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公開日 : 更新日 : リスキリング推進がうまくいかない理由とは? よくある課題と成功のポイント
2020年の人材版伊藤レポートで触れられて以来、人材育成分野で注目のテーマとなっている「リスキリング」。本記事は、リスキリングの基礎知識から、よくある現場の壁の乗り越え方まで網羅した保存版総合ガイド。貴社のリスキリング推進のために役立てていただければ幸いです。

リスキリングとは何をすることなのか?
経済産業省はリスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
同様に社会人の学びを表す「リカレント教育」が「働く→学ぶ→働く」のサイクルで、仕事と学びを行き来する学び方を指すのに対し、リスキリングは、仕事を続けながら、新しい仕事のしかたや新しい職務に移行するためのスキルを取得することを指しています。
また単なる「学び直し」とは異なり、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するためのスキル取得といった意味合いが強く、「将来的に価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ」という点が強調されています。
リスキリングには「デジタル分野の知識を身につけること」といったイメージがあるかもしれません。たしかに、企業がDX化を目指す中で必要なスキルを習得するなどのケースが多いのは事実ですが、正確には対象となるのはデジタル分野だけではありません。
たとえば2022年12月には厚生労働省が「人材開発支援助成金」の中に「事業展開等リスキリング支援コース」を新設しましたが、このコースでは、「新規事業の立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成」「デジタル化」「グリーン化」の3テーマが対象になっています。
■人材開発支援助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
また、リスキリングは働く個人が自らのキャリアのために学ぶことも含みますが、企業にとっては、自社の事業を新たな成長分野にシフトさせるなど、戦略的ニーズを満たすための施策の一環ということになります。近年では、こちらの意味で使われるほうが一般的になってきています。
リスキリングと一般的な育成との違い
これまでに企業で行われてきた一般的な人材育成手法とリスキリングの違いについて考えてみると、リスキリングとはどういうものかを理解する助けになるかもしれません。
OJTではリスキリングはできない
企業の人材育成としてよく行われるOJTは、社内で「いますでにある」仕事をしながら、スキルを獲得していく育成方法です。一方リスキリングは、変化に対応するための非連続的な能力開発であるため、既存の業務の延長上では実現できません。
ソフトスキルの習得ではない
階層別研修などでは、業務を円滑に進めるための学びや「リーダーシップ」「思考力」などのソフトスキルを中心に扱うことが一般的です。ソフトスキルはいつの時代にも重要なスキルですが、リスキリングは基本的に、デジタル技術など特定の分野で求められるスキルを身につけることを指します。そういった意味では、DX研修のような目的別の研修はリスキリングといえます。ちなみにソフトスキルの中でも、例えば「DXに必要なリーダーシップ」のように、特別な場面で求められるものについてはリスキリングの一環として捉えることができます。
■経営幹部のためのリスキリング研修の例—DX戦略実践力養成コース
https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/dx/transformation02/
企業がリスキリングを行うメリット
企業としてリスキリングを推進することには戦略的な意義もありますが、他にも次のようなメリットが考えられます。
エンゲージメントの向上
企業がリスキリングを推進することで、従業員が自ら必要なスキルや知識を獲得しようという意識が生まれやすくなります。従業員がスキルアップしたいという気持ちに対して、企業が学びの機会を提供することで、従業員のエンゲージメント向上が期待できます。
社内人材の活性化
企業がDXを推進するには先端分野の知識や技術を持つ人材の確保が急務ですが、採用コストが高いというデメリットもあります。社内人材をリスキリングすれば、新たに採用しなくても人材が充足できます。リスキリングによって従業員がこれまでと全く異なる仕事に移行できるようになり、社内人材の活性化にもなります。
従業員の成長
アメリカでリスキリングの先駆者的な存在として知られるAT&Tは、未来に必要なスキルを育てるため、2013年に「ワークフォース2020」というリスキリングのイニシアティブをスタートしました。2020年までに10億ドルかけて10万人のリスキリングを実行しています。
ワークフォース2020によって、社内技術職の80%以上が社内異動によって充足しただけでなく、リスキリングプログラムに参加する従業員は、そうでない従業員に比べ、1.1倍高い評価、1.3倍多い表彰、1.7倍の昇進を実現し、離職率は1.6倍低くなったと報告されています。このように、リスキリングは取り組んだ従業員の成長につながるといえます。
リスキリングを円滑に進めるポイント
企業としてリスキリングを成功させるためのポイントを紹介します。
取り組みやすい環境をつくる
リスキリングには時間も費用もかかるため、浸透させるにはリスキリングに取り組む人の周囲の理解も必要です。「なぜリスキリングが必要なのか」を全従業員に説明することで周囲の理解が進み、協力体制も整っていくでしょう。
従業員の自主性を尊重する
今まで学んだことのないスキルの習得には、ストレスや負荷がかかるため、本人に学ぶ意思がなければ成功しません。自主性を尊重するために、カフェテリア方式で選択形式のプログラムを用意したり、テーマ別に手挙げ式で研修を行うなどの方法をとるのもよいでしょう。
スキル獲得後のイメージを明確にする
リスキリングは継続して行うことに意義があります。そのためには、モチベーションを維持できるよう、目的や目標を明確にすることが重要です。現有スキルを可視化し、必要なスキルを獲得した後の可能性を伝えることで、学ぶ人のモチベーションを保つことができるでしょう。スキル習得後にお試し配属などができる仕組みも有効です。
自社課題にフィットしたプログラムを選ぶ
間違ったプログラム選びでは、リスキリングの効果が期待できないため、社内の課題にフィットするコンテンツを選ぶことが大事です。
【実践編】自社の課題に合わせて選ぶ、リスキリング推進ガイド
リスキリングの重要性は理解していても、いざ社内で推進しようとすると「社員が学んでくれない」「ツールを入れただけで終わっている」といった様々な壁にぶつかるものです。
ここからは、推進フェーズで生じる具体的な課題を解決するための実践的なヒントを、3つのテーマに分けてご紹介します。自社の状況に最も近いものからチェックしてみてください。
① マインドセット編—リスキリングの「本質と目的」を見直す
「DXツールを導入したものの、単なる業務効率化で終わっている」「社員が『なぜ学ぶ必要があるのか』腹落ちしていない」というお悩みはありませんか?
リスキリングを単なる「デジタルツールの使い方研修」で終わらせないためには、組織全体の意識改革が不可欠です。リスキリング本来の目的を見失わないため、必要なマインドセットについて解説します。
目指してはいけない!リスキリングについての大きな誤解
「今の業務の延長線上(アップスキリング)」にとどまっていませんか?リスキリング本来の目的は「非連続な成長」と、事業構造の変革に伴うスキル転換。その重要性について紐解きます。
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真のDXのために~リスキリングすべきは「課題設定力」だ
デジタルツールを「どう使うか(How)」を学ぶ前に、そもそも「何を解決すべきか(What)」を問う力がなければ真のDXは実現しません。ビジネスパーソンがアップデートすべき「思考法」について解説します。
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② 仕組み・環境づくり編—組織文化と「人事制度」の壁を越える
「社員に学習意欲がない」「通常業務が忙しすぎて学ぶ時間がないと言われる」といったお悩みの本質は「仕組み」にあるかもしれません。個人の努力やモチベーションだけに頼っていては、全社的なリスキリングは進みません。学習を促す環境づくりや、評価制度の見直しポイントについてご紹介します。
リスキリングの進まない組織がまず変えるべきこと
学習を阻害しているのは、日本企業特有の「過度な効率化至上主義」かもしれません。社員が新しいことを学ぶための「余白」を組織内にどう作り出すか、そのヒントをお伝えします。
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リスキリングの大敵!社員の学習意欲を削ぐ人事評価制度の「バグ」とは?
一生懸命学んだ優秀な社員から辞めていく……。そんな悲劇を防ぐには、日本型の「メンバーシップ型雇用」の弱点を理解し、挑戦や学習プロセスを正当に評価する制度を設計する必要があります。
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③ ターゲット別編—「階層別」のリスキリング推進アプローチ
「ベテラン社員が過去のやり方に固執してしまう」「管理職がデジタル化の波にうまく乗れず、部下との間に溝ができている」とお悩みの方へ。役職や年代によって、リスキリングすべき内容は異なります。リスキリングの要となるミドルシニア層や管理職へのアプローチ方法を解説します。
ミドルシニアのリスキリングを支える「アンラーニング」の技術とは
ベテラン社員が新しいスキルを身につける前に必要なのが、過去の成功体験を手放す「アンラーニング(学習棄却)」です。ミドルシニア社員のこれまでの経験を否定することなく、新しい価値観を受け入れてもらうためのステップをご紹介します。
▶ [記事を読む]
管理職がリスキリングすべき「デジタルを活かす力」-カギは心理的安全性にあり!
管理職が自ら「デジタル実務」をこなすプレイングマネージャーになる必要はありません。管理職に求められるのは「操作(How)」ではなく、テクノロジーの「概念(What/Why)」の理解です。また、デジタルに強い若手や専門人材が、失敗を恐れずに才能を発揮できる「心理的安全性」をどう構築していくべきかについても解説します。
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まとめ:より本質的なリスキリングを目指して
リスキリングは、単に新しい知識を詰め込むことではありません。組織文化、マネジメントのあり方、そして人事評価制度にまで踏み込む、全社を挙げた変革活動の一つの形です。
今回ご紹介した各コラムの視点をヒントに、ぜひ自社のフェーズに合わせたリスキリング推進の一歩を踏み出してみてください。



