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公開日 : 更新日 : 業績優秀な部長が優れた経営幹部になるとは限らない?その理由

長年、主力事業を牽引し、常に目標数値を達成してきたエース部長がついに経営幹部入り。皆が「この人なら」と期待したのに、目立った成果が見えてこない……こうしたことは、実は意外とよくあることかもしれません。なぜ優秀なはずの人が経営者として力を発揮できないのか?どうすれば改善できるのか?経営幹部育成、登用のあるべき姿、いわゆる「サクセッション・プラン」について考えます。

業績優秀な部長が優れた経営幹部になるとは限らない?その理由

「業績優秀だから経営幹部に引き上げる」という習慣の背景

「現場で確かな数字を出せる人を、より上位の役職へ引き上げる」という人事運用は、多くの日本企業で長らく当たり前に行われてきました。大きな理由の一つは、「過去の実績に基づく評価は公平性が高く、周囲の納得感も得やすい」という点でしょう。また、終身雇用を前提とする雇用体系の中では、役員への登用が「長年の貢献に対する報酬」として扱われてきた、ということもあるかもしれません。

高度経済成長期から続く、いわゆるキャッチアップ型のビジネスモデルにおいては、業績優秀者をそのままトップに据える手法にも合理性がありました。目指すべき明確な正解が存在し、現場の延長線上に経営の正解があったからです。既存事業をいかに効率化し、高品質なものを大量に届けるかといった業務遂行力の高さが、そのまま企業の競争力に直結していたというわけです。

しかし、VUCAと呼ばれる予測不能な現代においては、成果主義に基づく登用モデルは限界を迎えつつあります。

「成果主義」で選ばれたリーダーの何が問題か

業績優秀だった部長が経営幹部になったとき、壁にぶつかる大きな理由は、「求められる役割と視座の違い」にあります。

事業部長や部門長に求められる最大のミッションは、与えられた戦略の枠組みの中で、特定の事業・部門を最適化し、KPIを達成することです。いわば既存のビジネスモデルを磨き上げ、競合他社との競争に勝ち抜き、利益を最大化するプロフェッショナルと言えるでしょう。既存事業の効率化や業務遂行力が経営に直結していた時代には、こうした人が経営者としても力を発揮することができました。

しかし、現代の経営幹部に求められるミッションはこれとは異なります。特定の部門ではなく全社最適の視点に立ち、ときには自社の主力事業であっても縮小・撤退を決断したり、新たな領域へ経営資源を再配分したりしなければなりません。

皮肉なことに、ここで障壁となるのが「過去の成功体験」です。単一の事業領域で長年結果を出してきたリーダーは、無意識のうちに自らの成功パターンを重視し、物事を自分の出身部門の視点からのみ捉えてしまう傾向があります。財務的視点についても、短期的な最適解を導き出すことには慣れていても、「自社が社会に対してどのような価値を提供していくべきか」という長期的なビジョンや、非財務資本までを含めた全社的なポートフォリオ戦略を描くことができるとは限りません。

現代の経営者に求められる「未踏課題の解決力」とは

現在、企業を取り巻くのは、AIをはじめとする急速な技術革新、地政学的リスクの増大、脱炭素社会への移行など、過去のデータや経験則が通用しない未知の領域ばかりです。こうした時代において、現代の経営幹部に最も求められるのは「未踏課題の解決力」です。

未踏課題とは、誰かが設定してくれた問題ではなく、「そもそも何が問題なのか」すら明確ではない課題を指します。既存の枠組みの中で「どうやって(How)」効率よく課題を解決するかではなく、「我々はどこに向かうべきか(Where)」「なぜそれに取り組むのか(Why)」といった問いを自ら立て、誰も正解を知らない中で意思決定を下す力が問われます。求められるのは「構想力」だとも言えるでしょう。

現場で数字を出してきたリーダーは、売上の低下、コストの増大などすでに顕在化している課題を解決する、「実行力」という点では秀でています。しかし、未来の兆しを捉え、自社の強みと掛け合わせて新たな市場を創造したり、業界のルールそのものを変革したりするような未踏課題に向き合う経験を積んできたわけではありません。

過去の業績は十分な新任役員がなぜか機能しない場合、こうした「実行力」と「構想力」のギャップが発生していることが考えられます。

計画的なサクセッションプランのために押さえるべきこと

では、優れた経営幹部を育成するにはどうすればよいのでしょうか。育成時期と育成内容の観点から、あるべき方法を考えてみましょう。

育成のスタート…「役員の一歩手前」では遅い

現実には、「部長として成果を上げた人材に、役員候補として経営幹部としての研修を行う」というケースが多いかもしれません。しかし、本当はもっと早いタイミングで育成をスタートする必要があります。経営者として必要なことを身に付けるには時間がかかるからです。

経営層に必要なものは知識だけではありません。求められる視座やマインドセットは、知識のインプットと実践を繰り返す中で、少しずつ身に付いていくものです。つまり、役員候補となる頃にこれらを身に付けておくためには、課長層や新任部長層といった段階から訓練を始めておく必要があるということになります。

これには、現場の戦術家として最適化されすぎてしまう前に、経営という別の領域に対する意識を育てておくという効果もあります。

育成内容…OJTだけでは身に付かない能力を磨く

現場の実践から学ぶ、いわゆるOJTは「既存事業を正しく遂行する力」を養うには最適です。しかし、「未踏課題に挑む力」を育てることができるとは限りません。次世代経営幹部を育てるなら、ときには現場から意図的に引き離し、以下のようなことを学ばせる必要があります。

1. 部分最適を脱する「戦略思考」

戦略思考とは、目の前の課題だけでなく、将来の「ありたい姿」を考えて、それを実現するための道筋を考える思考です。全社を俯瞰し、リソースを再配分するには、経営学のセオリーや財務・会計リテラシーなど、体系的な知識をインプットする必要もあるでしょう。一方で、あえて現在の担当業務とは異なる領域の課題を与えたり、全社横断的なプロジェクトの責任者に抜擢したりする「修羅場(タフ・アサイメント)」の経験も必要です。全社の視点で戦略を立案し、立場の異なるステークホルダーを巻き込んでいく経験が、部分最適の思考から全社最適の戦略的思考へと脳の回路を切り替えることにつながります。

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2. 決断の拠り所となる「人間力」

過去のデータが通用しない未踏の課題に直面したとき、経営者の最後の決断の拠り所となるのは「リーダーとしてのブレない軸」です。歴史、哲学、倫理観といったリベラルアーツ(教養)を深く学ぶことで、自らの内面を磨き、多様なステークホルダーを惹きつける求心力を養うことができます。

■リベラルアーツを学ぶためのJMAのプログラム例
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3. 自社の常識を疑う「市場感知力」

社内の同質的な環境に浸かりきると、自社の常識にとらわれ、「これ以上は無理だ」といった暗黙の限界が作られがちです。異業種交流などの「他流試合」を通じて外の世界の視座に触れ、自社の常識や過去の成功体験を一度捨て去る、いわゆるアンラーニングの経験は、市場を捉える新たな視座を養い、変革の土壌を作ります。

■異業種の人材とのディスカッションを主軸としたプログラム
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次世代経営幹部をどう見出し、どう育てるか

早期から次世代経営幹部を育成しようとすると、実績という分かりやすいものさし以外による選抜が必要になります。その「不公平感」がネックとなってサクセッションプランが運用できていないという企業も多いかもしれません。しかし、自社の未来を託すに足る次世代リーダーをいかにして見出し、意図的に育成していくのかといった課題は、現代の企業経営において最も重要な課題の一つです。

従来型の「昇進」の延長線上ではなく、経営という全く異なる専門職を育てるための育成プランをどう設計すればよいのか。具体的なステップや、経営幹部に求められる資質については、JMAの担当者がインタビューに応えた下記記事で詳しく紹介しています。自社の次世代リーダー育成やサクセッションプランの構築に課題を感じている方は、ぜひ合わせてご一読ください。

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