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公開日 : 更新日 : 「キャリア研修の効果が出ない」に効く4つの点検項目と解決法

「社員の自律を促すためにキャリア研修を実施したものの、職場に戻ると元の状態に戻ってしまう」「せっかく高まったモチベーションが日々の業務に活かされない」……多くの企業が抱えるこうした悩みは、実は研修プログラム自体の問題ではなく、社員を受け入れる「現場の環境」や「人事制度」に原因があることが多いものです。本コラムでは、キャリア開発を阻む4つの構造的課題を浮き彫りにし、研修を「点」で終わらせず、組織の成長という「線」へ繋げるための具体的な解決策を示します。

「キャリア研修の効果が出ない」に効く4つの点検項目と解決法

研修という「点」の施策がうまくいかない理由

近年、多くの企業が従業員のキャリア自律を求めて研修を導入しています。自己分析を行ったり、中長期的なビジョンを描いたりすることで、研修の場では「明日から新しいスキルを身につけて頑張ろう」という前向きな空気が醸成され、満足度も高いものとなるかもしれません。

しかし、そうした熱量は数週間もすれば冷めていき、気がつけば元の日常に逆戻りしてしまうケースも後を絶ちません。最大の理由は、研修という「点」の施策だけで従業員の意識を変えようとしていることにあります。せっかく芽生えた意欲も、翌日出社する職場のマネジメントや、会社の人事制度という「システム」が従来通りであれば、簡単に元に戻ってしまうというわけです。

つまり、キャリア開発を真に根付かせるためには、本人の意識改革と同時に、その意欲を受け止める「社内の環境づくり」が不可欠だと言えるでしょう。ここからは、キャリア開発を阻害する代表的な4つの課題と、その解決策を見ていきます。

キャリア開発を阻む4つの問題と解決策

① 現場の上司が「最大の壁」になる問題

【起きていること】
研修で「新しいスキルを磨きたい」という目標を見つけた従業員が職場に戻っても、直属の上司が「そんなことより今月の目標を達成しろ」「異動されたら現場が回らない」という態度をとった瞬間、意欲は削がれてしまいます。上司がプレイングマネージャーとして多忙を極め、部下のキャリアに寄り添う余裕がない場合、上司自身が無自覚のうちにキャリア自律の「最大のストッパー」になってしまうというわけです。

【解決策】
キャリア研修を受けた従業員とは別に、現場のマネージャー層の意識改革とスキル付与(1on1やコーチングなど)も行う必要があります。さらに踏み込むなら、マネージャーの評価指標に「優秀な人材の育成と輩出」を組み込むのもよいでしょう。「自分の部署に部下を囲い込む」のではなく、「部下のキャリアを後押しし、他部署へ送り出した上司が高く評価される」仕組みがあれば、上司が部下のキャリア自律を応援するほうに働くはずです。

■上司側の1on1スキルを上げるためのプログラム例はこちら
研修例:「1on1ミーティング」に学ぶ、効果的なフィードバック実践

■研修内容を定着させるために必要な上司の関わり方についても紹介した記事
研修を120%活用するために[研修後]編①学んだ内容を定着させるアクション

② ビジョンを描かせたのに「社内に受け皿がない」問題

【起きていること】
研修を通じて「この領域で専門性を発揮したい」と明確なビジョンを持ったにもかかわらず、いざ社内を見渡すと、自らの意思で異動に挑戦できる制度が存在しないケースがあります。せっかく火がついた意欲の行き場がなくなり、「この会社では自分のキャリアは叶わない」と見切りをつけられ、皮肉にも研修が離職の引き金になってしまいます。

【解決策】
自ら新たなポジションに挑戦できる「社内公募制度(社内FA制度)」の導入など、人材流動性を高める仕組みを構築する必要があります。多様な異動枠を用意できない中小企業の場合は、今の部署のままでも、新規プロジェクトへの部分的な参画を認めたり、業務プロセスの改善を任せたりすることで、足元の仕事の枠を広げ、新たなやりがいを見出させるとよいでしょう。

③ 評価・報酬制度との間にあるねじれ構造

【起きていること】
研修では「変化を恐れず新しいスキルを獲得しよう」と説かれたとしても、実際の評価制度が「今期の短期的な数値目標の達成率」だけで決まる設計になっているという「ねじれ」の構造が見られる場合があります。この場合、従業員は当然ながら、まずは給与に直結する短期成果を優先するため、失敗のリスクがある挑戦や、すぐに成果が出ない学習は後回しにされ、研修の学びは実務に一切反映されないという結果になってしまいます。

【解決策】
メッセージと制度の矛盾を解消するため、業績指標だけでなく、中長期的な学習プロセスや新規チャレンジそのものを評価する「行動評価」や「スキル評価」を人事制度に組み込むのは一つの方法です。「挑戦した結果の失敗」は減点せず、「挑戦しなかったこと」を問題視する評価基準へと改修することで、従業員は安心して新たな一歩を踏み出すことができます。

④ 「キャリア=出世・昇進」という無意識のバイアス

【起きていること】
「キャリアアップ=管理職になること」という価値基準はまだ根強く残っています。研修のワークや紹介されるロールモデルが「リーダー志向」を前提としていると、専門分野を極めたいスペシャリスト志向の従業員や、育児・介護等で今は仕事のペースを調整したい従業員は、疎外されていると感じてしまいます。

【解決策】
多様なキャリアの選択肢を明文化しましょう。「マネジメント」を目指すラインとは別に、高度な専門性を評価する「スペシャリストコース」を設け、管理職と同等の報酬を得られるなど複線的な制度にするのも一つの方法です。また、出世した人だけでなく「異動で活躍の場を広げた人」「マイペースに貢献している人」など、多様なロールモデルを意図的に可視化し、多様な働き方を肯定する文化を作ることも重要です。

成功の鍵を握る「言葉の再定義」と「トップのコミット」

こうした環境づくりを進めるにあたり、忘れてはならないのが「言葉の再定義」です。例えば、社内で使われる「自律」という言葉を「一人で勝手に育つこと」ではなく、「周囲の環境やリソースを主体的に活用できること」と再定義するだけでも、組織の空気は変わるでしょう。

また、評価制度といった大きな枠組みの改革は、人事部門単独の努力では難しいかもしれません。ここに挙げたような変革を実行するには、「自社は本気で自律型組織に生まれ変わるのだ」という経営トップからの強烈なメッセージ発信とコミットメントも欠かせません。

おわりに

キャリア研修の効果を最大化するには、従業員の心理に働きかけるだけでなく、評価・異動・マネジメントといった組織構造そのものをアップデートしていく覚悟が求められます。

しかし、複雑に絡み合う既存の人事制度を改修し、社内の人間関係に配慮しながら現場の管理職の意識を変えていくプロセスは、非常に難易度の高い取り組みです。自社内だけで抱え込まず、他社事例や制度設計のノウハウを持つ外部の専門家の力を借りることも、変革を確実に前進させるための有効な選択肢と言えるでしょう。

点と点をつなぎ、組織全体でキャリアを育む環境づくりへ、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

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