながらないよう、取り組む意義を理解してもらうことが重要です。 

ポイントは、ダイバーシティに取り組む意義を理解してもらい、長期的に組織が成長し続けるには必要なことだという点を共有することです。 

ダイバーシティの推進がもたらす意義には、たとえば以下のようなことがあります。こうした意義に異を唱える人は少ないでしょう。 

  • グローバル化に対応しやすくなる
  • イノベーション創出しやすくなる
  • 投資家に評価されるやすくなる
  • 採用競争力がつく

関連リンク

【2022年版】ダイバーシティ&インクルージョン研修とは?

労働人口が減少する日本では、組織としてもダイバーシティの推進は不可欠です。そして組織が変化するにはダイバーシティの意義を理解する以外に、多様性を受け入れる姿勢も必要です。組織全体でオールドボーイズネットワークの弊害を自覚するには、従業員の意識を変える研修を取り入れてみるのも一つの方法です。