- TOP
- コラム
- 成果に繋げる研修の活用
- 『2024年度新入社員意識調査』から考える、若手育成・定着に向けた研修施策
公開日 : 更新日 : 『2024年度新入社員意識調査』から考える、若手育成・定着に向けた研修施策
一般社団法人日本能率協会(以下JMA)では、人材マネジメントやものづくりに関する各種調査を定期的に実施しています。本コラムでは、2024年4月に実施した『2024年度新入社員意識調査』の結果をもとに、「Z世代」と呼ばれる今どきの新入社員の考え方や求めるものを確認し、人材育成、研修企画の観点からどのような対応ができるかを考えます。
『2024年度新入社員意識調査』とは
『新入社員意識調査』は、JMAが提供する新入社員向け公開教育セミナーの参加者を対象に、仕事や働くことに対しどのような意識を持っているかを尋ねる調査です。ここでは、2024年4月に実施した最新の調査結果から、いくつかのテーマに分けて、今どきの新入社員のキャラクターを捉え、それに向けた施策を考えていきます。
理想の上司は「ちゃんと指導してくれる」伴走者
Q.「あなたが理想的だと思うのはどのような上司や先輩ですか」
1位「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」 25.5%
2位「仕事の結果に対するねぎらい・褒め言葉を忘れない上司・先輩」 10.9%
3位「部下の意見・要望を傾聴する上司・先輩」 10.8%
Q.「意欲や能力を高めるために、上司や人事へ期待することは何ですか」
1位「成長や力量に対する定期的なフィードバック」 22.0%
2位「ワークライフバランスをとれる柔軟な働き方ができる環境づくり」 17.4%、
3位「キャリアや価値観・強み/弱みについての定期的な話し合い」 17.3%
Qこれから仕事をしていく上で、どのようなことに不安がありますか」
1位「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」 23.2%
2位「仕事に対する現在の自分の能力・スキル」 20.3%
3位「仕事での失敗やミス」 10.4%
※すべて複数回答の上位3つを合算した値
上司に求めているのは「放任」よりも「しっかりと教えてくれる」こと。本人の意思を尊重するつもりが不安にさせていた、ということのないように気をつける必要がありそうです。「ねぎらい・褒め言葉」などポジティブなフィードバックも、「見てくれている」という安心感につながるのかもしれません。
「定期的なフィードバック」や「キャリアや価値観・強み/弱みについての定期的な話し合い」を求める結果からは、成長を実感できる環境を望み、具体的な評価やアドバイスによって軌道修正しながらスキルアップしていきたいと考える新入社員の様子がうかがえます。仕事そのものをうまくこなせるかどうかより、「職場の人とうまくやれるか」を不安に感じている点も特徴的。上司には「話しやすさ」や「相談しやすさ」が求められていると言えそうです。
つまり、新入社員にとって理想の上司とは「成長を支える伴走者のような存在」と言えるでしょう。迎える側は、一人ひとりの個性に合わせ、細やかな指導とポジティブなフィードバックを行い、成長を支援していくスキルを身に付ける必要があります。たとえば下記のようなテーマでの研修が役に立つでしょう。
<関連記事>
部下のタイプ別にスタイルを変えるリーダーシップのあり方について解説
コラム:シチュエーショナル・リーダーシップ理論(SL理論)>>
ポジティブなフィードバックを行うためのスキルが身につく
研修:「1on1ミーティング」に学ぶ、効果的な フィードバック実践>>
教わる側に基礎的な知識やスキルがない場合に有効な「ティーチング」と、本人から能力を引き出す「コーチング」を織り交ぜて学べる
相手が話しやすくなり、良質な人間関係を構築するために役立つコミュニケーションスキルを学ぶ
したくないのは挑戦ではなく、成長が実感できない苦労
Q.「若いうちは自ら進んで苦労するぐらいの気持ちがなくてはならない」と思いますか。
1位「進んで苦労すべきだ」 41.8%
2位「好んで苦労する必要はない」 36.8%
3位「どちらともいえない」 21.4%
※単一回答
Q.あなた自身の仕事・働き方に対する考えはAとBのどちらに近いですか。
A「苦労は多いが、確実にスキルアップできる職場」に近い 66.0%。
B「苦労は少ないが、スキルアップは自身の努力による職場」に近い 34.0%
「進んで苦労すべき」と「好んで苦労する必要はない」は分かれる形となり、チャレンジ意欲については二極化傾向が見られました。しかし、「仕事・働き方に関する考え」についての結果からは、苦労がスキルアップに繋がる努力や経験だと感じられる場合には、より多くの新入社員が苦労(努力・経験)をいとわないことも見て取れます。
なお、属性別に見ると、高校卒群(高校卒業者)と高校卒外群(高専・専門・短大、大学、大学院卒、その他)では高校卒外群のほうが、男性と女性では男性のほうが「進んで苦労すべきだ」と回答する傾向も見られました。
こうした結果からは、「新入社員には優しく接すればよい」というわけではないことも読み取れます。本人が「ぬるい」「甘い」と感じるような接し方はむしろマイナスで、「成長できる」と感じられる指導が求められていると捉えるべきでしょう。
<関連記事>
流行語となった「ホワハラ」から、若手社員へのあるべき接し方を考える
新入社員、若手社員が求める「ほめ方・しかり方」のスキルが身に付く
定着に大きく関わる「職場の人間関係」
Q.これから仕事をしていく上で、どのようなことに不安がありますか。(再掲)
1位「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」 23.2%
2位「仕事に対する現在の自分の能力・スキル」 20.3%
3位「仕事での失敗やミス 10.4%
※複数回答の上位3つを合算した値
Q.以下のシチュエーションに遭遇した際に、どの程度転職したいと思いますか。
1位「職場の人間関係が悪いとき」 15.7%
2位「社風や企業文化が自分に合わないと感じたとき」 14.3%
3位「会社の将来性が見込めなくなったとき」 13.9%
※「そう思う」「どちらかと言えば、そう思う」を選択した人
新入社員は、仕事そのものに関すること以上に職場の人間関係に不安を感じていることが明らかになりました。また、職場の人間関係の悪化は新入社員が転職を考える最大の理由にもなるなど、職場の雰囲気が新入社員の定着率に大きく関わっていることが分かります。
とはいえ、「よい雰囲気」が「甘い」という意味ではないことはこれまでの結果からも明らかです。話がしやすく、協力し合える職場づくりのために役立つ以下のようなテーマについて学んでおくのもよいかもしれません。
<関連記事>
「心理的安全性」の高い職場とはどのような職場かを、よくある誤解も含めて解説
コラム:チームにもたらすメリットは大。「心理的安全性」のためにできること>>
職場のコミュニケーションを円滑にするための考え方や具体的な手法を紹介
コラム:社内コミュニケーションの活性化に役立つ施策と研修のポイント>>
人をいくつかのタイプに分けて分析するアセスメントツール「DiSC(R)診断」を、職場での意思疎通をスムーズにするツールとして紹介
コラム:リモートワーク時代のコミュニケーション向上にも!「DiSC(R)診断」を学ぶ>>
研修を通じてチームビルディングを行う手法を、実施例を交えて解説する
コラム:階層別研修事例とともに理解する「チームビルディング」のための学び>>
キャリアイメージは短期的。定着には支援も必要?
Q.あなたは現時点において、将来のキャリアイメージを描いていますか。
「将来のキャリアイメージを描いている」 61.0%
(「描いている」「どちらかと言えば描いている」を選択した人)
Q.何年先までのキャリアイメージを描いていますか。
3年後まで 20.8%
5年後まで 33.3%
10年後まで 32.8%
「キャリアイメージを描いている」が6割を占めるという結果は、新入社員の多くが「何となくでも将来の方向性を考えている」ことを示しています。ただし、それが何年先までのイメージかといえば、「5年後まで」が過半数と短期的なイメージが中心であることが分かります。
短期的な目標にばかり目が向いていると、「目の前の経験に意義が感じられない」などの理由で離職につながってしまうかもしれません。新入社員が長期的なビジョンを持てるようになるためには、企業側が魅力的なキャリアパスを提示し、サポートしていくことも重要。そのためには、実際にキャリアデザインに取り組んでみる研修も有効です。
<関連記事>
「キャリアデザイン」とは何をすることなのかを解説し、研修を行う意義を紹介
コラム:自律型人材への成長を促す「キャリアデザイン研修」>>
ワークショップ形式で実際に自らキャリアデザインに取り組む研修の例
まとめ
調査からは、自主性にはやや欠けるものの、成長意欲はあり、そのための努力であればいとわない2024年の新入社員の姿が浮き彫りになりました。若手社員に不安なく、目標を持って働いてもらうためには、彼ら自身への研修はもちろん、周囲がスキルを高めることも有効です。ここでご紹介したようなテーマを参考に、上司、先輩世代も含めた育成プランを検討してみてはいかがでしょうか。
<その他関連記事>