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公開日 : 更新日 : 管理職がリスキリングすべき「デジタルを活かす力」-カギは心理的安全性にあり!

「管理職のリスキリング用にプログラミングの入門研修を用意したが、受講率が上がらない」「そもそも多忙な部長に実務スキルを学ばせる意味があるのか」——こうした悩みが生まれるのは、管理職が取り組むべきリスキリングとは何かがうまく整理できていないせいかもしれません。本稿では、管理職のリスキリングに必要なことは何か、真のDXを実現する管理職の育成とは何かを考えます。

管理職がリスキリングすべき「デジタルを活かす力」

「プレイングマネージャー化」が引き起こすリスキリングの罠

部長クラスの管理職がデジタルスキルを求められる背景には、「上司が理解していなければ、部下のDX提案を承認できない」という前提があります。管理職自身が「自分も最前線の実務を理解しなければ、部下に置いていかれるのではないか」という不安を抱えている場合もあるかもしれません。

こうした危機感自体は間違いではありません。しかし、「デジタル知識を身に付けなければ」と考えるあまり、管理職が「自分でデジタル実務をこなす」というプレイングマネージャー思考を強めてしまうことには問題があります。たとえば、習得したての不慣れなITスキルを使うことにこだわり、デジタルに強い若手なら数分で終わる作業に数時間を費やすような事態は決して好ましいものではありません。

管理職の本来のミッションは「自分で手を動かすこと」ではありません。「チームの知を掛け合わせ、個人の能力を最大限に引き出して、組織としての成果を最大化すること」です。実務の遂行能力に焦点を当てすぎたリスキリングは、管理職をただ疲れさせ、組織の生産性を低下させてしまう恐れがあるのです。

「操作(How)」はできなくても「概念(What/Why)」の理解は必須

では、管理職はデジタルの勉強をしなくてよいのかというと、もちろんそうではありません。デジタルが分からないからと「すべて若い人に任せる」という考えは、一見、部下に権限を委譲しているように聞こえますが、実際はマネジメントの放棄です。

テクノロジーに対する理解がゼロのまま、こうした「丸投げ」をすることの最大の問題は、管理職が挑戦の責任を取れないところにあります。若手が優れたDXのアイデアを企画しても、それを全社に展開したり、必要な予算を獲得したりするには、「この技術で自社のビジネスがどう良くなるのか」を組織の論理に合わせて語る必要があります。管理職がテクノロジーの概念すら理解していないと、こうした調整や説得ができず、結果的に発案者である部下を孤立させてしまいます。あるいは逆に、セキュリティやコンプライアンス上の重大なリスクを見抜けず、会社に損害を与えかねない無責任な承認を出してしまうかもしれません。

このように、管理職もデジタル知識を身に付ける必要があるのは事実です。ただし、学ぶべきデジタルスキルの階層は、管理職と一般社員・専門職では異なります。

一般社員や専門職に求められるのが、ツールをどう動かすかという「操作(How)」のスキルだとすれば、管理職に求められるのは、そのテクノロジーを使って何ができるのかという「概念(What/Why)」のリテラシーです。例えば、「生成AIを使ってプログラミングコードを書く」スキルは、管理職にとって必須ではありません。しかし、「生成AIを業務プロセスに組み込むことで、これまでの作業時間がどの程度削減できるのか」「なぜこの技術の導入が、競合他社に対する我が社の優位性になり得るのか」を論理的に理解しておく必要はあるというわけです。

「自ら実行はできなくても、部下の提案の価値を見抜き、正しい方向へ導くためのリテラシー」こそが、管理職が身に付けるべきデジタル知識だと言えるでしょう。

もう一つのリスキリング—「昭和・平成型」のマネジメントスタイルを変える

必要なデジタルリテラシーを身に付けた管理職が、もう一つリスキリングすべき重要な領域が、部下への接し方や評価の仕方、つまりマネジメントスタイルです。

日本のベテラン管理職の多くは、過去の成功体験に裏打ちされた「昭和・平成型のマネジメントスタイル」を持っていることでしょう。あらかじめ正解が決まっているビジネス環境において、上司が答えを示し、部下を管理・統制するシステムの中で機能してきたスタイルです。

しかし、DXやイノベーションが求められる現代は、誰も正解を持っていない時代です。そのような環境で古いマネジメントを実行することは、新しく学んだデジタルスキルを武器に挑戦しようとする若手や専門人材を、無意識に潰してしまうことになります。例えば、デジタルスキルに長けた部下が作成した高度な予測モデルに「自分の肌感覚と違う」と細かく口出しするマイクロマネジメントは、斬新なアイデアを枠内にはめ込み、ポテンシャルの芽を摘んでしまうことになりかねません。

これからデジタル領域を学ぶ管理職が目指すべきは、テクノロジーを駆使するのは若手や専門家に任せ、自分よりもデジタルに強い部下たちを尊重し、彼らが失敗を恐れずにその才能を存分に発揮できる環境を作ることです。そのために、デジタル面だけでなくマネジメント面でのリスキリングも不可欠なのです。

管理職のリスキリング-挑戦を許容する「心理的安全性」の構築を

こうした環境づくりの核となるのが「心理的安全性」です。

まず確認しておきたいのは、心理的に安全であるとは「お互いに傷つけ合わない」「メンバー同士の仲がよい」という意味では決してないということです。心理的安全性が高い状態とは、「組織の目標を達成するために、誰もが非難されることなく率直な意見や疑問をぶつけ合える」状態のことです。

■心理的安全性についてもっと知りたい場合はこちら
コラム:チームにもたらすメリットは大。「心理的安全性」のためにできること >>

DXは、これまでの常識とは全く違うことを試す試行錯誤の連続であり、当然、失敗や未知のトラブルが伴います。そんな中で、もし「新しいツールを提案しても、上司から『今のままで何が不満なのか』と否定される」「分からないことを質問したら『そんなことも知らないのか』と評価を下げられる」という状態であれば、社員は誰も自発的に挑戦をせず、現状維持を選んでしまうでしょう。

つまり、DXを実現するには、「どんなに小さなアイデアでも、提案を歓迎してもらえる」「分からないことを、分からないと素直に言ってよい」「挑戦した結果の失敗であれば、責められるのではなく、改善のためのデータとして建設的に受け止められる」といった心理的安全性が不可欠なのです。

管理職が過去の成功体験に基づく「管理・統制」のやり方をアンラーニングし、チームにこうした安心感を抱かせるリーダーシップを学ぶことは、組織全体のリスキリングの成果を左右するとさえ言えるでしょう。

■ミドルシニア社員のアンラーニングについて、もっと知りたい場合はこちら
コラム:ミドルシニアのリスキリングを支える「アンラーニング」の技術とは >>

「心理的安全性」を作るために、管理職が起こすべき3つのアクション

チームの心理的安全性を高め、デジタル人材が主体的に動けるようにするために実践できる具体的なマネジメント行動の例を3つご紹介します。

①「正解を与える」のではなく「問いを立てる」

まずは上司がすべての答えを持っているという前提を捨てます。部下との1on1ミーティングや進捗確認の場で、「この課題をクリアするために、どんなデジタルツールが活用できそうだと思う?」「君の視点から見て、今のプロセスで一番無駄だと感じる部分はどこ?」と、メンバーのアイデアを引き出す「問い」を投げかけるよう意識することで、相手の心理的安全性は高まります。

②上司の側から「弱み」を見せる

部下の前で完璧な上司を演じる必要はありません。たとえば「実は、この新しい生成AIの仕組みについて、私はまだ十分理解できていないんだ。君の方が詳しいと思うから、ぜひレクチャーしてくれないか」と上司が弱みを見せることで、メンバー側も「分からないと言ってもいいんだ」という安心感を得ることができ、報・連・相の質も向上します。

③失敗の許容を仕組み化する

部下が新しいツールを導入して運用に失敗した際、「なぜこんなミスをしたんだ」と責めるのではなく、「今回の試みで、どんなデータが得られたか」「次に活かせる教訓は何か」という「学習」に焦点を当てます。こうした流れを仕組み化することで、失敗を隠すのではなく、チーム全体の共有資産へと変える対話が生まれるでしょう。

まとめ:管理職を「環境作りのプロフェッショナル」へ

激変するビジネス環境の中で、「自分も第一線で戦わなければならない」「デジタルについていけなければ居場所を失う」と、強いプレッシャーと孤独を感じている管理職は少なくありません。

そんな管理職に対し、「リスキリング=プログラミングを学び、デジタル実務のエキスパートになることだ」と感じさせることは、不要なだけでなく、彼ら自身に無駄な負荷をかけることになってしまいます。そうではなく、「テクノロジーの価値を正しく理解し、それを使える若い人材や専門家たちが、一番伸び伸びと輝ける心理的安全性を作るプロになってほしい」と、彼らの新しい役割を明確に定義することが重要です。

管理職が「環境づくりのプロフェッショナル」としてアップデートされたとき、リスキリングは単なるブームではなく、本物のイノベーションを生む力となるでしょう。

■心理的安全性が学べるプログラム例はこちら
研修:心理的安全性が高まる職場づくりセミナー(JMAマネジメントスクール) >>

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