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【シリーズ:変革リーダー育成のススメ】
第3回 企業変革に必要な2種類の変革リーダーと具体的な育成方法

公開日:2024/02/20 更新日:2024/02/20

本シリーズではここまで、企業を変革するにはどのような人材が必要か、また、そのような人材を育成するにはどのようなプロセスが有効かをご紹介してきました。本稿では、企業における変革を2種類に分け、それぞれの変革を牽引する人材の具体的な育成イメージをご紹介します。

1回:変革が求められる今、必要な人材/育成の考え方
第2回:変革リーダーをどう育成するのか?アセスメントの重要性

2種類の変革とそれに必要な力とはどのようなものか?  

「企業の変革」と言うと、「事業の変革」のイメージが強いかもしれませんが、それだけが変革ではありません。部門・職場などを望ましい形に変革し、最大限にポテンシャルを引き出す「部門の変革」もまた、重要な変革の一つです。

このように、変革を2種類と捉え、それぞれの変革を実行するために必要な力を整理すると下図のようなことが言えます。

いずれの変革についても、それぞれに適したアセスメントを実施することで個人の現状を把握し、結果に合わせた育成を行うことで、より効率よく変革牽引人材を育成することができます。

 「事業の変革」力=戦略思考力を育成するには? 

企業・事業の変革を断行するためには、事業のシナリオを考え、戦略を立て、周囲を巻き込んで牽引していく力が必要です。 

JMAではこうした力を「戦略思考力」と名付け、その要素を大きく「戦略的マインド」と「戦略的スキル」に分けて整理しました。これらの「マインド」と「スキル」を養うことで、戦略思考力を持ち、事業の変革を牽引する人材を育成することができます。

戦略的なマインド(意識・姿勢)

  • 大局将来志向…物事を局所的ではなく大局的に全体から将来を捉えようとしている
  • 多様検証志向…さまざまな事象を単一的な視点ではなく、多様な視点から検証しようとしている
  • ゼロベース志向…過去や現在からの延長線上ではなく、ゼロベースで思考しようとしている
  • 不確実受容志向…既に明らかになっている確実なことではなく、不確実な将来を受け入れようとしている
  • 論理仮説志向…論理的に仮説を構築し、仮設に基づいた行動をとろうとしている
  • リスク受容志向…リスクへの対応策を考え、かつ、残されたリスクを受け入れた上で行動しようとしている

戦略的な思考スキル(考える力)

  • ビジョン思考…将来、達成したい状態や目標を自ら考え出し、他者へ伝えることができ・る多面思考…物事を多様な角度から見て考え、検証することができる
  • 非連続発想…過去の成功体験や既定路線に左右されず、非連続的に発想することができる
  • 仮説思考…見えないことに対して適切な仮説を構築することができる
  • シナリオ構想…目標を達成するためのシナリオやストーリーを論理的に組み立てることができる
  • 意思決定…多様な方向や方法の中から、自身がとるべき方法を適切に決めることができる

【関連URL】コラム:「戦略思考」で組織を強くする

育成対象者がどの程度こうしたマインドやスキルを持つかについては、事前にアセスメントで測定することでき、育成のためにどのようなアプローチが必要かが自然と明らかになります。たとえば、下記のような育成パターンが考えられるでしょう。

例1:マインドはそれなりにあるが、スキルが低い「脳内戦略家」の場合

  • 戦略思考フレーム知識のインプット、机上での戦略思考の反復トレーニング、戦略的思考が必要な立場への登用など

例2:すでに高いスキルを持っているがマインドは低い「休業中の戦略家」の場合

  • 業務転換や異動、裁量範囲の拡大などで戦略的マインドの覚醒を促す


【関連URL】戦略思考力強化シリーズ

「部門の変革」力=部門マネジメント力を育成するには?

部門・職場の変革には、当該部門が目的を果たすためのマネジメント能力が求められます。こうした能力について、「部門の課題を解決する力」と「人と組織を活かす力」に分けて見ていきましょう。

1)部門課題解決力

部門の課題を解決する力は、構想策定力(考える力)と、実行完遂力(やりとげる力)に分解することができます。

構想策定力
  • 全体最適志向…部門最適ではなく組織全体最適を踏まえて自部門の役割を認識しようとする
  • 将来変革志向…現状最適ではなく組織の将来像を踏まえた上で将来に向けて部門を変革しようとする
  • 現状認識力…自部門の強みや弱みを様々な観点から的確に認識することができる
  • 多面課題設定力…部門の目指す姿を実現するための課題を網羅的に考え樹ぅ添加代を特定することができる
  • ゼロベース発想力…課題解決のための対策を、自由にゼロベースから発想できる
  • シナリオ策定力…対策を実行し課題を解決するための成功シナリオを論理的に策定できる 
実行完遂力
  • 実行完遂意欲…部門の将来に向けた課題解決を完遂しようとする強い意志がある
  • 障壁突破力…課題を解決するための様々な障壁を乗り越え確実にやりきることができる
  • 失敗受容思考…失敗を受容した上で成功のための前向きな学習の機会ととらえる
  • 方針転換力…自身の方針の過ちを素直に認め柔軟かつスピーディに方針を変換することができる
  • やりきり力…設定した課題に対して中途半端にせず、最後までやりきることができる
  • 維持定着力…変革前に戻ることなく維持定着させることができる

こうした力をアセスメントで測定することで、たとえば次のような個別のアプローチが可能になります。

例1 :構想策定力は高いが実行完遂力が低い「構想倒れ型」の場合

改革プロジェクトリーダーへの登用など変革を実践する場を与える

例2 :構想策定威力、実行完遂力とも低い「暗中模索型」の場合

まずロジカルシンキング、シナリオプランニングなど、多面的・論理的な発想スキルを学んでもらう

2)部門の人と組織を活かす力

人と組織を活かす力は、「個を活かす力」と「チームを形成し牽引する力」に分けて捉えることができます。

個を活かす力
  • 多様性尊重志向…自身の考えを押しつけるのではなく関係者の考えや価値観を尊重する
  • 分担委任力…部下や関係者の能力を踏まえて適材適所に仕事を任せる
  • 相互対話力…様々な場面で部下や関係者と適切に相互対話できる
  • 動機引出し力…様々な方法で関係者の内発的なやる気を引き出すことができる
  • 適正評価力…部下や関係者の行動やその結果を構成に評価・フィードバックできる
  • 部下育成力…部下を適切に育成し能力を引き出すことができる
チームを形成し牽引する力
  • 組織牽引意欲…自らが主体となって組織を牽引しようとする強い意欲を持っている
  • 共感醸成力…組織の目指す姿に対して構成員の共感を醸成し、同じ方向へ向かわせることができる
  • 秩序形成力…組織内の規律や秩序を形成して適切な組織行動を生み出すことができる
  • 葛藤解消力…部門内および部門間でコンフリクトが発生したときに適切に解決できる
  • 自己開示力…自己開示によってチームの心理的安全な場を構築できる
  • 自己統制力…自分自身を統制し自身が変革成長し続けることができる

上記のような能力を測定することで、次のような育成プランを立てることができるでしょう。

例1 :個を活かす能力は高いがチームを形成し牽引する能力が低い「個人偏重型」の場合

チーム単位での改革プロジェクトの推進等を通じてリーダーシップを養う

例2 :チームを形成し牽引する能力は高いが個を活かす能力が低い「個人軽視型」の場合

シーン別のコーチングアプローチ50本マラソンを実施。コーチングトレーニングを積む

知識だけではない、生きた変革牽引力を目指して

ひと口に「変革牽引人材の育成」と言っても、どの部分に変革が必要なのかは企業によって異なるため、育成すべき人材像も異なります。さらに、対象となる人材が現在どのような状態にあるかによって、育成の内容や手法も様々であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

JMAの提供する「変革リーダー育成」関連プログラムでは、以下のようなことが可能です。

独自のノウハウによる「アセスメント」で現状の詳細な分析が可能

面談などのセッティングは不要でありながら、質問項目の工夫や記述回答の多さ、記述された内容を分析するノウハウにより、企業ごと、対象者ごとの課題を抽出。最適な育成メニューを組み立てることができます。

実践の場においても講師がメールによるアドバイスなどの「サポート」を実施

本当の意味で力をつけるには、学んだことの実践が欠かせませんが、社内でそのためのサポート体制を作るのは難しいものです。講師がサポート役として伴走することで、対象者が実務の中で限界を突破する経験を積み、生きた実力を身につける助けとなります。

 

「第2回:どう育成するのか?アセスメントの重要性 」でもご紹介したように、現代のあるべき人材開発とは、「個人の現状・キャリアに合わせ」「育成の全体像を設計して行う」人材開発です。変革に向けた人材育成に課題を感じているようであれば、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。

関連リンク

シリーズ:変革リーダー育成のススメ

▶第1回:変革が求められる今、必要な人材育成の考え方
▶第2回:変革リーダーをどう育成するのか?アセスメントの重要性