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公開日 : 更新日 : 人材流動化の時代に欠かせない「キャリアオーナーシップ」という考え方<前編>
人材の流動化が進み、個人の働き方や価値観が多様化する現代において、自分らしく生き生きと働き続けるためには、社内外に目を向けながら自らキャリアを開発していく「働くことへの主体的な姿勢」が重要です。終身雇用の前提が変わり、ビジネス環境の変化スピードが加速する今、「自分にはどんなスキルが必要か」「これまでの経験をどう活かすか」と、自分を軸にキャリアを考える必要性はますます増しています。こうした時代背景から、「キャリアオーナーシップ」という考え方が、社員にとっても企業にとっても経営の根幹をなすテーマとなっています。
本稿(前編)では、キャリアオーナーシップ施策の全体像や、若手までの社員向け施策について紹介します。
中堅社員、ライフイベント層、シニア社員に向けた個別の対応策を紹介した<後編>はこちら >>

キャリアオーナーシップとは?
キャリアオーナーシップとは「自らのキャリアについて、どうしたいのか、どうなりたいのか、どうあるべきなのかを主体的に考える」ことです。日本で生まれた比較的新しい造語ですが、ほぼ同じ意味で「キャリア自律」とも呼ばれます。参考までに、2017年に経済産業省の中で発足した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」では、「(キャリアオーナーシップとは)個人一人ひとりが『自らのキャリアはどうありたいか、如何に自己実現したいか』を意識し、納得のいくキャリアを築くための行動をとっていくこと」と定義されています。
こうした概念が重視される背景には、終身雇用制度の転換に加え、働く個人の間で「会社の看板に頼らず、自律的にスキルを磨き、自己実現を図りたい」という意識が高まっていることがあります。人材獲得競争が激化する現在、その重要性はかつてなく高まっていると言えるでしょう。
企業はどのように考えるべきか
これまでの働き方では「企業が定年まで社員を雇い続けることで社員を守る」「社員のキャリアは企業が作るもの」という考え方が一般的でした。しかし現在は、新卒一括採用からの通年採用への移行や、ジョブ型雇用の広がりなど、雇用形態の多様化が進んでいます。働く側も自ら主体的にキャリアを考える意識が高まっていて、若手社員ほど「会社に依存せず、どこでも通用する力をつけたい」という傾向が顕著です。
こうした中、「企業が雇用を継続することで社員を囲い込む」という従来の関係はもはや成り立たなくなっています。企業には、従業員が社内外を問わず活躍できるキャリアを自律的に築けるよう「支援する場」へと役割を変えることが求められていると言えるでしょう。
働く人自身がキャリアオーナーシップを持つことは、個人の主体性を高めます。同時に、企業側が多様な人材の能力を伸ばす機会を提供できれば、エンゲージメントが高まり、結果として優秀な人材に「選ばれる企業」となり、競争力向上に直結します。このように、個人の成長と企業の成長のベクトルを合わせることは、いわゆる「人材版伊藤レポート」以降に定着した「人的資本経営」とも深く結びついた、現代の必須戦略と言えます。
企業が具体的に取り組むべきことは?
社員の「キャリアオーナーシップ」実現に向け、企業が取り組むべき施策には、一般的に次のようなことが挙げられます。
社員のキャリア開発を支援する
社員が自らのキャリアと向き合うためには、キャリアカウンセリングや社内外での研修などの機会を提供することが有効です。また、社内公募制度、社内外インターンシップなどの人材制度の整備や、ジョブ型雇用の導入、副業・兼業の解禁によって、社員のキャリアの選択肢を広げることができます。
社内でのキャリアの選択肢を増やす
選択肢を増やすと言っても、優秀な社員には自社で働くことを選んでほしいもの。そのためのモチベーションを維持するには、働く人が社内での自らのキャリアを具体的にイメージできることが重要です。企業としてはそのために、多様なポジションを用意したり、職場全体の意識改革を支援していく必要があります。そうすることが、企業にとっても必要な人材の確保につながります。
社員の階層・おかれた状況別に意識したい、キャリア開発の考え方(内定者・新入社員~若手編)
ただし、ここまでに挙げたような施策は、全社員に画一的に提供すればよいというものではありません。入社直後の若手から、中堅、ライフイベントを迎える層、そしてシニアに至るまで、それぞれのフェーズが抱えるキャリアの課題は異なります。ここからは、企業と社員の新たな関係性を構築するために、各階層に合わせた具体的なポイントを見ていきましょう。
内定者・新入社員向け:早期からの「自律」への意識づけ
キャリアオーナーシップの育成は、実は入社前、入社直後といった段階から始めることに意義があります。早い段階から自律を促すことで、入社後のリアリティショック(理想と現実のギャップ)を和らげ、早期離職を防ぐ効果も期待できます。具体的には次のような取り組みが考えられます。
社会人としての「自律的学習モード」への転換
学生時代は、与えられた課題に対して正解を導き出す、受動的な学習が中心になりがちです。しかし社会人においては、自ら課題を設定し、必要なスキルを自律的に学んでいく姿勢が求められます。内定者研修や新入社員研修の中に、「会社にキャリアを用意してもらう」という受け身の姿勢から、「自らのキャリアは自分で切り拓く」という社会人としての意識変革を促すプログラムを組み込むことが有効です。
企業のビジョンと「個人のパーパス」のすり合わせ
近年の若手層は、「自分が働く意味(パーパス)」や社会貢献性を重視する傾向にあります。会社の目標や事業内容を一方的に伝えるだけでなく、「あなた自身はこの会社で何を実現したいのか」「どのようなビジネスパーソンになりたいのか」を言語化させる機会を設けましょう。自身のパーパスと企業のビジョンが重なる部分を見つけることで、仮に希望通りの配属でなかったとしても、「今の環境で何を学ぶべきか」という前向きで主体的な意味づけができるようになります。
■「リアリティショック」の原因や対策法についてはこちらの記事でもご紹介しています。
リアリティショックとは何か?どう防ぐか? >>
■JMAが新入社員を対象に実施した調査に関する記事。近年の新入社員のキャリア意識についても。
『2024年度新入社員意識調査』から考える、若手育成・定着に向けた研修施策 >>
若手社員(入社1〜3年目)向け:現場に向き合い、自らの「キャリアの仮説」を立てる
配属先での実務が本格化する若手社員は、理想と現実のギャップに悩み、「このままここで働き続けて成長できるのか」という漠然とした不安を抱えやすい時期です。新入社員研修で培った自律的なマインドをさらに実践的なものとし、社内で長期的に活躍してもらうためのリテンション(引き留め)も兼ねた施策が求められます。
早期に「キャリアの仮説」を立てる年次別研修の実施
入社から一定の経験を積んだタイミングで、「自分はどうなりたいか」「そのために今、何が必要か」を棚卸しする「キャリアデザイン研修」を定期的に実施し、目の前の業務に追われて近視眼的になりがちな若手に対し、中長期的なビジョン(キャリアの仮説)を描かせます。自らの現在地を客観視することで、「配属先で与えられた仕事をこなす」という状態から、「将来の目標のために今の仕事から何を学ぶか」という主体的な姿勢への切り替えを促します。
部署を越えて経験を積む「社内インターンシップ・社内副業」
若手社員の離職理由によくある「他にやりたい仕事がある」という考えに対し、転職というリスクを取らずとも社内で新たな経験が積める仕組みを用意します。他部署の業務を一部体験できる社内インターンシップや社内副業制度は、本人の適性発見につながるだけでなく、「うちの会社には多様なチャンスがある」というエンゲージメントの向上に直結します。
「斜め」の関係によるメンター制度の導入
直属の上司との関係においては、評価を気にして本音のキャリア相談がしにくい場合があります。そこで、利害関係のない他部署の先輩社員などを「メンター」として配置する仕組みが有効です。いわゆる「斜め」の関係性の中で、日々の業務の悩みから将来のキャリアパスまでをフラットに相談できる心理的安全性のある場を提供することは、若手の孤立を防ぎ、キャリア自律を後押しします。
■メンター制度のメリットや導入のポイントについてはこちら
メンター制度を成功させるポイント
■若年層の離職を防ぐキャリア開発のポイントについてはこちらでも詳しく紹介しています。
「キャリア研修で離職が増える」は本当? 優秀な人材を惹きつけるリテンションとしてのキャリア開発



