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公開日 : 更新日 : 「キャリア研修で離職が増える」は本当? 優秀な人材を惹きつけるリテンションとしてのキャリア開発
「従業員にキャリア自律を促すと、今の会社に見切りをつけて辞めてしまうのではないか」——。キャリア開発の重要性が叫ばれる一方で、このような不安を感じる経営者も少なくありません。現代の労働市場において、その不安は半分正解であり、半分は誤解です。本記事では、キャリア研修が離職の引き金になってしまうケースと、逆に優秀な人材を惹きつけるリテンション(引き留め)施策となる場合に働くメカニズム、そして離職を防ぐ具体的な研修設計のポイントを解説します。

「キャリア自律を促すと辞めてしまう」という不安を克服すべき理由
「わざわざ研修で自分のキャリアについて深く考えさせたら、『この会社には自分の本当にやりたいことがない』と気づき、転職のきっかけを与えてしまうのではないか?」
人事担当者や経営層の方々の中に、こうした疑問を抱く人がいても無理はないかもしれません。終身雇用が当たり前だった時代には、従業員には「会社の用意したレール」に乗ってもらうことが前提であり、企業側があえて外の世界を見せるような発想はあまりなかったからです。
では、「キャリア研修を実施すると離職が増える」という考えは本当なのでしょうか。
結論から言えば、「やり方を間違えれば離職が増える恐れはある」が、「正しく行えばむしろ離職防止になる」というのが実態です。半分は本当、半分は嘘というわけです。
それとは別に重要なのが、現代においては「キャリア開発を支援しないこと」もまた、重大な離職リスクになり得るということです。変化の激しい時代において、将来的なキャリアの不透明さは従業員にとって最大の不安要素。さらに、転職への心理的ハードルが大きく下がっている今、「この会社にいても将来が見えない」と感じさせれば早々に見限られてしまいます。その前に、企業側が考えをアップデートし、キャリア開発を「流出」ではなく「定着」の武器として活用していく必要があると言えるでしょう。
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30代・中堅社員の離職を防ぐ「成長実感」の作り方—キャリアの停滞感を払拭するポイントは? >>
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なぜキャリア研修が「離職防止」に繋がるのか?
では、個人の自律を支援することがなぜリテンション(離職防止)に繋がるのでしょうか。そこには大きく3つの理由があります。
① 「成長が止まる不安」を取り除くことができる
優秀な人材が会社を去る最大の理由は、人間関係や給与への不満以上に「ここではもう成長できない、自身の市場価値が上がらない」という停滞感にあります。一方、企業によるキャリア開発とは本来、従業員自身の市場価値をどう高めるかを共に考えるプロセスです。企業側が従業員のキャリア開発を真剣に支援する姿勢を見せることは、「うちの会社にいれば成長できる、あなたの市場価値を高めることができる」というメッセージとなり得ます。
② 「外」に向いていた目を「社内」へ向け直すことができる
隣の芝生は青く見えるもので、業務に追われ、自らのキャリアに漠然とした悩みを抱える従業員は解決策を社外に求めがちです。しかし、キャリア研修等の機会を通じて自社の多様なポジション、部署間の役割、あるいは社内公募などの制度を知ることができれば、「わざわざリスクを取って転職しなくても、今の会社の仕組みを使えば希望が叶うのではないか」という気づきにつながります。外へ向きかけていた視点を、社内でのキャリアチェンジやステップアップへと誘導できるのです。
③ 「個人のベクトル」と「会社のベクトル」の交点が見つかる
人は、「個人のやりたいこと・ありたい姿(Will)」と、「会社が目指す方向性・任せたい仕事(Must)」が重なっているとき、最も高いモチベーションを発揮します。キャリア開発とは、単に個人の夢を語らせることではなく、両者の交点を意図的に見つけ出し、今の仕事に対する納得感やエンゲージメントを高めるための作業です。個人と企業の重なり合いが見つかれば、従業員は自発的に今の環境で成果を出そうとするでしょう。
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離職を防ぐキャリア研修に不可欠な3つのポイント
キャリア研修は前述の通り、設計を間違えれば離職のトリガーにもなり得ます。キャリア研修の場で行うことを単なる「夢語り」で終わらせず、自社での成果につなげさせるには、研修内に以下のような仕掛けを組み込むことがポイントとなります。
① 「ジョブ・クラフティング」の導入
研修で「将来の夢」や「本当にやりたいこと」ばかりを考えすぎると、「今の地味な業務は、私の本当の仕事ではない」と思い込んでしまう、いわゆる「青い鳥症候群」を誘発します。
これを防ぐためには、「今の目の前にある地味な業務」が、自分のありたい姿や中長期的なスキルアップにどう繋がっているのかを考えることが有効です。このように、自ら仕事の価値を再定義する手法を「ジョブ・クラフティング」と呼びます。「今の泥臭い仕事も、将来の自分のキャリアの役に立つ」と気づかせることで、足元の業務への意欲も高まるでしょう。
② 「Will(やりたいこと)」と「Must(会社からの期待)」をぶつける
個人の希望だけをもとに話を進めると、その通りにならなかったとき「会社が対応してくれなかった」という悪印象になりかねません。研修では必ず、「会社や部署が今、あなたに何を期待しているか(Must)」という現実に直面させるプロセスを設けましょう。その上で、「あなたのWillを満たすために、会社のMustをどう利用して成果を出すか」という、Win-Winのシナリオを描いてもらうのが重要です。「会社を自分のキャリアアップのプラットフォームとして利用する」という合理的な視点を持たせることが、自社への定着を生み出します。
■キャリアデザイン研修を行う際のポイントをまとめた記事はこちら
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③ 多様な「社内ロールモデル」の提示
「キャリア=出世して管理職になること」という画一的なモデルしか提示できないと、そうしたモデルへの意欲を持たない層は「この会社に自分の居場所はない」と判断します。
重要なのは、管理職としてマネジメントを担う人だけでなく、専門性を極めているスペシャリスト、社内異動で全く新しい職種に挑戦した人、育児や介護と両立しながらマイペースに貢献している人など、自社内の多様なリアルなロールモデルを示すことです。「この会社でも、こういう多様な生き方や働き方ができるのか」という具体的なイメージが生まれれば、社内に留まる強い動機となります。
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キャリア開発に客観的な視点を取り入れることの意義
ここまでお伝えしてきたことは、「従業員が自律的にキャリアを考えた結果、自社を選び取ってもらうための試み」だと言うこともできます。「会社が個人の面倒を見る」といったかつての依存関係ではなく、会社と個人が対等に選び合うことは、双方にとって大きなメリットがあるはずです。
とはいえ、「会社のMust(期待)」や「今の業務の価値」を社内の人事が直接語ると、どうしても「会社都合の押し付け」や「引き留めのための建前」として受け取られかねない難しさもあります。こうした場面では、客観的な市場動向や他社事例を持つ外部の専門機関をファシリテーターとして活用することも一つの有効な手立てです。利害関係のない第三者が介在することで、従業員はフラットな目線で自己と会社を振り返ることができるでしょう。
「キャリア開発=離職リスク」という固定観念を捨て、優秀な人材に選ばれ続けるためのリテンション戦略として、自社のキャリア支援のあり方を一度見直してみてはいかがでしょうか。JMAでも、そのようなご相談からお話をお聞きしています。



