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公開日 : 更新日 : 「センスメイキング」とは? AI時代に組織を動かすリーダーに不可欠な「納得感」の作り方
ビジネス環境の変化によって、これまでのように「論理的に正しい答えを提示する」だけのリーダーシップでは人が動かなくなっている、という事実があります。そんな今、次世代リーダーに必要な能力として注目を集めているのが「センスメイキング」という概念です。本コラムでは、AI時代に不可欠とされるこの概念の基本から、マネジメントの現場での活かし方、そしてこうした力の育成ポイントまで解説します。

なぜ今、リーダーに「センスメイキング」が求められるのか?
テクノロジーの進化、特にAIがビジネスの現場に広く普及した現在、「データ分析に基づく最適解」を導き出すことは、以前に比べてはるかに容易になりました。
しかし、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれる現代のビジネス環境においては、過去のデータからは答えを導き出せない「正解のない課題」が山積しています。そのような状況下で、いくらリーダーが「データによればこれが正しい」と主張しても、先行きが見えないメンバーは安心して行動することができません。
つまり、組織のリーダーに今求められているのは、絶対的な「正解」を当てることではなく、不確実な状況の中で「我々はどこへ向かうべきか」「なぜそれをするのか」という方向性を示し、メンバーが行動を起こすための「納得感」を醸成する力だと言えます。これこそがまさに「センスメイキング」ということなのです。
センスメイキングの定義と、「ロジカルシンキング」との違い
センスメイキングとは、アメリカの組織心理学者カール・ワイクによって提唱された概念です。直訳すると「意味の形成」となりますが、「意味づけ」と言う方がわかりやすいかもしれません。
ビジネスにおいては一般に、「予測困難で正解がわからない状況において、収集した情報から自社にとっての意味を見出し、関係者が納得して行動できる『ありそうなストーリー』を構築するプロセス」という意味で使用されています。
センスメイキングは、よくロジカルシンキング(論理的思考)の対極にある概念として捉えられています。両者を比較してみると、その特徴が見えてきます。
- ロジカルシンキング(論理):客観的な「正解(真実)」を探求し、効率的に目標へ到達するためのスキル。
- センスメイキング(意味づけ):主観的な「納得感(もっともらしさ)」を作り出し、正解がわからない中で未知の領域へ踏み出すためのスキル。
誤解してはならないのは、「ロジカルシンキングが不要になった」わけではないという点です。論理的思考力はビジネスの基礎となる力であり、依然として不可欠ですが、それだけでは人が動かない中で、補完としてセンスメイキングが必要だというわけです。
■今さら聞けない「ロジカルシンキング」まとめ
コラム:なぜ今ロジカルシンキングか?どう学ぶか? >>
組織を動かすセンスメイキングの3つのプロセス
センスメイキングとは、単なる思いつきでストーリーを語ることではありません。ワイクの理論をビジネスの現場に当てはめると、以下の3つのプロセスを繰り返すサイクルとして捉えることができます。
①感知
現場の些細な変化、顧客の反応の違和感、市場の動向などに敏感に気づき、多角的に情報を集めるステップです。リーダー自身がリアルな事象に触れ、「何かが起きている」と認識することから始まります。
②解釈・意味づけ
集めたバラバラの情報を整理し、「これは我々のビジネスにとってどういう意味を持つのか」「自分たちの強みをどう活かせるか」というストーリーを与えます。ここで初めて、混沌とした「何か」に一本の筋が通り、周囲の足並みを揃えることが可能になります。
③行動・定着
構築したストーリーをメンバーに共有して「納得感」を生み出し、実際の行動へと移します。行動の結果として得られた新たな情報をフィードバックし、ストーリーをさらに精緻に修正、定着していきます。
センスメイキングが活きる2つの場面
こうしたセンスメイキングの力は、マネジメントの場においてどのように機能するのでしょうか。代表的な2つの例を紹介します。
場面A:経営ビジョン・全社方針の「翻訳」
経営層が掲げるビジョンや中長期計画は、往々にして抽象的で、現場のメンバーにとっては「自分ごと」として捉えにくいものです。
センスメイキング力のあるリーダーはこうした場合、会社の方針をそのままメンバーに伝えるのではなく、「この方針は、我々の部署のこのプロジェクトにおいて、こういう意味を持つ」と、自分たちのチームの文脈に合わせた翻訳(意味づけ)を行います。これにより、メンバーは日々の業務と全社の目標を結びつけることができ、高い視座を持って行動できるようになります。
場面B:1on1やキャリア面談での「モチベーション喚起」
メンバーが日々の仕事に対してモチベーションを失うことは、組織にとっては損失です。退職にまで至らなくても、必要最低限の業務だけをこなし組織と精神的な距離を置く「静かな退職」と呼ばれる現象もあり、近年は課題として認識されています。
もし、一見地味なルーティンワークに対しても、リーダーが「なぜこの仕事が重要なのか」「これがどうキャリアに繋がるのか」を共に考え、意味づけを行うことができれば、メンバーのエンゲージメントは向上します。センスメイキングは、個人の働きがいを創出する上でも極めて重要な役割を果たすのです。
センスメイキングを構成する3つのポータブルスキル
「ストーリーを語る力」と聞くと、一部の天才的なカリスマリーダーにのみ備わった素質だと思われるかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。センスメイキングは、以下のようなスキルの掛け合わせによって構成されていて、誰もが身に付けることができるものです。
①前提を疑い、多角的に物事を見る「クリティカルシンキング」
センスメイキングの第一歩である「感知」は、環境の変化や現場の違和感に気づくことです。しかし、人間は過去の成功体験や既存のルール(バイアス)に囚われやすいため、新しい変化を無意識に無視してしまう傾向があります。
クリティカルシンキングは、単なる批判的思考ではなく「自分の思考の癖や前提を疑う」スキルです。固定観念を離れることで、現場の微細な変化や矛盾をありのままに感知できます。また、導き出したストーリーが独りよがりになっていないか、客観的かつ多角的に検証するためにも不可欠なスキルです。
■クリティカルシンキングの必要性について論じたコラム
コラム:ビジネスの基礎力「クリティカルシンキング」の身につけ方 >>
②物事の本質を見抜く「コンセプチュアル・スキル(概念化能力)」
コンセプチュアル・スキルとは、目に見える事象の共通点を見つけ出し、「要するにこういうことだ」と抽象化・構造化する力です。混沌とした事象や一見無関係に見える変化の中からパターンを見出し、「我々が目指すべき方向はどこか」という筋が通ったストーリーを見出すには、こうした力が欠かせません。センスメイキングの核となる「解釈・意味づけ」のプロセスを支える能力です。
■コンセプチュアル・スキルについて詳しく知るにはこちら
コラム:コンセプチュアル・スキルをどう高めるか >>
③メンバーの価値観を知り共感を生む「傾聴」
リーダーが提示したストーリーが、一方的な指示ではなく、チーム全体で共有される「納得感のある共通認識」になるためには、リーダーの対話力が求められます。とくに、メンバーの心に響く「意味づけ」を行うには、まずは相手の関心事や価値観を理解している必要がありますが、そのために大きな意味を持つのが傾聴(アクティブリスニング)のスキルです。
■「傾聴」のポイントについてまとめた記事はこちら
1on1やコーチングにも欠かせない「傾聴」について考える >>
■ロールプレイによる実践で傾聴力を鍛える研修プログラム例
傾聴力&質問力強化 >>
誰もが身に付けられるが、急にはできない
データをもとにした「正解」だけならAIが出してくれる今、センスメイキング力はリーダーにとって重要なスキルです。とはいえ、管理職になってから突然「意味づけ」の力を求めても、すぐに実践できるものではありません。
次世代の強い組織を作るためには、こうした「思考法」や「対話の土台」について、早い段階から体系立てて育成していくことが意味を持ちます。若手・中堅時代からクリティカルシンキングやコンセプチュアル・スキルを磨くことが、納得感のあるストーリーで組織を率いることのできる未来のリーダーをつくるのです。
■人を動かす次世代リーダーを育成するには
JMAソリューションでは、センスメイキングの土台となる「コンセプチュアル・スキル」や「対話力」「思考法」の育成について、貴社の課題に合わせてカスタマイズできる講師派遣型研修を提供しています。
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