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公開日 : 更新日 : ミドルシニアのリスキリングを支える「アンラーニング」の技術とは

ミドルシニア社員のリスキリングがうまく行かないとき、そこにはある特有の問題が潜んでいます。本コラムでは、こうした問題を解決するため、日本企業においてまだ十分に取り組まれていない「アンラーニング」の重要性と、豊富な経験を持つベテラン社員が再び変革のパートナーとして輝くためのアプローチについて論じます。

なぜベテラン社員ほど、新しい一歩が踏み出せないのか

「人生100年時代、学び続けなければ生き残れない」といった危機感とともに、日本中でリスキリングへの意識が高まっています。人材育成担当者としても、デジタルツールの研修、英語の再学習、マーケティング講座などさまざまなメニューを用意し、受講を促しているのではないでしょうか。

こうした状況の中で、リスキリングの主役であるはずのベテラン社員の中に戸惑いや迷いが見られるというケースも耳にします。せっかく研修を受けても、なかなか現場の実践に繋がらないケースも少なくないようです。

しかし、こうした事態を単に「本人のやる気の問題」「変化への抵抗」と片付けてしまうのは早計です。彼らがスムーズに変われないのは、決してやる気がないからではなく、これまで会社に貢献してきたという強固な成功体験があり、それが新しいやり方と衝突しているためかもしれないからです。

ミドルシニアのリスキリングにおいては、こうした思考や行動様式を整理し、環境に合わなくなったものについては手放す「アンラーニング」のプロセスについても意識する必要があります。

現代的スキルと過去の価値観の相性が問題

40代・50代の社員は、長年の実務を通じて最適化された価値観を持っています。例えば次のような考え方はその一例と言えるでしょう。

  • 「正解は経験豊富なリーダーが示すもの(上意下達)」
  • 「データも大事だが、最後は対面の熱量と勘所(KKD)」
  • 「プロセスよりも、必達の精神で結果を出す」

こうした価値観は、過去の日本企業の成長を支えてきた極めて優秀なシステムでした。彼らが今の地位にいるのは、こうした価値観のもと成果を上げ、会社に貢献してきた証とも言えます。

しかし、不確実性が高まり、DXが必須となった現代において、こうした価値観の一部が環境と合わなくなってきています。その価値観のまま、スキルだけ「AI活用」や「アジャイル思考」といった最新の知識をインプットしてもうまく行きません。「研修の効果が見えにくい」と感じられるとき、そこで起きている最大の問題は、「OSとアプリの相性の悪さ」のような問題なのかもしれません。

アンラーニングは「否定」ではないと意識せよ

ここで大切にしたいのが、アンラーニングへの向き合い方です。

アンラーニングは、直訳すると「学習棄却」となりますが、これは「過去の経験をすべて捨てる」「自分がやってきたことを否定する」ということではありません。環境の変化に合わせて既存の知識や価値観を選別し、「時代に合わなくなった部分だけを手放し、新しいものに入れ替えること」です。

ベテラン社員にとって、過去の経験はアイデンティティそのものです。「今までのやり方は古いから捨ててください」と言われれば、誰しもよい気はしないはずです。

そうではなく、「過去の経験は素晴らしい資産だが、最新のスキルをスムーズに受け入れるために、一部の設定を書き換える必要がある」と認識すること、つまり、否定ではなく、あくまでアップデート(自己変革)であるという認識が、安心感に繋がります。

■アンラーニングついて詳しく解説したコラムはこちら
学んだことを捨てる?「アンラーニング」が必要な理由>>

「成功のパラドックス」を乗り越えるために必要なこと

とはいえ、長年染み付いた習慣を変えることは、誰にとっても容易ではありません。特に、過去に大きな成果を上げた優秀な社員ほど、アンラーニングが難しくなる「成功のパラドックス」が存在します。

例えば、かつて「足で稼ぐ営業」で実績を上げてきた部長がいるとします。その人に対し、「これからはデータを見て、効率的にアプローチしてください」と伝えても、頭では理解できるが行動にまでは落とし込めないといったことがあります。無意識のうちに、「最後はやっぱり対面で熱意を伝えるのが一番だ」「データよりも自分の肌感覚が正しい」という成功体験が、新しい行動へのブレーキになってしまうのです。

社員のアンラーニングを進めるには、こうした状態を個人の柔軟性の問題にするのではなく、組織として「アンラーニングを促す場」を設計し、支援することを考えましょう。

アンラーニングの具体的な手法—キャリアデザインの意義

アンラーニングの支援として有効なのは、それぞれのスキル研修の前に「キャリアの棚卸し」を行うことです。

1.価値観の客観視(メタ認知)

まず、自分が大切にしている「勝ちパターン(価値観)」を言語化します。「なぜ自分はそのやり方を選んできたのか?」「その方法は、今の市場環境でも最善か?」を、否定することなく問い直すのがポイントです。

2.「手放す不安」に寄り添う環境づくり

慣れ親しんだやり方を変えることは、一時的に初心者に戻るような不安を伴います。組織として、個人が感じるこうした不安を受け止め、「一時的に生産性が落ちても、新しいやり方を試す価値がある」と認める環境を整備することが重要です。

3.「Will(ありたい姿)」の再設定

「会社から言われたから(Must)」ではなく、本人が「残りのキャリアで何を成し遂げたいか(Will)」に焦点を当てます。「部下を輝かせるメンターになりたい」「新しい技術を使って、もう一花咲かせたい」といった内発的な動機が見つかれば、ベテラン社員の経験値は新しいスキルを習得する強力な土台へと変わるでしょう。

■キャリアの棚卸しにおすすめの研修プログラムはこちら
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■「内発的動機」のメリットについて詳しく解説したコラムはこちら
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アンラーニングでミドルシニアの経験が資産に変わる

変化に適応できないミドルシニア社員に対し、厳しい視線が向けられることもあるかもしれません。しかし彼らの中には、長年培ってきた業界知識、人脈、そして幾多の修羅場を乗り越えてきたレジリエンス(回復力)という、若手にはない貴重な資産が眠っています。アンラーニングを通じて価値観さえアップデートできれば、その資産はデジタルという武器と掛け合わされ、組織を支える戦力となるはずです。

リスキリングを進めるための第一歩は、新しい知識を詰め込むことではなく、社員が自分のこれまでの歩みを肯定しつつ、身軽になる手助けをすることから。このように意識してみることで、多くの人がより実効性のあるリスキリングに向かうことができれば幸いです。

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