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公開日 : 更新日 : なぜ今ロジカルシンキングか?どう学ぶか?

ロジカルシンキングとは、複雑な問題を整理し、シンプルにしていく思考法。問題解決の最も基本的なスキルであり、ビジネスパーソンとして早い段階で身に付けるべき力ですが、実は中長期の人材育成という観点からも大きな意義を持っています。本稿ではそんな「ロジカルシンキング」の意義と、どのように身につけるかを紹介します。

ロジカルシンキングとは何か

ロジカルシンキングとは、日本語で言うと「論理的思考」です。簡単に言えば、物事を「主張」と「根拠」で結びつけ、筋道立てて考えるための考え方だと言えます。

ロジカルシンキングにおける思考のプロセスは、まず出発点となる「前提」を定め、その上で「推論」を積み重ね、最終的に「結論」に至る、という順序をたどります。このため、前提から垂直方向に深掘りしていく特徴をもち、「垂直思考」と呼ばれることもあります。結論は通常一つに絞られ、曖昧さを排した明確な答えが導かれる点に特徴があります。

ロジカルシンキングが重要な理由

ビジネスにおいてロジカルシンキングが重要視されるのは、あらゆる場面で求められる「分かりやすく、筋の通った伝え方」の基本がロジカルシンキングにあるからです。

複雑な課題を抱える現場では、簡潔で明快なプレゼンテーション力やコミュニケーション力が不可欠です。論点を整理し、相手が納得できる形で伝える力があれば、対面での会話だけでなく、メールやチャットといった短い文面でも誤解を生まずに意思疎通することができます。特にリモートワークが広がるなかで、画面越しや文面中心のやりとりにおけるストレスを軽減するためにも、論理的な思考のスキルはますます欠かせないものになっていると言えるでしょう。

さらに重要なのは、ロジカルシンキングが単なる日常業務の効率化にとどまらず、マネジャーレベルになった際に不可欠な「戦略思考力」を育成する第一歩になるという点です。戦略思考は中長期的な視点で組織や事業の方向性を描き、それを実現する考え方で、企業全体の中長期的な変革力を高める力です。しかし、こうした力はすぐに身に付けられるものではありません。そのため、まずは論理的に物事を整理し、根拠を持って結論を導く習慣を早い段階から育成しておくことが、後に戦略的な発想や意思決定ができる力へとつながっていきます。

このように、ロジカルシンキングはビジネスの基礎力であり、また現代特有の職場環境における実務スキルであると同時に、将来のマネジメント層やリーダー層、ひいては次世代経営層を育成するための基盤スキルとしても欠かせないものなのです。

ロジカルシンキングを身につけるとどうなれるか

ロジカルシンキングを身につけることで得られるメリットとしては次のようなことが挙げられます。

問題発券能力、問題解決能力が上がる

ロジカルシンキングは、物事の原因と結果、因果関係を理解しながら思考します。そうすることで、物事を客観的に見られるようになり、解決すべき課題を見つけやすくなります。解決すべき課題が見つかれば、原因解明や解決にも近づくでしょう。

自分の考えが伝わりやすくなる

要点や論点を整理することで相手に自分の考えが伝わりやすくなり、コミュニケーションが円滑になります。社内での企画提案やビジネスの交渉相手に対して、プレゼン力や提案力の向上も期待できます。

業務の効率化につながる

上記とも関連しますが、たとえば会議の場で論点を整理して順序立てて話すことで、議論が迷走せず結論に至るまでの時間が短縮されます。日常的な文書作成でも、論理的思考ができれば情報の取捨選択や要点整理ができるため、かかる時間が短縮されることになります。

 
こうした力は、すべてビジネスにおける基礎的な能力です。そうした意味でも、ロジカルシンキングは、若手・中堅社員のうちにまず身につけておきたい能力であると言えるでしょう。

ラテラルシンキング、クリティカルシンキングとの違いと関連

ロジカルシンキングとよく比較される思考法に、「ラテラルシンキング」や「クリティカルシンキング」があります。それぞれとの違いと関連をみてみましょう。

ラテラルシンキング

「前提」を疑い、時には前提を覆し、発想を「水平方向」に広げながら、答えやアイデアを生み出す思考法です。そのため結論は1つではありません。既成概念や常識の枠を外して行う、自由な思考法です。ロジカルシンキングとはある意味で対極の思考法とも言えます。

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングは批判的思考のことで、論理的に考えた結果を「本当にそうだろうか?」と問い直しながら考える思考法です。

 
このように「ラテラルシンキング」「クリティカルシンキング」「ロジカルシンキング」はそれぞれ違った思考法であるため、利用するシーンが異なります。ですがいずれの場合も、まずはロジカルシンキングによって、目の前の状況を整理することで課題への理解を深める必要があります。このように、ロジカルシンキングはすべての基本となる考え方なので、最初に身に着けておくことが理想的といえるのです。

ロジカルシンキング実践に役立つ概念・フレームワーク

ロジカルシンキングの中核になっている概念・フレームワークを紹介します。

MECE(ミーシー)

MECEとはMutually(お互いに)/Exclusive(重複せず)/Collectively(全体に)/Exhaustive(漏れがない)の頭文字をとった言葉です。「全体集合として漏れなく重複することのない状態」を指し、網羅性を追求するために使われます。限られた時間の中で最善の解決策を考える際に役立ちます。
一般によく使用されるビジネスフレームの3C(Customer、Company、Competitor)や4P(Product、Price、Place、Promotion)もMECEを応用したフレームワークです。

ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーとは「結論」と「根拠」のストラクチャーです。ピラミッドの上部に伝えたい結論(仮説)を置き、その下の階層に結論を支える根拠を積み重ねていくという手法です。ピラミッドを頂点から下に降りながら考える「トップダウンアプローチ(仮説→根拠→事実)」と下から頂点に上る「ボトムアップアプローチ(事実→根拠→仮説)」の2つのアプローチ法があります。

ロジックツリー

ロジックツリーとは「集合」と「要素」のツリーです。問題の原因の深掘りや、解決策を具体化する時に役立つ考え方です。ツリーの上位にテーマを置き、その要素となる事柄や事実をツリー上に配置していきます。あわせてMECEの観点も使い、漏れなくダブりがないことを確認しながら進めるとよいでしょう。

帰納法と演繹法

帰納法と演繹法は、説得力がある結論を導くためのフレームワークです。

帰納法は複数の事実からわかる傾向をまとめて、説得力のある結論を導きます。たとえば、筋トレをはじめた被験者がいずれもダイエットに成功すると、「筋トレはダイエットに効果的だ」という結論を導くことができます。しかし実際には、食事制限をしていた人、他の運動を組み合わせて痩せた人もいるかもしれず、必ずしも結論が確実でないことから帰納的推論とも呼ばれます。
一方、演繹法は帰納法とは逆の手法です。ギリシャ哲学のアリストテレスが提唱した手法で「三段論法」とも呼ばれ、一般的なルール(事実)と観察事項の情報をもとに論理的な結論を導き出します。有名な三段論法の例として、「人間はいつか死ぬ」(事実)→「ソクラテスは人間である」(観察事項)→「ソクラテスはいつか死ぬ」(結論)という例があります。

効果的に学ぶために必要なこと、鍛える方法

ロジカルシンキングを実践するためのフレームワークについてお伝えしましたが、効果的に身につけるには、概念の理解だけではなく、実際に使ってみる以下のような演習トレーニングも有効です。

フェルミ推定

実際に数えると時間がかかるような数字を、論理的思考を使って概算することです。たとえば「日本には公園がいくつあるか」「日本に電柱が何本あるか」などを推定する作業がこれにあたります。具体的には日本の人口、世帯数、国土面積などのデータから概算していきます。

ディベート

ディベートとは、1つのお題に対して賛成側と反対側の立場に分かれて議論することを指します。意見について深く掘り下げ、第三者を説得させられるように根拠や事実を収集し、主張します。時間や場所に縛られず、1人で行うセルフディベートもオススメです。肯定・否定のどちらの立場も体験しながら、ロジカルシンキングを鍛えることができます。

まとめ

ロジカルシンキングはビジネスパーソンにとって重要なスキルです。ロジカルシンキングを習得することは、論理的思考力を鍛えるだけではなく、相手を納得させるだけの説得力ある結論を構築するスキルにつながります。さらには、将来的に意思決定をする立場になったとき、その礎となる「型」とも言える考え方です。
こうした力をつけるためには、実践型のグループワークなどで、推論したことを具体的に言葉で表現するなどのトレーニングを行うことも有効です。新入社員研修や若手社員研修では、ぜひ本格的に取り入れていただきたいテーマです。

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