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リーダーシップの歴史から、今あるべきリーダーの姿を考える

公開日:2024/04/26 更新日:2024/04/26

「リーダーシップをどう育むか」は、時代や組織を問わず常に大きな課題として捉えられてきました。本稿では、こうしたリーダーシップ理論の歴史を振り返り、あるべきリーダーシップのスタイルについて考えるヒントを探ります。

リーダーシップ理論とは何か?

そもそも「リーダーシップ」とは、チームの中で共通の課題や目標を明確にし、他人や組織を導くスキルのことであり、いつの時代にも求められてきた資質です。

リーダーシップ理論の歴史は非常に古く、広い意味では古代ギリシャの哲学者プラトンや、中国春秋時代の兵法家である孫子なども、国を治めるリーダーの資質に言及する形でリーダーシップに触れています。

現代のリーダーシップにつながる理論についても、古くは1800年代まで遡ると言われています。しかし、リーダーシップに絶対的な解は存在せず、さまざまな理論が提唱され、時代や環境の変化によって形を変えてきました。そして今もなお、リーダーシップ理論の研究は続けられています。

リーダーシップ理論の変遷

これまでに研究されてきたリーダーシップ理論にはどようなものがあるか、その歴史を振り返ってみましょう。

(1)特性理論(1800年代〜1940年代)

リーダーの個人的な資質や特性に着目し、「優れたリーダーは生まれつきリーダーにふさわしい資質を持っている」と考える理論です。英国の歴史家、トーマス・カーライルが自著『リーダーシップ偉人説』の中で「優れた資質を持つ偉人だけがリーダーとなり得る」と説いたことから一般に広まったと言われ、代表的な理論として、アメリカの心理学者、ストックディルが優れたリーダーの特性をまとめた「ストッグディルの特性論」が挙げられます。

その後、リーダーシップを資質や特性だけで語ることに限界が生じ、特性理論は主流ではなくなっていきますが、今でもリーダーシップ理論の基本と考えられています。また、「個々の特性を活かしてリーダーシップを開発する」という発想のもと、「ストレングス・ファインダー」や「ビッグファイブ理論」などのツールが開発され、現在も活用されています。

【関連URL】ウェビナーレポート:ストレングス・ファインダーを用いた“強み”を活かしたマネジメントとは

(2)行動理論(1940年代〜1960年代)

リーダーシップを生まれ持った特性ではなく、「どんな行動を取るか」に着目して説明しようとする理論です。優れたリーダーとそうではない人の行動を比較し、リーダーの行動を分析研究することで、優れたリーダーを作り上げようとする考え方とも言えます。

 代表的な理論としては日本の社会心理学者 三隅二不二氏が提唱した「PM理論」があります。PM理論では、Performance=集団の目的達成や課題解決に関する行動と、Maintenance=集団の維持を目的とする行動とを2軸のマトリクスで類型化して捉えます。詳しくは、下記のページで紹介しています。

【関連URL】PM理論で捉えるリーダーシップと組織づくり

ただ、現在の社会環境においては、行動理論は「リーダーであるための必須条件」とは言えても、それだけでうまくいくとは考えられていません。社会がより複雑化し、置かれた環境によって取るべき行動も変わるからです。

(3)条件適合理論(1960年代〜)

個人の特性や行動だけではなく、集団が置かれた状況や条件に着目した理論です。この理論では、「求められるリーダーシップは外的要因にも左右される」と考え、いかなる状況下でも普遍的に優秀なリーダーというものは存在せず、「優秀なリーダーは条件や条件によって違う」と考えます。 

「集団が置かれた環境」と「部下の性格や能力」を掛け合わせて有効なリーダーの行動が決まることを示した「パス・ゴール理論」や、メンバーの発達度に注目する「シチュエ―ショナル・リーダーシップ理論(SL理論)」などがこれにあたります。

【関連URL】シチュエーショナル・リーダーシップ理論(SL理論)

(4)リーダーシップ交換・交流理論(1970年代〜)

それまでのリーダーシップ理論がリーダーにだけ着目したものだったのに対し、ともにチームを形成する「フォロワー」との相互関係がもたらす影響に着目した理論です。フォロワーのあり方もリーダーシップに影響すると考え、リーダー・フォロワーの間で行われるどのようなやりとりがリーダーシップ発現に有効かを考えます。

 フォロワーからの信頼獲得によってリーダーシップの有効性が決まる「信頼性蓄積理論」や、「リーダーとメンバーの関係は報酬の交換で成立する」ととするLMX理論(リーダー・メンバー・エクスチェンジ理論)はこうした理論の代表的なものと言えるでしょう。

(5)変革型リーダーシップ(トランスフォーメーショナルリーダーシップ)理論(1980年代〜)

組織が変革を目指す際に必要なリーダーシップは何かを考える中から生まれた理論です。変革型リーダーであるためには、明確なビジョンとそれを伝えるカリスマ性、メンバーに知的刺激を与えるプレゼンテーション力などの資質が必要であるとされています。

(6)倫理型リーダーシップ理論(1980年代〜)

「リーダーとはどういう存在であるべきなのか」に着目した理論です。従来の支配的なリーダーとは異なり、倫理観に軸足を置くことが特徴です。リーダーがメンバーに奉仕し支援する「サーバント・リーダーシップ」や、高い倫理観や道徳観を持ってメンバーを導く「オーセンティック・リーダーシップ」が含まれます。

【関連URL】
今「オーセンティック・リーダーシップ」が注目される理由
サーバント・リーダーシップとは何か?必要なスキルや行動とは?

(7)その他のリーダーシップ

これまでのリーダーシップ理論が、基本的に「組織を率いる人」に注目しているのに対し、最近では、メンバー一人ひとりがリーダーシップを発揮する「「シェアード・リーダーシップ」という考え方も生まれています。リーダーがメンバーを率いるという意味で「垂直型」と呼ばれる従来のリーダーシップと異なり、「水平型」のリーダーシップとも呼ばれます。

【関連URL】組織を活性化し、若手を育てる【シェアード・リーダーシップ】の導入メリット

おわりに

ここまで見てきたように、リーダーシップ研究の歴史は長く、その内容も時代によってさまざまに変遷してきました。しかし、古い理論が誤っているというわけではなく、組織の特性や置かれた状況によって、取り入れるべき考え方が異なると言うこともできます。重要なのは、それぞれの組織のあるべきリーダーシップは何かを考えること。今回の内容がそのきっかけとなれば幸いです。